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伸びる会社の共通点

私はこれまで、銀行の法人融資担当、その後、財務コンサルタント、現在の組織コンサルタントとして、20年以上、多くの中堅中小企業を見てきました。その中で、「伸びる会社の共通点」を「ビジネスモデル」「社長」「組織」という3つの観点からまとめてみました。

今回の「伸びる」というのは「事業規模拡大」を想定しています。
「事業規模拡大」のみが、企業の向かうべき先ではないですが、事業規模を拡大することで、自社サービスが多くの人に受け入れられる状況を作りたいと考える経営者の方に読んでいただければ何よりです。


どんなビジネスモデルが伸びるのか?

ビジネスモデルで伸びる場合、2つのポイントで見ていきます。
① 他社と比べて負けない状況が作れているか。
② 勝てるポイントが絞り込まれているか。

あなたが飲食店を経営することをイメージしてみてください。

質が高い食材を、一流の料理人が高い技能で調理した美味しい料理を提供し、一流のスタッフによる接客も素晴らしく、内装も高価かつお洒落で、雰囲気も抜群にいい、そして立地も申し分ない、なおかつ価格が安い、そのようなこだわりぬいた飲食店を経営できたとします。

しかし、この店舗を作るため、産地を厳選した質が高い食材を安定的に仕入れ、腕の立つ料理人、教育の行き届いた接客スタッフ、料理人と接客スタッフを管理するマネージャー、一流の店舗デザイナー、選りすぐりの立地、これらを全て揃え、維持する必要があります。
結果、この店舗を成立させるための変数が多くなりすぎてしまい、2~3店舗であれば、納得いく店舗が作れるかもしれませんが、組織として多店舗展開し伸ばしていくことは難しいのではないでしょうか。

ではどうすべきか?

会社組織として規模拡大させるためには、負けない状況を作り、勝つためのポイントを絞り込んで、変数を少なくし、再現性高く勝てるパターンを組み立てていくことが求められるのです。

例えば、飲食業態の場合、仕組化できる部分として

  • セントラルキッチンを設け、一定レベルの高い品質の料理を店舗に安定供給する

  • 注文を受けてから調理し、お客様へ提供後、サービス代金を精算する業務フローをマニュアル化・簡素化し、早期にスタッフを戦力化できる仕組みを作る。

  • 店舗設備・備品を統一し、レベルを落とさずスケールメリットでコストを下げて展開する

等で店舗毎の変数を最小化し、上記を仕組化しながら、競争優位となる変数をコントロールしていく。

  • 出店については、ドミナント多店舗出店で地域の不動産業者との間で情報が優先的に入る信用と信頼を構築し、他社と比較し、競争力のある出店場所情報を獲得できる状況を作る。

  • 規模があることで、競争力のある材料仕入が出来る状況を仕入業者との間で構築していく。

  • 接客の肝となる店長教育に力を入れ、時間の経過の中で店長の質を上げていく。

仕組み化で、他店と比べて負けない状況を作り、上記の変動要因を積み上げ他店と比べて勝てる状況を作っていく。

コントロールしやすい部分とコントロールし難い部分を見極め、これらを組み合わせ、全体の当たり前のレベルを上げていくことがビジネスモデルとして組み立てられると、一定の環境で勝つことができるビジネスを構築することが出来ます。

絞り込むポイントは会社によって様々ですが、絞り込むポイントが明確で、かつ環境にマッチしていること、これがまずビジネスモデルの観点で重要なポイントになります。

しかしながら、この絞り込み、注意が必要です。

環境は常に変化しているため、絞り込むポイントについて、ある環境では優位性を発揮できていても、環境が変わると優位性が発揮できないケースがあることです。

強みは、相対的なものであり、真似されがちです。
特に再現性を高めるため、変動要因を減らす、ポイントを絞り込んでいくと、より他社の模倣の難易度が下がります。

これを回避するためには、コントロールしやすい部分の水準を常に上げる取り組みをしながら、コントロールし難い部分、特にソフト面、人材育成面を組み合わせ、無形のものに差別化のポイントが移行するよう、意識的な変化を会社が作り出していくことが求められます。

どんな社長が会社を伸ばせるのか?

まずビジネスモデルからお伝えしましたが、会社の成長は、社長にかかっていることは間違いありません。

ではどのような社長が会社を伸ばせるのか?

それは時間軸を考慮して意思決定できる社長です。

会社の成長の源泉はビジネスモデルです。
ビジネスモデルで成長させるためには、再現性が高いモデルを作る必要がある。
そのためには変数を少なくしていくことが求められます。

一方で環境は常に変化します。変化する環境に対応するためには組織内に多様性を許容する必要があります。多様性を許容しない場合、環境の変化で組織が全滅する危険をはらむからです。

組織の中で変数を少なくしながら、多様性を許容するという矛盾を解決する方法は、時間軸の中で素早く意思決定をすることです。

環境の変化によって勝つためのポイントが変化した場合、いち早くそれに対応する意思決定を行うことで、少ない変数に絞り込んだまま、時間軸の中で組織の多様性を試行錯誤することが求められます。

そのために伸びる社長のポイントは何か。

故船井幸雄先生の格言に「素直、プラス発想、勉強好き」がありますが、これがポイントだと考えます

変化に対応するためには、他人の評価を素直に受け止めることが必要です。
今までの成功に固執し、他人の評価を受け入れられない場合、環境の変化に対応できません。

また、変化に対応するためには、時間軸の中で多様性を試行錯誤する、すなわち、失敗を前提に、失敗を素直に受け入れ、どう変えていけばいいか考えられる前向きな思考、自責思考が次に求められます。

そして、どのように時代が変化し、変化しようとしているのか学ぶ姿勢の3つが必要となります。

環境の変化を他者の評価を受け入れることで捉え、意思をもってポイントを絞り込み、絞り込むポイントが間違っていたら前向きにとらえて直ぐに方向転換する。
また、正しい意思決定ができるよう環境がどのように変化していくのか情報収集(学習)を継続していく。

これが伸びる社長のポイントです。

どんな組織を作れば会社は伸びるのか?

そして、ビジネスモデル、社長と来て、最後、組織ですが、どのような組織を作れば会社は伸びるのか。
これは、速く動く組織を作ることです。

変化する環境の中で、変化しないものを作ることが求められるのであれば、時間軸の中でこれを構築することが必要であるとお伝えしました。

しかし、社長がいくら素早く意思決定し、試行錯誤をしようとしても、組織が社長の意思決定に呼応して素早く動かなければ、社長の意思決定が正しいのか間違っているのか判断できず、変化に対応できません。

社長の意思決定が素早く現場まで伝わり、現場での情報が素早く社長まで上がってくる組織。

社員一人一人が、社長の全体方針、全社意思決定に沿って、自らの役割の範囲で試行錯誤を繰り返し、会社が向かいたい方向と、従業員が向かう方向が一致している組織。
これが速く動く組織です。

変数を絞り込むことと変化に対応することの矛盾を克服すること

成長の源泉がビジネスモデルだとすれば、成長するためには、変数を絞り込み再現性が高いビジネスモデルを構築する必要があります。

しかし、変数を絞り込み再現性を高くすることと、環境の変化に対応するために多様性を許容する事には矛盾が生じるため、これを解決するためには、社長が時間軸の中で素早い意思決定を繰り返すことで、時間軸の中で多様性を許容し、変数を絞り込み再現性を高めることが実現できます。

そして、これを実現する手段として、社長の素早い意思決定に呼応して速く動く組織が求められる。

まとめ

この3つが伸びる会社の共通点となります。

特定のビジネスモデルが当たり、一時、飛躍する会社はありますが、継続的に成長し続ける会社を作ることは容易ではありません。
変化しないものを、変化する環境の中で作る矛盾を解決できるのは、社長の意思決定であり、それをビジネスモデルとして結実できるのは社長の意思決定に呼応し素早く動く組織があるからです。

ビジネスモデルだけで瞬間的に伸びる会社があります。
ビジネスモデルと社長の意思決定のスピードで一定期間伸びる会社があります。
「ビジネスモデル」「社長の意思決定」「速く動ける組織」で、継続的に伸びる会社を作ること、これが社長の最終的に目指す姿ではないでしょうか。

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