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スピード自慢の介護職員さんたちは、なぜそうまで速さに拘るのか


速く起こして速く食べさせて速く寝かせて速くオムツを替えられる。
人員不足に悩む多くの施設では、スピードがある職員は重宝されやすい。なぜなら時間がつくれるからだ。

ただ速いだけではなく、先を読み、仕事の順番を決め、無駄なくタスクを処理していく。
やっている人も、予定通りに進めば気分が良い。
”ほら予定通り””自分は仕事ができる”と自分も気持ちが良い上に、他の職員から頼りにされるなら言うことなしだ。
ちなみに私ももともとこのタイプだった。

がしかし。
この「予定通りのタスク処理が得意」というタイプの人にとって、もっとも邪魔になるのが”認知症”だ。
認知症がある人は、約束を忘れてしまいやすい。つまり、”予定”に組み込みづらいのだ。せっかく気持ちよくタスク処理していく中で、何度も何度も同じ質問をされたり、外に出ていこうとしたり、今終わったばかりのトイレにまた行くと言う。
スムーズだった”予定通り”の流れは一気に壊されてしまう。職員のイライラは一気に高まる。
そう。速さ自慢、スケジュール通りのタスク処理が強みの職員は、認知症対応が苦手な人が多い
そして実は、速さ勝負が得意な人→認知症が苦手、ではなく、認知症対応が苦手な人が、自分の価値を高めるためや、承認欲求を満たすために、認知症対応よりも速い介助ができる人こそが評価される場をつくっていたりもする。速い人って頼られやすいから発言権強くなったりするからね。
焦らずゆっくりと相手の話を聞いて、できることを探して、認知症ケアをやっていこうよ、という考えは綺麗事だと言い、そういうケアをする事業所の話しを聞けば「軽度だからだ」と言う。ただでさえ時間がないのに、そんなことに時間を費やす余裕がどこになるんだと強く反発する。成果が出ればむしろラクになると言っても受け入れない。どんどんタスクをクリアし、速い人こそが仕事をできる人だという価値観を広げる。
でも実は、自分が認知症対応が嫌いだから。都合の良い立場・都合の良い場にしておきたいだけだったりする人は、きっと多い。

でも速さ自慢の人が認知症ケアをしない、やる気のないサボりな人なのかと言えば、そういうわけじゃない。
速い人は、率先して人より多く仕事をする人も珍しくない。たくさん仕事はするんだ。つまり、単に得意なことで楽しんだり評価されたいだけなのだ。これは基本誰でもそうだ。認知症のケアは知識やスキル、我慢も必要なので、それらがなくてもできる作業をたくさんすることで許されたい。全般仕事をしたくないわけではないのね。
つまり、認知症ケアも”成果が出せるようになってしまえば、むしろ成果を出すために”どんどん取り組むようになったりもする。こういう人は実際にいる。

認知症ケアを苦にしない人は、速さ自慢よりも希少だから、評価されやすい。いままで嫌いだったことができるようになったり、それで認められるのは嬉しいものだ。
認知症ケアは、優しさではなく、スキルの施行だ。正しい知識と実践する技術と、ゆったりと成果を待つ忍耐が必要になる。
適切にやれば、認知症ケアの成果が見えるときは間違いなくあるし、そうなったときは介護職としてとても楽しい瞬間だ。
楽しい上に評価されたらもっと楽しい。

速さ自慢の人に、いかに認知症ケアの適切な施行を教え、楽しさを伝えられるか。それは先輩や上司、マネジャーの腕の見せ所であって、とてもとても難しいところでもある。
なんとか伝えていかないとね。

認知症の人は、何度言っても忘れるし、同じことを何度も聞くし、自己主張ばかりで人の話を聞いてない。
でも、認知症じゃない人も、何度言っても忘れるし、同じことを何度も聞くし、人の話しも聞いてない。

みんな同じだったりする。
基本は人と人だよね。

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