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超短編小説『鼻』

超短編小説『鼻』

 朝起きたら、鼻がなくなっていた。顔を洗おうと鏡を見て気付いた。そこには、中央に大きな穴がひとつあいている、私の顔が映っていた。そうか、どうりで息がしやすいわけだ。
 これは私にとって好都合だった。おでんに入っている餅巾着のごとくでっぷりとした厚ぼったい鼻が、ずっと邪魔くさかった。気に入らなかった。
 身支度を済ませベッドの近くに戻ってくると、見つけてしまった。枕の横に、埋もれるようにして鼻があっ

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