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スコットランド ロックローモンドの旅 2 路線バス編

スコットランド入りして6日目の朝、私はロックローモンド(Loch Lomond)へ路線バスと鉄道を乗り継いで向かうため、グリーノック(Greenock)の宿を予定通りに出て、定刻の15分前にはバス停に到着した。

グリーノック入りした日のこと、この地に旅に来た理由 -

イギリスの路線バス

ほぼ定刻通りにバスが来たので内心ほっとしつつ、運転手さんに実際の行き先を確認し、無事に席に着くことができた。イギリス(スコットランド)での路線バスの雰囲気は、日本のそれとかなり似ている。運転手さんは朗らかで明るい人もいるけれど、どちらかというと愛想の悪い、人付き合いが苦手そうなタイプの人もいて、返答には笑顔が付いてこない場合もある。しかし、返事はきちんと返ってくるし、笑顔がなくても親切に教えてくれる。乗客の雰囲気も日本のそれと似ているのだが、ただ一点異なるのは、イギリスでは赤ちゃんを乗せたバギー(ベビーカー)とその親がかなりの頻度でバスに乗ってくることと、それがごく普通であること、運転手も含めた乗客全員が、彼らのバスの乗り降りと、車内の移動に非常に協力的であること - だと思う。これについては、いつかまた別の機会に書いてみたい。

私はイギリス滞在時、路線バスをよく使った。旅行ではもちろん、イングランドのブリストル(Bristol)では半年間語学学校に通っていたが、通学にもバスを利用していた。私の所感では、イギリスのバスはかなり時間に正確で、雨の日は日本と同じように遅れがちにはなるものの、通常は日本と同じくらい正確とみて問題ないのではないかと思う。私の経験では、時間より早く着いてしまい停留所で発車時刻まで待っているバス、というのも少ないもののしばしばあった。

車窓からの景色を想定外に楽しむ

話が少し逸れたが、その日グリーノックからロックローモンドへ向かった私は、片道50分ほどのバスの旅を思いの外楽しめてしまった。楽しめてしまった、という言い方も何だかおかしい気もするが、実際のところ私はこの事態を全く予想だにしていなかったので、想定外に楽しめてしまい戸惑ってしまった、というのが率直な気持ちである。スコットランド、そしてクライドバンク(Clydebank: 後述)の自然の素晴らしさに、既にロックローモンドに到着する前から心揺さぶられてしまったのだ。というのもバスは鉄道を乗り継ぐダルミュール(Dalmuir)に向かうまでひたすらクライド川(River Clyde)の河岸を左手に走ったからで、この日もお天気は朝から最高、その路線バスの窓越しに見える、クライド川とその河岸のきらきらした美しさと言ったらなかったからだった。

クライドバンク地方 水辺の美しさ

この辺りは、クライドバンク(Clydebank)と呼ばれるエリアで、ロックローモンドなどの内地の湖と、Clydeと名の付いたいくつかの川に囲まれた、ウォーターフロントの田舎町といった風情だった。いずれの地も水辺に近く、その青さが目に鮮やかに映り、しかも入江なのでそれらは穏やかで、お天気が良ければとにかく美しい。煌びやかさはなく、そしてスコットランドでは珍しいものではないのかもしれない、しかし目に麗しい青々とした湖岸に、ゆったりとした時間が流れている、そんな片田舎の町だった。

この予想だにしなかった車窓の美しさに、私は左側ばかりひたすら眺めて、瞬く間に路線バスの往路の旅を終えてしまった。楽しい時間はあっという間に過ぎ去る。観光バスでもない、普通の路線バスで、私以外はほぼ地元の乗客と見える中、一人この車窓にひどく見入っていた。私は車窓の眺めに夢中だったこともあるし、バスの車窓から動画を美しく撮るのはそもそも難しい、と端から諦めていたが、それが功を奏して、普段はつい写真を撮ることに夢中になり自分の眼で見ることを怠る癖を、幸か不幸かこの50分は封印できた。しっかりと心の眼であの風景を眺め、長閑のどかに過ごしたバスの往路。ということでこの車中、撮った写真は皆無である。旅路は穏やかで、でもとても美しく素晴らしかった。私が心揺さぶられてしまった、素朴だけれど穏やかで包み込まれるような自然の美しさを、せめて画像で誰かに伝えられないものかと、ひどく歯痒い。悩んだ挙句、いろいろ検索してもあのキラキラした水面は何をもっても代替できないので、ここでは何も載せないことにした。

果たしてグリーノックからロックローモンドへ、私と同じように路線バスと鉄道を乗り継いで行く人がいるかはわからないけれど、参考までに乗車したバスの路線番号を付記しておく。スコットランドにはありふれた景色かもしれない。けれど、この路線の車窓の旅はただ、素晴らしかった。私のつたない文章で、この感動が読んでくださった方に伝わればうれしい。

X22 - Greenock to Clydebank - McGills

(2022年5月現在)
※ サイトの地図にあるように、X22はクライド川にぴったり沿って走っている。

そしてようやくダルミュールで鉄道に乗り換え、ロックローモンド南の湖岸にたどり着いた。

“Dalrymple Street - Dalmuir”を路線バスで移動。

ここも田舎町の風情はあるものの、この湖岸はロックローモンドツアーの起点となっているためか観光客が多く、どちらかといえばちょっとしたリゾート地のような雰囲気を呈していた。

ロックローモンド南端の鉄道の駅 “Balloch”
湖岸には多くのクルーズ船が滞泊している。
ロックローモンドでは幸運にも暑いほどのお天気に恵まれた。

私も例に漏れずこの湖岸から出発するツアーに申し込んでおり、それがこの日のメインイベントゆえ、ここからのツアーにまた心高鳴っていた。

※ 挿入されている写真及び画像はすべて筆者によるものです。

(Loch Lomond 28 Jun 2019)


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