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サービス収支(季節調整値)が黒字に~2023年4月の国際収支統計

本業でバタバタしてフォローアップが遅れましたが(汗)、一昨日(8日)、4月の国際収支統計が公表されました。9日の日経朝刊では経常黒字が増えたこと、貿易赤字が縮小したことに注目していますが、私はサービス収支の季節調整値が黒字になって少し驚いています。

サービス収支の黒字は2018年2月以来

 以前から書かせていただいているように、月次データの観察では「季節性」を気にしていただきたいと私は考えておりますが、なぜか国際収支統計では季節調整を行っていない原数値をもとに報道されることが一般的です。 下記のグラフは、財務省ホームページからダウンロードしたデータを用いて、経常収支の季節調整値とその内訳を描いたものです。経常収支は振れを伴いながらも2022年10月(0.3兆円の赤字)を底に増加傾向にあり、2023年4月は1.9兆円と2022年3月以来の黒字水準となりました。
 2022年10月から2023年4月までの経常収支の増加(2.2兆円)の主因は貿易赤字の縮小(1.7兆円)とサービス収支赤字の縮小(0.5兆円)です。2023年4月のサービス収支は2.6億円の黒字と、2018年2月の0.5億円以来の黒字になりました。 

サービス収支の前年同月差0.37兆円プラスの主因は旅行収支

 季節調整値でサービス収支の内訳まで把握できないので、原数値の前年同月差も見てみましょう。2023年4月の経常収支の前年同月差は0.82兆円のプラス。下の図を見ても久しぶりのプラス幅であることがわかります。
 内訳は、貿易収支が0.57兆円のプラス、サービス収支が0.36兆円のプラスでこの2項目が押し上げに寄与したことがわかります。
 サービス収支の内訳を見ると、旅行収支が0.27兆円のプラスとサービス収支のプラスの主因となっていることがわかります。旅行サービスの輸出は訪日外国人による財・サービスの消費支出、輸入は日本人による海外での財・サービスの消費支出です。外国人観光客の増加が寄与しているわけですね。
 このほか輸送収支が0.05兆円、「デジタル赤字」という言葉で注目を集めている「その他サービス収支」が0.03兆円のプラスでした。

貿易収支赤字縮小の主因は

 最後に、貿易収支赤字縮小の要因を確認しておきましょう。2023年4月の貿易収支赤字は原数値で1131億円と前年同月に比べて5710億円縮小しました。これは輸出が前年同月に比べて2.6%増加したのに対し、輸入が4.1%減少したためです。「輸出入物価指数」(日本銀行)で価格要因を確認すると、円ベースでみた輸出物価は1.8%の上昇、輸入物価は2.9%の下落でした。一方、輸出物価は契約通貨ベースでは1.3%の下落であり、輸出金額には円安による押し上げ要因があることも確認できます。契約通貨ベースの輸入物価は6.5%の下落でした。
 「実質輸出入の動向」(日本銀行)の2023年4月の状況を見ると、実質輸出は2022年秋以降の落ち込みから回復する兆しも見えます。世界経済には不透明要因がありますが、実質ベースでも輸出が伸びていくことを期待したいと思います。
 また、2023年1月以降の国際収支統計は速報値なので、今後の改定もウオッチしていきます。

#日経COMEMO #NIKKEI

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