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マドリッドで見た建築たち

スペインの空は深く青かった、そのことを強く覚えている。

もう5年前になるけど、初めて行ったヨーロッパ旅行の事を思い出しながら書いてみる。

旅程はイベリア半島周遊とジブラルタルを超えてモロッコへ。宗教に興味があったので歴史的にカトリックとイスラムが覇権争いをしていたイベリア半島(スペインとポルトガル)には強い興味を持っていた。そして距離的には目と鼻の先にあるジブラルタル海峡を越えたアフリカ、モロッコにはどんな世界が広がっているのか、これも単純に見てみたかった。
さらに1カ月半くらいの滞在日数の中で3週間をかけて歩いた、スペイン巡礼の道と言われるカミーノ=デ=サンティアゴもこの旅のメインテーマの一つだった。

と、いろいろ目的を絞りつつも純粋に初めてのヨーロッパに期待と不安を抱きながら、まずは飛行機でマドリッドへ到着した。

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行きたい観光地ランキングでも常に上位に挙がるスペイン。そのメインはバルセロナのガウディ建築やトレド歴史地区、グラナダのアルハンブラ宮殿あたりになってくると思う。首都マドリッドの観光地としての存在感は大きくない。

率直に言うとこの街の印象は悪かった。街が汚い(特にメイン通りから一つ路地に入ると)、人が不親切などあまりいい所は見つけづらい。こういう体感的な居心地の良さ・悪さというのは本当に旅の印象を左右するし、帰ってきてからも自分にとってのその国のイメージとして深く残っていくものだ。実際にマドリッドを訪れた人からは同じような感想を耳にする。感じることは同じなのだろう。

今回はそんな中でもいい意味で印象に残っている施設・建築を紹介してみたい。

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ソフィア王妃芸術センター

建物の左右に備え付けられたガラス張りのエレベーターが特徴の美術館だ。ここはマドリッドのメイン駅、アトーチャ駅から徒歩で行けるのでアクセスが良い。ダリやピカソといった20世紀の有名な絵が展示されている。

館内は口の字型になっていて、なんだか昔の学校のようなつくりに思えた、通路からはどこからでも中庭が見えた気がする。美術品を見ながら静かな廊下で一休みするのも良い。

この建物はかつて病院だったようだ。それも建設中に放置されたんだとか、知ってしまうとなんだか怖くなる。やけに静かで薄暗い廊下を急に思い出した。
目を引くのは後付けされたモダンなエレベーター、病院というだけあってシンプルなつくりの外観に大きく引き立つデザインになっている。
各階の展示室に移動する際にこのエレベーターに乗ると、外の光と景色が見えてこれもまた一つの息抜きになる。

ここに所蔵される絵の中で一番有名なものがピカソの「ゲルニカ」。スペイン内戦の際に爆撃されるゲルニカという町の名前がそのままタイトルになった作品だ。

小さいころ、歴史の資料集の片隅に載っているのを見て、なんだか奇妙な絵だなぁと思った。色もなくて薄暗くて、馬も牛も人も、それとは姿は分かるけど、みんなねじ曲がったおかしな恰好をしている、体のバランスもどこかおかしいぞ。授業の最中にこの絵が頭から離れなくなった。

実物はとても大きく、空間の中に自分はとても小さく感じた。見どころの絵だけに人だかりができていたから、じっくりと対面という感じではなかったけど、この衝撃は他の絵画から感じたものとはだいぶ違った。

この絵が持っている重さの一方で、この美術館はあんまり疲れない。すでに書いたように中庭からの眺めやエレベーターの明るさなど移動時に”HPを回復できる”仕組みがあると思う。そこがこの建築を気に入った理由でもある。RPGゲームはあまりやったことがないけど回復の泉というやつだろうか。考えてみればエレベーターで回復するというのはなんだか面白いな。


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アトーチャ駅

マドリッドのメイン駅で、ここから近隣にあるトレドという町へ高速鉄道で行ける。

目を引くのは駅の中とは思えない植物園のような構内。6月の燃えるような日差しを一身に受ける植物たち。

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電車が来るまでパンとコーヒーでも買ってこの辺りのベンチで一休みするのも良いだろう。

思えば、こうしたひと時こそが旅の醍醐味なのかもしれない。あまり予定ばかり詰め込んではだめだね。人並みをぼーっと眺めるくらいがちょうどいい。雑踏の中で飛び交う異国の言葉が耳に残っていたりする。


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最後に奇妙な建築を一つ

Torres Blancas
たまたま歩いていた道から見えたひと際目立つ建物。これはマンションか?そんな疑問を感じながら撮った。

調べてみると海外サイトでヒット。Torres Blancas、これがこの建物の名前のようだ。1969年に建てられた複合施設とある。

コンクリートがむき出しになった冷たい印象の建築、どこか旧ソ連などにありそうな姿をしている。こうした姿の建築はブルータリズム建築と呼ばれることがあって、今回このキーワードでマドリッドの建築を調べてみたら見事にヒット。たまたま撮った一枚だったけど、なにかのきっかけで調べてみることがあるから少しでも気になったら写真に撮っておくのがいい。

さて、このサイトの中にもブルータリズムの説明があった。「60年代に流行った建築のスタイルで、露出させた素材で力強い姿を表現する。華やかな装飾を施したエリート主義の建築とは対照的である。」なるほど、アンチ・エリートという意味でやっぱり共産主義とも思想的な繋がりがありそうだ。

そんな思想的にも視覚的にも奇妙なこの建築、どこか高くそびえる木のよな、もこもこと生えてくるキノコのような見た目をしている。
参考のサイトには内部の写真も載っていた。特に頂上にあるUFOのような一室はどこか昭和の喫茶店のような雰囲気で面白い。時代性というのはデザインの節々に見えてくるものだね。


はじめから特に期待値も高くなかったマドリッド、その後に行ったバルセロナに比べると明らかに写真の枚数が少なかった。
街歩きをしていると不思議な縁や発見はあるものだし、期待値というのはいい意味でも悪い意味でも裏切られるもの。
旅は予測しきれない、だがそこがいい。


#旅 #ヨーロッパ #スペイン #マドリッド #建築 #アート



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