「おやすみ」

　　私は夜が好きなの
　　なんでも許してくれる
　　優しい夜のことが

　　愛していた彼のことも　
　　愛してくれなかった彼のことも
　　みんな平等にね

　　独りで部屋のソファに腰かけて
　　ほろよい　片手に
　　溜まってるドラマを見たりするの
　　画面に向かって　投げキッス
　　なんかしたりしちゃって

　　惨めだなんて思わないわ
　　夜が許してくれるから

　　でも、たまに嫌になっちゃう
　　静寂は不安を煽るから
　　騒がしいのを求めて
　　夜の街に繰り出したりもするの
　　一夜の過ちだって
　　そんなに大したことじゃないの

　　夜は私が求めているもの
　　全部持ってるの
　　それはそれは羨ましくて
　　全部欲しくなっちゃう

　　たまに後悔っておみやげもつけてくれるのよ
　　そのおかげで反省もしたりする
　　また会うときには変わったねって言われたい
　　変わりたいの、わたし

　　あなたとは
　「おやすみ」で出会って
　「おはよう」でさようなら

　　あなたが私の心を奪ったの
　　傷ついた私を夜に引きずり込んだの
　　誰か助けて
　　私はここにいるよ
　　暗くてなにも見えないかもしれないけど
　　ここにいるよ

　　声が出せないの
　　手を握って引っ張って
　　陽の当たる場所へ連れ出してほしい

　　お願い

　「おはよう」

　　私は幾千もの夜をこうやって乗り越える

　 #眠れない夜に