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その他の幻想

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唐突に思いついたらなんか書くかもしれない。
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#小話

クチバシカジカ

クチバシカジカ

何も見えない暗闇のなか、私は地面に寝そべっている。
両手両足を広げた姿勢で、虚空を見つめている。
手の平や背中から伝わる地面の感触。
極めて平坦な砂地のようだ。

やがて無限にも思われた闇の世界に光が訪れる。
薄明かりの世界へと変貌してゆく。
徐々に明るさが増してゆく。
夜明けだ。

上半身を起こして見回すと、灰色の大地はどこまでも平らであることがわかる。
360°の地平線。何も無い。

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製造・販売が中止になったお菓子

製造・販売が中止になったお菓子

ゴウンゴウンゴウンゴウン………

重厚な雲に閉ざされた暗黒の空の下、地表を覆い尽くす巨大な工場が、ライトアップにその威容を浮かび上がらせる。

煙突、配管、隔壁、通路、鉄塔……工場を構成するパーツは無秩序に果てしなく繰り返され、いまや一つの巨大な装置となって地表を覆い尽くしていた。

目的と意味を失った今もなお、それらは正体不明の稼動音を上げ続けているのだ。

嘗て人間の手で建造さ

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古代宇宙うなぎ士説

古代宇宙うなぎ士説

さあ皆様、ご覧ください。
この驚異的な広大無辺の地下大空洞を!
都市のごとく整然と、見渡す限り何処までも埋めつくすのは、すべて墓地です。
何万年もの間、この空間は誰にも知られることなく、彼らは暗闇と静謐さの中で眠り続けて来ました。
文明が滅びる前の華やかなりし時代を生きた、旧人類達です。

ご存知の通り我々は、今なお崩れ去ることなくその姿を遺し続ける古代建造物群と共存して暮らしています。ですが

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霧中の群鶏

霧中の群鶏

もはや何日彷徨ったのかも分からない。

昼も夜も、飢えも乾きも訪れぬ、時間が停止した静寂の世界。

薄明かりの中、深い霧の立ち籠める薊野原が、どこまでも続いた。

やがて僕は歩くのをやめ、その場に身を横たえる。

永劫にも思える静止は死に近い。

思考も。感情も。

少し何かを思い出しそうな気がしたが、その感覚さえも消えてゆく。

僕は深呼吸をし、瞼を閉じた。

そうしてすべてが終わった。

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ソクシンブツ・アンダー・ザ・ブリッジ

ソクシンブツ・アンダー・ザ・ブリッジ

橋の下で、人間にしては不自然に頭身の低い男が、座禅を組んで座っている。服装は地味で特徴の薄い出で立ちだが、特筆すべきはレインボーマーブルサイケデリック色に輝くアフロヘアである。

右側にはりんごの山、左側にみかんの山が、高さ1メートル程のピラミッドとなって築かれている。供物の類であろうか。

背後のコンクリート壁面には、錆び果てた自転車ホイールが飾られており、ちょうど後光のような雰囲気を醸

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クリスマスツリーは聖夜の怪

クリスマスツリーは聖夜の怪

その時、曇天を貫いて、彼方から一条の光が射し込んだ。僕は茂みに隠れたまま、木下闇の中からそれを見た。丘の上に立って光に包まれ佇むのは…おお…人影だ!

超常の光に照らされたアフロは、オーロラの如く、目まぐるしくその色相を変える。不恰好なシルエット。僕はその人を知っているような気がした。だがそれが誰だったのかは、今も分からない。

低く垂れ込めた雲は次第に渦を巻き、トルネード状に降りてきた。

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チェーンソー・サンダーボルト

チェーンソー・サンダーボルト

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うなぎ山サンダーりんごボルトエンターテイメント:03

【チェーンソー・サンダーボルト】俺たちゃチェーンソー・サンダーボルト。そこいらのバンドとは一味違うぜ。メンバーの全員が元、あるいは現役の林業従事者…つまり木こりなんだ。ジャンルはサーフロック!イカすだろ?そして最大の特徴は、ベースラインをチェーンソーが奏でるってところなんだ!

チェーンソーを担当する

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【落語】スベスベマンジュウガニこわい

【落語】スベスベマンジュウガニこわい

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うなぎ亭ぽにょ蔵エンターテイメント:02

【スベスベマンジュウガニこわい】巫蠱というものがある。例えばサソリ、ムカデ、毒グモ、毒ヘビ、毒ガエル……毒を持つあらゆる生物を一つの甕の中に放り込んでバトルロワイヤルさせる。最後に生き残ったやつから取り出す毒は「蠱毒」と言われ、一際強い毒で人を殺すという。古代の暗黒呪術である。

さて、ここに高名な師匠の元に集い

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ホテルの亡霊

ホテルの亡霊

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裏山の次元うなぎエンターテイメント:01

【ホテルの亡霊】歴史的建造物とされる劇場に隣接するホテルには『ホテルマン』がいる―――そのような噂が誰からともなく囁かれるようになったのは何時からのことだろう。

古時計が零時の鐘を鳴らす頃、舞台奈落の闇から人影がゆっくりと溶け出す。緞帳のマントを翻し、ベッドの天蓋に蟠るすべての悪夢を跳梁する。少年少女の恐怖を呼吸し

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迷宮(ラビュリントス)

迷宮(ラビュリントス)

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座敷牢
和洋折衷
宇宙空間

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発光イグサの畳が、どこまでも、どこまでも、敷き詰められては続き、地平の闇へと消える。無限の床面が発する怜悧な光は瞬きもせず、この世界を仄かに蒼白く浮き立たせる。

天井は全くの暗黒だ。光を全く反射しない暗黒物質でできているのか、あるいは空虚な闇がどこまでも広がっているのか、それは未だに分

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夢世界旅行:第十三層「モン・サン=ミシェル」

夢世界旅行:第十三層「モン・サン=ミシェル」

【ダークりんご山うなぎライジングエンターテイメント】

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孤島
SF
魔女

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ギイ…ギイ…ギイ…

棺桶のような古びた舟が、陰鬱な軋み音を立てながら、暗く静かな海を進む。船体に当たる波がチャプチャプと小さな音を立てている。天穹は果てしなく高く、真黒な闇に呑まれ、見ることはできない。海全体が発する仄青い電光色と、辺

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小話集(1ツイート)#01-#11

小話集(1ツイート)#01-#11

01 量子力学むかしむかし、入江の浜辺で相撲を取っている二人の漁師がおりました。地殻が変動し、大陸が移動した今も、彼らは相撲を取り続けているのです。その場所は大西洋にある海底火山の噴火口であるとも言われています。ふしぎなふしぎなものがたり。【量子力学】

02 山うなぎ峻嶮な岩山を登り、彼は神々が降り立つという山の頂に立った。重く垂れ込める暗雲が渦巻き、雷鳴が轟く。ゴソルリオンは眼を見開いた。

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