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毎勤の賃金上昇率、今年は下振れか

 本日、「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)の2019年1月分の確報値と2月の速報値が公表されました。現金給与総額の1月分は速報値の1.2%増から確報値は0.6%減へ大幅下方修正、2月分の速報値は0.8%減となり、2ヵ月連続の賃金下落となっています。

 日経の電子版の記事では、「毎勤統計は集計対象を入れ替えると入れ替え後の数字が下振れする傾向がある」とありますが、これは、従業員30人~499人の事業所について、調査対象の入れ替えを2~3年に1回行っていた時代の話です。夕刊には掲載されてませんでしたが、ミスリーディングですね。

 「毎月勤労統計調査」は、2018年からは、毎年、一部ずつ入れ替える「部分入れ替え」を導入し、賃上げを高めにしたいために行われたと批判する向きも少なくありませんでした。しかし、皮肉にも、今回は「部分入れ替え」が賃金上昇率を下振れさせることにつながっているのです。経済統計に詳しい研究者は、上振れも下振れもありうることを主張していましたが、まさにその通りになったわけです(私も同じ主張をしてました)。

 厚生労働省の資料によると、具体的には、現金給与総額の上昇率でみると、部分入れ替えによって0.9%ポイントのマイナスの断層が生じているとのことです。1月の速報値は入れ替え前の結果を示しており、下方修正の主因は調査対象の入れ替えということがわかります。この断層を考慮に入れれば、1月分は0.3%増、2月分は0.1%増と伸びが鈍化したものの、賃金上昇が続いているということになります。

 さらに、「こっちが実勢だ」と言われていた「共通事業所」ベース(前年も今年も調査している対象に限定して算出)の賃金上昇率は、1月は0.6%、2月は0.5%のプラスの伸びが続いています。

 2018年の賃金上昇率は実績値が1.4%でしたが、サンプル要因で0.1ポイント程度、ベンチマーク要因で0.4ポイント程度、過大になったと言われています。2019年はベンチマークの入れ替えがないので、サンプル要因で下振れが続くことになります。

 最近は、国会での論戦も尻すぼみのようですが、部分入れ替えが賃上げを高めにしたいためだと批判し、共通事業所ベースこそ真実と詳細なデータ提供を求めていた野党は、今回の結果を見て何と言うのでしょうね?

 いずれにしても、サンプル要因、ベンチマーク要因をともに調整するGDP統計の雇用者報酬の1~3月期の値がどのような結果になるのか、注目されますね。


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