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『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観て

親友を傷つけた昔の同級生を断罪し、復讐をする物語。元医大生で現在はカフェ店員の主人公をキャリー・マリガンが演じます。彼女といえば『わたしを離さないで』『未来を花束にして』といった社会性のある映画が印象深いところ。聞いたところによると脚本を吟味して出演作を選ぶことで知られているそうです。そうと聞いたらますます放っておけませんよね。

映画は最初から度肝を抜かれます。キャリー・マリガン演じるキャシーは夜な夜なバーに繰り出し、泥酔したふりをして男性を罠にかけます。男に罰をあたえるのが親友への報いだとキャシーは感じているからです。その姿はまるで狩りをするハンターのよう。耳について離れないようなアレンジのいい音楽もあいまって、ちょっと必殺仕事人のような感じです。

キャシーの行動はやりすぎでサイコがかっているという人もいるかもしれません。私はそうは思いませんでした。なぜならキャシーの怒りの矛先が、事件関係者だけに向いているものとは思えなかったからです。女が性の対象として見られ、結果傷つくこと、それによって生まれる悲劇に憤りを感じているのが伝わりました。そもそも被害にあった親友が女ではなく、男だったら事件に巻き込まれたでしょうか。事件後、親友が大学に被害を訴えた際、女性教員は「よくあること」であり「男子学生には未来があるから」として、話をもみ消していたこともわかります。このくだりには、最近話題になった東京医科大学の受験に関するニュースを思い出しました。

全体的にスリリングな映画ですがほんわかとしたシーンもあります。キャシーはカフェで大学時代のクラスメイト、ライアン(ボー・バーナム)と偶然再会し、ひとときのハッピーな日々を送ります。特にドラッグストアでのシーンのふたりはキュートでもしかすると映画史上に残るやもしれません。このシーンだけが突出していて落差を感じますがそれが功を奏してか、決して丸くは納まらない、とんがった味わいをあたえています。

映画はラストで当初の復讐目的に向かい、大団円を迎えます。結末の鮮やかさは見事で『スリー・ビルボード』を少し思い浮かべ、映画を観たなあという気になりました。現代において避けて通れないメッセージを中心に据えつつ、ポップに仕上がった作品です。キャリー・マリガンの悪魔のようなかわいさは見て損はありません。



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