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サッカーにおけるハムストリングス肉離れの危険因子

今回読んでいく論文は
Risk factors for hamstring muscle injury in male elite football: medical expert experience and conclusions from 15 European Champions League clubs』
と言うタイトルの論文です。

直訳するとこんな感じでした。
『男子エリートフットボールにおけるハムストリング筋損傷の危険因子:医療専門家の経験と欧州チャンピオンズリーグの15クラブからの結論』

サッカーチームで働くメディカルスタッフに「ハムストリングス肉離れのリスクファクターってなんだと思いますか?」って聞いてみました!
っていう論文です。

研究方法

どうやって研究が進められたのか説明して行きます!
①欧州の男子プロサッカークラブ(15クラブ)のCMO(チーフメディカルオフィサー:Chief medical officers)に対し、所属クラブにおけるハムストリング損傷の危険因子を示唆するよう依頼した。

②次に、示唆された危険因子の重要性が、参加者全員によって 5 段階のリッカートスケールで評価されました。
リッカートスケールっていうのはこんな感じのやつです

(例)
Q .適切な栄養を摂取することはハムストリングスの肉離れを予防する為に重要だと思いますか?
4:非常に重要だと思う
3:まあまあ重要だと思う
2:少し重要だと思う
1:重要だと思わない
0:意見なし

そして参加チームは、2019/2020シーズンおよび2020/2021シーズン中のハムストリングの負傷割合に応じて以下の2つのグループに分けられました。
・LOW グループ(ハムストリングの負傷が平均よりも低い 7 チーム)
・HIGH グループ(ハムストリングの負傷が平均よりも多い 8 チーム)

結果

全部で21 の危険因子が示唆されました。
その中で「メディカルスタッフとコーチングスタッフ間のコミュニケーションの欠如」が最も重要度が高かった(平均=3.7)
次に「トレーニングセッション中に High speed soccerに定期的に触れていない」(平均=3.6)が続いた。

実際に提示された21の危険因子がこちらです↓

Table2

簡単に訳してみたものがこちら↓(間違ってたらすみません)

Table2を基に作成

意見

この文献の面白いところはハムストリングスの負傷率が平均よりも低かったチームと、平均よりも高かったチームとの間で危険因子に関する意見を比較しているところ!

これはもっと被験者数を増やして大規模な研究での結果が気になります。

あとはCMO(チーフメディカルオフィサー:Chief medical officers)の人たちのバックグラウンドをもう少し記載して欲しかったですね、。
経験年数などでも重視する部分は変わりそう。

最も重要度が高いとされていた『メディカルスタッフとコーチングスタッフ間のコミュニケーション』ってやっぱり大切だな〜と再認識。

本文にもこんな1文がありました。

『Management of minor injuries avoids larger injuries, and it is essential to have good communication and to have respect for minor injuries.』

『軽傷を管理することで大きな怪我を回避できます。良好なコミュニケーションを図り、軽傷を尊重することが不可欠です』

↑これ本当に大事だと思います。
現場でも選手が筋肉の張り感ちょっと嫌な感覚を訴えてきた時は黄色信号軽傷だと思っています。

そのまま何もせずプレーを続けていけば、赤信号になって離脱が必要な重症に変わってきます。

軽傷の時に適切な対処(管理)をする+コーチングスタッフに情報を共有し協力してもらうことで離脱日数の軽減や症状の悪化を防ぐことができるという事です。

respect for minor injuries(軽傷を尊重してもらう)って本当に大事。

2つ目のHigh speed runningに関しては復帰に向けてグラウンドレベルのリハビリをする際はモニタリングするべきだし、GPSをコンディション管理ツールとして使う際にも見ておきたい項目ですね。
ハムの肉離れを管理するためには欠かせない項目ですね。
この分野に関してはまたいつか…

最後に

大事なのは軽傷黄色信号の時にどう対処するか。
患部のトリートメントを時間をかけて実施するだったり、コーチングスタッフに情報を共有して負荷管理をするだったり色々あると思います。

こういう時って目の前の症状を消失させるための対症療法に走りがちです。
「物理療法でハム温めてみようか!」
「練習前のストレッチ入念にね!」
「もう少し時間をかけて患部のマッサージしよう!」とか。

大前提これが悪いわけではありません。

でも、こういう時こそ『なんでハムストリングスに張り感が出たのか』って考える良いチャンスだと思います。

今起きている事に対して一時的なアプローチだけしていても、いつかまた同じことが起きそうじゃないですか?
シーズン中に何回も何回もハムの張り感が出て、その度に練習メニューの強度を調整したりトリートメントに時間をかけるのってなんか勿体無くないですか?

選手自身もストレスだし、トレーナーの仕事も増えるし、コーチングスタッフも「またかよ…」ってなります。

黄色信号が出た軽傷のタイミングこそ、根本的な原因に対するアプローチをしていく良いチャンスだと思うんですよ。
その根本的な原因がハムの筋力不足かもしれないし、練習の強度が急に上がったのかもしれないし、ハムが不利な位置で発火しているのかもしれないし原因は色々あるかもしれない。

小さな原因でもピックアップしてちゃんと対処していくのが予防では重要かなと。

軽傷や黄色信号の状態を繰り返さないようにアプローチしていくっていうのも現場で働くトレーナーとしては考えていきたい所です。

今回読んだ論文

本文では他の項目に関しても、どうしてリスクファクターになるのか細かく解説されています。
興味がある方はオープンアクセスなのでぜひ続きを読んでみてください!

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