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バカ格差③

前回前々回の続きになります。

第5章 世界のバカ格差

①中国のバカ格差
②アメリカのバカ格差

中国のバカ格差

世界の2大大国といえば中国とアメリカですが、この2か国はそれこそ「バカ」が付くほどの格差に溢れた国となっています。

その一つの証左としてジニ係数を見てみましょう。ジニ係数というのは、その社会における所得分配の不平等さを数値化したもので、0から1の数字で表されます。0に近いほど富が均等に分配されていて、1に近いほど格差が大きいことを示します。

中国政府は自分たちの格差を国際舞台で披露したくないため2005年以降ジニ係数を公表していませんでしたが、なぜか2013年に約10年ぶりにジニ係数を発表しました。その発表の内容は、2008年は0.491だったものが2012年には0.474に、そして2016年には0.465になって改善が示されているというものでした。(2020年は0.468)

ちなみに、世界銀行の基準ではジニ係数が0.4を超えると深刻な格差がある社会と定義され、0.5を超えると暴動や内乱が起こることが少なくないようです。(ちなみに、2019年の数字を見てみると、格差が進む日本は0.33。アメリカは先進国の中で最大の0.40。ブラジルは0.48、南アフリカは0.62です。)

しかし、北京大学の調査によると、この政府発表の数字には正確性がないとされています。西南財形大学2010年に実施した調査によると、ジニ係数の指数は0.61で、こちらの方がより現実的な数字とされています。

中国のジニ係数は1980年代には0.3だったことを考えると、日本同様にすさまじい経済発展を遂げた一方で、格差もとんでもなく広がったと言えるでしょう。

また、中国は闇経済の規模があまりに大きいため、実際の格差を把握するのが困難だという側面もあります。ビジネスにおいてコネが何よりも重要な中国(他の新興国も同様)では、賄賂など様々な便宜を図ることが生き残る術でもあったりするのです。

中国の格差を象徴する出来事として、2014年に一つの詩がブームになったということがありました。

「中国の大半を通り抜けてあなたを寝に行く」

余秀華さん

これは湖北省郊外の農村で細々と畑を耕しながら暮らしている余秀華(ユイシュウホウ)さんが中国版のLINEとも言える「微博(ウェイボー)」で発信した詩です。この作品は、夫が妻と一夜を共にするために中国全土を通り抜けていかざるを得ないような生活を送る「農民工」の悲しみや辛さを表しているのです。

かつては性生活は農民にとっても日常生活の一部でしたが、収入格差が広がり、都市部に出稼ぎに行くことが当たり前になった世の中では、妻に会うために何千キロも移動しなければいけない労働者たちが何万人も存在します。この詩はそんな現代中国のゆがんだ社会を素直に描写するものとして、中国全土に衝撃を与えたと言われています。中国ではネットやメディアでも自分の正直な気持ちや社会のゆがみを批判することはご法度ですから、なおさらこのストレートな表現が人々の心を打ったのでしょう。

このように格差が拡大する中国ですが、それを是正するような動きは存在しません。もしこのまま格差が広がっていくようであれば、中国は国としての形を維持することができなくなるという意見もあります。従来中国は格差がすさまじくなると革命が起こり、王朝がひっくり返るという歴史を繰り返してきましたが、果たしてこの先この国はどこに向かうのでしょうか。

②アメリカのバカ格差

おそらく多くの日本人は、アメリカは経済でもエンターテインメントでもグローバル社会においてもダントツトップの超大国なので、トップ1%の人々が国の42%の富を所有するという超格差社会だということを知らないのではないでしょうか。

裕福な人々は新興国の成長の一部を享受して豊かになっていく一方で、中間層や中間層になりたい人たちはお金がなく、購買力がないため経済全体の力がなくなっていることが問題になっているようです。

「Inequality for all」(すべての人にとって不公平)という映画では、驚くべき富の偏りが紹介されています。2009年にリーマンショックから復活後の経済的利益の95%がアメリカのトップ1%に渡っており、一方で中間層の収入は減っているのです。

アメリカでは、保守的な想定でも、人口の15%が貧困層だとされており、22%の子供は貧困層です。そして、貧困層に生まれた42%の子供たちは一生貧困です。

アメリカは世界で一番豊かな国ですが、階層の移動(貧困層から中間層、中間層から富裕層)が極めて難しい国でもあるのです。

第6章 日本からバカ格差をなくすには

ここまでご紹介した通り、日本には様々なバカ格差が存在します。筆者は、本当に問題なのは、格差があることを自覚していない人があまりにも多いことだと主張します。

これはリテラシーの問題でもあると思うのですが、無知ゆえに疑いもなく現状を受け入れてしまったり、人との違いに気づかなかったりすることはよくあることですが、アンテナを高く張り、必要な情報を主体的にキャッチし、今置かれた状況、事実として存在する格差を客観的に把握することは、格差を減らすことや格差から脱出する第一歩になるのです。

また、異なる価値観に触れることも格差の是正につながります。例えば第1章で出てきた「タワマン格差」なんてものは、ヨーロッパの価値観(都会の中にある人工的な箱の中で住むことは貧しいという考え方)を知れば、ばかばかしくなるような格差です。

日本はまだマシ。外国と比較せよ。

日本で格差が広がっているのは間違いありませんが、世界的に見ればまだまだ豊かな国だと、著者の谷本さんは言います。

「日本は今後発展途上国になってしまう」という過激な論調もありますが、彼女は日本人の教育レベルやインフラの水準を見る限り、そこまでひどいことにはならないと考えています。

他の先進国でも日本より格差が大きい国はたくさんあり、代表格のアメリカをはじめ、カナダやイギリス、ドイツやイタリアなども相当な格差があります。

アメリカやイギリスなどの格差がすさまじい国は、それに起因して治安がすこぶる悪いです。確かに、イギリスには昔住んでいましたが、常に身の安全を気にしながら生活をしていました。子供を一人で外出させることは危険ですし、アメリカやイギリスなどでは12歳未満の子供を家で一人で留守番させたら逮捕されます。(アメリカは年齢によって留守番をしていい時間が異なります。7歳以下はどんなに短くてもダメ)

もっと自分の軸を持て!

日本には様々なバカ格差がありますが、自分自身の軸となるものがあれば、そんなバカ格差は気にならなくなります。自分が信じるものだったり、自分が良いと思うものがあれば、それを拠り所に生きていけるものです。

結局のところ、格差というものは他人との比較でしかなく、相対的なものです。なので、自分の軸を持ち、信念を持ってブレずに生きればそれでいいのです。他人がどうこう言おうが知ったこっちゃありません。そのくらいの強さを身につけて、格差を乗り越えていきたいものです。

まとめ

最終章の「結局海外に比べたら、日本の格差なんて大したことないから、自信をもって生きていこう!」という結論はかなり安直だなと感じましたが(笑)、周りに振り回されずに自分らしく生きていくことの重要性には異論の余地はありません。

自分の子供たちや生徒たちにも、そんな強さを身につけて将来生きていってほしいと思いました。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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