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「アフォーダンス」と「シグニファイア」の違いについて

デザインの基本を知るのに、「アフォーダンス」と「シグニファイア」の違いについて理解する必要があります。改訂された書籍『誰のためのデザイン?』に両者の違いが書いてあったので、なるべく分かりやすいようにまとめてみました。

なお私はデザインの領域に足を踏み入れたばかりの新米なので、もし間違っていたらご指摘していただくとありがたいです!

アフォーダンスaffordance

「アフォーダンス」は、アメリカの心理学者ジェームズ・ギブソンが「与える・提供する」という意味を表す英単語「アフォードafford」から作った造語です。『誰のためのデザイン?』を書いたダニエル・ノーマンがデザインの世界に持ち込み、その概念が広く知られるようになりました。

「アフォーダンス」とは、「物理的なモノ」と「主体者(人)の能力」との関係性です。アフォーダンスの存在は、「モノの性質」と「そのモノとインタラクションする主体の能力」が合わさって決定されます。

たとえば、あなたの目の前にごく一般的な椅子があったとします。あなたはその椅子を使ってどんな行為ができるでしょうか? 多くの人はまず「座る」ことができると答えるかもしれません。この場合、「椅子は人に座ることをアフォードする」または「椅子と人との間には”座る”というアフォーダンスがある/存在する」と表現します。しかし、これはあくまでもあなたと椅子の関係性です。主体者がまだ幼い子どもだった場合、その椅子に座ることはできないかもしれません。その場合、「椅子は幼い子どもに座ることをアフォードしない」または「椅子と幼い子どもの間には”座る”というアフォーダンスがない/存在しない」と表現します。

モノが持つ固有の性質を「アフォーダンス」と認識している人がいるそうですが、これは誤りです。モノの性質はあくまでもそのモノに結びついたものであり、「性質」と「関係」は異なります。上記の例のように、主体者が大人から子どもに変われば、関係性も変わります。大事なので何度も言いますが、アフォーダンスはモノと主体者の関係性なのです。

話を戻しますが、あなたの目の前にある椅子には「座る」以外に他にどんなアフォーダンスがあるでしょうか? もしかすると、「持つ」「運ぶ」「投げる」「踏み台にする」「支える」「分解する」「壊す」などのアフォーダンスを考えたかもしれません。アフォーダンスはたとえそれが目に見えなくても無数に存在します。しかし、主体者はそのうちの一部しか知覚することができません。そのため、アフォーダンスの全集合は「真のアフォーダンス」、知覚できるアフォーダンスは「知覚されたアフォーダンス」と定義されます。もしあなたがデザイナーなら、アフォーダンスが見えるかどうかはとても重要になります。デザイナーなら椅子のアフォーダンスを10個以上はパッと思い浮かべなければなりません。なお、どんな行為ができるかという意味で「アフォーダンス」という言葉を使っていますが、どんな行為ができないかという意味で「反アフォーダンス」という言葉も使われます。「〜しないことをアフォードする」または「〜することをアフォードしない」という表現をします。椅子には「食べられない」「物理的なものを貫通させない」といった「反アフォーダンス」があります。

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「真のアフォーダンス」と「知覚されたアフォーダンス」

そして、アフォーダンスが有効に働くためには、それが発見可能であること、すなわち知覚可能であるようにデザインする必要があります。ここがデザイナーの腕の見せどころで、アフォーダンスの存在を示す「シグニファイア」の扱い方次第でデザインの良し悪しが決まります。

シグニファイアsignifier

「シグニファイア」とは、主体者に適切な行動を伝える知覚可能な標識すべてを示すシグナルです。たとえば、ドアを押させるためにある”押す”という「サイン」、雪で覆われた場所の最も通りやすい道を知らせることができる他の人が先につけた目に見える「足跡」、時間が経過したことを知らせるタイマーの「終了音」はシグニファイアです。

シグニファイアはその性質が何であろうと、あるいは計画的であろうと偶発的なものであろうと、世界の本質と社会的行動の本質に関する価値ある手がかりを提供してくれます。そのため、人びとが必要とし、またデザイナーが人びとに提供しなければならないのは「シグニファイア」です。そして、デザイナーが知覚されるシグニファイアを提供しなければ、アフォーダンスはうまく機能しません。デザインにおいて、「シグニファイア」は「アフォーダンス」よりも重要であると言えます。

創造的なデザイナーはシグニファイアとなる部分をデザインにうまく組み込み、一貫したまとまりのあるエクスペリエンスが得られるようにします。ドアやスイッチのような簡単なモノに主体者に指示するような手書きのサインがあったら、それは悪いデザインの証拠であると言えます。

□ アフォーダンスとシグニファイアの関係性

「アフォーダンス」と「シグニファイア」の関係性をより深く理解するのに、下の図が非情に役立ちます。デザイナーによくある間違いで、間違って「シグニファイア」のことを「アフォーダンス」として扱うことがあるそうですが、それは知覚されたアフォーダンスがシグニファイアとして働くことが多いからです。

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「アフォーダンス」と「シグニファイア」の関係性

関係性のまとめ

  •  「真のアフォーダンス」のいくつかは知覚される(=「知覚されたアフォーダンス」)

  •  すべての「知覚されたアフォーダンス」は「シグニファイア」である。

  • 「シグニファイア」のいくつかは「知覚されたアフォーダンス」である。

  • 「シグニファイア」のいくつかは「真のアフォーダンス」である。

  •  「真のアフォーダンス」のいくつかは知覚されないものがある。

  • 「真のアフォーダンス」の反対は、「反アフォーダンス」ではなく「偽のアフォーダンス」である。

  • 「反アフォーダンス」は「〜しないことをアフォードする」または「〜することをアフォードしない」という意味である。


参考資料

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