わたしと柚木麻子さん

料理が出てきてとびきり元気が出る本で何かおすすめあるかな?と聞かれたときに絶対に名前をあげる本があります。

柚木麻子さんの『ランチのアッコちゃん』

ビタミン小説とも呼ばれるくらい読後には元気になれるこの小説は、わたしが初めて柚木麻子さんの作品に触れた出合いの物語でもありました。

【あらすじ】
屈託を抱えるOLの三智子。彼女のランチタイムは一週間、有能な上司「アッコ女史」の指令のもとに置かれた。大手町までジョギングで行き、移動販売車の弁当を買ったり、美味しいカレー屋を急遽手伝うことになったり。
そのうち、なんだか元気が湧いている自分に気付いて……。(Amazonより)

食べ物が出てくる物語が読みたいなと思ったことがきっかけで読み始めてみると、読みやすい文体に次から次へと出てくるおいしそうなランチのお店。

主人公の三智子と同じように、どんどん元気になれるような感覚になって続編の『三時のアッコちゃん』『幹事のアッコちゃん』と続けて読み、すっかり軽快な語り口が魅力の作家さんだと思ったわたし。

他の小説も読んでみるかとなんの気無しに『ナイルバーチの女子会』を読み始めたことから、一気に印象が変わりました。

この小説は「女友達」と「承認欲求」についてこれでもかとえぐってくる作品。身に覚えのあるようなないようなあの頃の気持ちを浮き彫りにしてくる心理描写の巧さに「痛い痛い」と胃を押さえながら、でもやめられなくて一気に読みました。

【あらすじ】
キャリアウーマンの栄利子の密やかな楽しみは、同い年の人気主婦ブログを読むこと。独特の価値観と切り口のブログに栄利子は日々癒されていた。ブロガーの翔子は夫と二人で気ままに暮らしているが、両親について複雑な問題を抱えていた。ある日カフェで出会った2人は、同性の友達がいないという共通のコンプレックスもあり急速に親しくなってゆく。

えぐりにえぐってくる展開に「『ランチのアッコちゃん』の癒しはどこにいってしまったんだ…」と思いながらも、この作家さん気になる…!!惹きこまれ、そこから怒涛の柚木麻子月間が始まりました。

図書館と本屋に通いつめ、読んだことのない本は片っ端から読み、ない本はリクエストを出して、たぶん1ヶ月も経たないうちに当時の既刊のものは全部読んでしまったと思います。

彼女の作品は女性特有の心理を描いた「女性の世界」をテーマにしたものがとても多いです。

生きてきて一応ずっと女性として生きてきたわたしからすると「わかる」と思うものもあれば「ちょっと大げさでは?」と思うものもあるけど、生きてきた世界は人それぞれ違うので、いまいち共感しきれないものもそれはそれで隣の女子の会話を盗み聞きしているような感覚でとっても興味深い。

15作ほど読んでみて、アッコちゃんとナイルパーチはちょっと極端な2作だったけど、それ以外にもありとあらゆる切り口から女性を描いた作品はどれを読んでも面白くて、悩み別におすすめできちゃうんじゃないかなと思うくらいです。

容姿に自身のない主人公が思わぬ展開から美女たちと同居し、それぞれの悩みを知っていく『嘆きの美女』や、女子校のクラス内でのヒエラルキーをテーマにした『王妃の帰還』、セックスレスに悩む主婦をコミカルに描いた『奥様はクレイジーフルーツ』などなど…。

一気に読破してしまったので今はひたすらに新作を待つばかりの日々になってしまったことだけが悔やまれますが、それでも柚木麻子さんに出会えたことがわたしにとってラッキーでした。

少し心が痛くなることもあるけど、どっぷり自分の気持ちに浸りたくなる女性のみなさまはぜひ手にとってみてほしいです。男性の方は読んだ感想をぜひ教えて欲しいです。



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