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「たとえ愛は無償でも、家事労働は無償じゃなくていい」という教育の話

ブログで書いたものと同じ内容です。


とある道徳の授業について、話題ですね。

「ブラッドレーの請求書」とか、「お母さんの請求書」とか呼ばれているらしいやつです。
いつもおうちのこと(家事・育児など)を苦労してがんばってくれているお母さんが、
しかしそれについての請求書を0円で出す。という感じのやつ。

学習指導案がインターネット上にありまして、公開されているのでリンク貼っておきますね。
概要もわかると思います。

http://www.miyoshi-kawachi-e.hiroshima-c.ed.jp/koukai/4sidouan.pdf

親の愛情に感謝しろとか、家族への敬愛を学べとか、そういう内容のもののようですね。

しかし私は
「私の家族への愛情はたしかにいま無償で提供されているけど、家事労働は無償という意識でやらなくてもいいよね」
と思っているので、今日はそんな感じの話を書いています。

4歳への、我が家のお小遣い制度の話についても。

「シャドウワーク」と「ディセントワーク」

「そもそも家事労働が無償って誰が決めたの?」という話でもありますが、
まずは”シャドウワーク”と”ディーセントワーク”という、超重要な言葉について。

主婦・主夫だけじゃない、全ての働く人に関係のある言葉だよ!

シャドウワークとは

家事労働などの、報酬を受けない仕事のことです。
報酬を受けない、けれど、
他の誰かが報酬を受ける仕事をしたり、
社会が社会として続いていくために重要で、必要不可欠な仕事
です。

家事労働のほか、妊娠・出産や育児、介護もそうです。

※上記、賃労働としても行われるようにはなっていますが……。

再生産労働とかも言われていますね。

ディーセントワークとは

はたらきがいのある人間らしい仕事のことです。

「ディーセント・ワークとは、権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事を意味します。それはまた、全ての人が収入を得るのに十分な仕事があることです。」

ILOのホームページより引用)

たとえば
安心や安全が保障されていないとか、休業ができない・しづらいとか、労働交渉ができないとかは、権利が保障されていない状態ですね。
生活(日本であれば、健康で文化的な最低限度の)ができるだけの十分な収入がないのであれば、それもディーセントワークとは言えません。

社会から仕事と認められていない、蔑まれている・差別されている、労働者としての権利が尊重されていないなどの場合も、ディーセントワークとは言えません。

ILOは、ディーセントワークを活動の主目的として定めています。
つまり、
全ての労働はディーセントワークであるべきだ、というのが、国際的な見解・常識であると考えてよいと思います。

ILO「家事労働もディーセントワークであるべき」

さて、報酬がないシャドウワークである、とされていた家事労働ですが、
ILOの見解では、家事労働もディーセントワークであるべき、とされています。

ディーセントワークについてのILO(国際労働機関)の見解について、
概要は以下(アジア女性資料センターさんのページ)をご覧いただくとわかりやすいかと。

http://ajwrc.org/jp/modules/bulletin3/index.php?page=article&storyid=68

すごくざっくり書くと、

2011年にILOは、家事労働者も「労働者」として扱うと宣言。
家事労働者も労働者なのだから、ディーセントワークの権利を持っていると明言。
家事労働者も、賃金・社会保障を受けられるべきであること、労働時間、休暇、雇用条件、結社の自由や団体交渉権などの権利があるとされる。
上述についての条約と勧告を採択。

などなど。

また、家事労働が「無償」であったことと、ケアワーク(保育も含む福祉)の賃金が低いことの関連も見つつの文章がこちら。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kokusaijosei/24/1/24_138/_pdf

ディーセントワーク、そもそもILOの目指すものとは……などについては、こちらも参考になります。

https://www.jinken-net.com/close-up/1410.html

つまり、
家事労働=無償で無条件で行われるもの
みたいな愛情をかさにきた振る舞いは、国際的には随分前からナンセンスです

という話。

自分がしたくて自分がする、ことを否定するものではありません。
周囲はそれを当然視したり、いいことだと教えたり、唯一の・最良の価値観としちゃダメダメだよ。ということです。

我が家の家事状況と、4歳のお小遣い作戦

まず我が家の夫婦間での家事の話なんですが……もうね、このへんから不平等な家庭がわんさかいるのが日本の闇だよなって思ってます。

家庭内での、外稼ぎ&家庭内労働負担の分担比率。

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/17/backdata/3-2-13.html

↑こちらは厚生労働省のデータです。

うちは夫がレアケースなので、いい感じで運用されていますが
うん、やっぱりレアケースなんじゃないかな……。

我が家では、家事は基本的には無償で行われています。
行なっているのは、私と夫。

なんとなくの分担はあって、

<平日>

子どもの幼稚園通園や、通院や、状況把握と改善策の立案と、食生活の管理をメインでやるのが私
それ以外の家事は夫

<休日>

どっちもがどっちもやる、その時々でやったりやってもらったりいろいろ。

という感じです。

夫婦のお互いともが家庭の共同経営者としてやってる感じだし
問題ない運用かなと思います。

ただ、「自分だけが1日休日を満喫した!」みたいなことがあった日はいい感じのお土産を買って帰るなど
「いつもより余分に家事労働してもらった報酬」はお互いに渡す感じにしています。

夫だとスキーに行ったり、私だとBUMP OF CHICKENのライブに行ったり、まぁそんな予定がたびたび入るのでね。

4歳のお小遣い作戦

ここで唐突に、4歳のお小遣い作戦の話です。
唐突に見えて唐突じゃない。繋がった話です。

私、「家事は労働です」「大事な仕事です」ってことを、4歳にはなんとなく実感してほしいなって思っていて
かつ
労働であれば基本は報酬が支払われるべき
とも思っています。

なので、
うちの4歳のお小遣い制度は、正確には「家庭内労働に対する報酬」として支払われています。

やってもらっているのは、まぁ、とりあえず自分の分の洗濯物たたみです。
(4歳が自分で畳んでると思えば、しわしわでもほほえましい限りでしょ)

平日に仕事したら20円。
土日祝は、報酬額割増で50円です。

毎日やると、
「ガンバライジング(1回100円の仮面ライダーのゲーム)1回と、4歳が好きなお菓子の1個購入」が、週に1度できる金額になります。約200円。

なお、親の分の洗濯物たたみを手伝ったら、10円加算します。

4歳は
「今週もゲームやりたいからがんばる!」
とか
「お菓子はあれじゃなくていいから今日はやりたくない」
とか自分なりにいろいろ考え計算しながら、日々の営みを送っています。

当日欠勤でも罰則などはないです。

お金について考える癖をつけつつ、
家事労働を労働と捉えられるようになり、
かつ、労働者としての権利意識(土日祝は割増でしかるべきとか、欠勤で罰則がないとか)もうっすら養われるはずなので
我ながらこれ、「なかなかよい運用なのでは?」と思っています。

手前味噌ってやつですが
マネしたい人たちはマネしていいんだからね……*^^*

なお、小学生になったら有給制度も導入予定です。

仕事(家事労働)についても、また、学校に通う、ということについても
年に数度分、有給を提供します。

仕事を休んでも学校を休んでもいい日。
しかもお小遣いがもらえる。
制度を使わなかった場合は、買取制として、その分はお小遣い支給する予定です。

※ついでだから書いちゃうけど
ボーナス制度を導入するかどうかも、おいおい考えていくつもりです。
なにかいい運用があれば導入してみたいんだけど……。

愛情と報酬

で、ですね。
ここまでお読みいただいた方にはおわかりいただけるかと思うのですが、
家事労働に対しても労働者の権利が保障されていることと、愛情の有無って、
全っ然関係ない話

なんですよね。

手間暇かければ愛情か。
違う。
苦労すれば愛情か。
違う。
自分を犠牲にすれば愛情か。
違う。
無償でやれば愛情か。
違う。

全部、全部、別の話。
”無償の愛”が必ずしも尊くないとは別に言わないけど、
「愛情は無償だから尊い」なんてケチくさい話、誰が考えたの?

誰にとって、どういう規範にとって都合がいいかとか考えると、
「道徳」の授業で共通の価値観として教えるように制度が組まれていること、すごくわかりやすいし
危機感も高まるってものです。

「女性よshine!」って話かよ。とかね。
「家のことは家でやれよ国は知らん」「個人と個人の属する家こそが国を養え」って話かよ。とかにもね。

ともあれ、
当たり前に持っているはずの権利って、
当たり前に使えてないと実感としての「当たり前」にならないんじゃないかなーと思うので、
子どもへの「労働の権利」教育、まずは家庭からはじめてみるの、おすすめですよ・v・


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