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『村上T〜僕の愛したTシャツたち』村上春樹著、新潮文庫

 ビジュアルというテーマとして、誰もが身近に触れているトピックを選んでいる本を紹介します。これは、著者が気に入ったり、持っているTシャツを紹介することで、その思いや考えを綴っていくエッセイです。そこで知れる村上春樹のこだわりやスタイルを知れるのが面白いです。
 例えば、私はこの本を読んだことで、村上さんはほとんどいつもTシャツと短パンで過ごしているのがわかりました。また、どこかに出かけて(例えばレストランとか)、スボンを履いていない方は入場できません、と言われたら、カバンの中に入れているズボンをその場で履くという対応をしているのも知りました。これは、他の作家さんがしたのを目の当たりにして真似をしているとのことです。なかなか、その光景を想像するとおかしくなります。
 Tシャツのテーマごとに、ちょっとしたコメントが面白いです。例えば、車のデザインのTシャツだと、お気に入りはフォルクワーゲンのビートルのシャツを紹介してくれています。他にいただけないのは、フェラーリとかポルシェとか、なんかはではでしくて着たくないとか。大学の名前があしらってあるシャツだと、どうにも照れ臭いし、着る勇気が出てきこないとか。それは自分が言っていないのに、ハーバードとか有名校なんかするのは馬鹿げているし、かといって自分の出身校の早稲田大学のシャツはといえば、なんか気恥ずかしいと思えると。他にも、数々のジャンルのものを紹介してくれますが、なかなかTシャツもお気に入りを探すのは簡単ではなさそうです。村上さんが好むTシャツは、変に派手でなく、それできて気が利いている、ぱっと見意味がわからないようが良いようです。そんな著者が一番、好きなのは、それでいて、着こなせる自信がないというのが、白の無地のTシャツです。これをカッコよく着こなすのは、マーロン・ブランドとかジェームズ・ディーンぐらいだろうと言っています。私はその名前が出てきた時、何とはなしに、私の頭の中では和田誠さんの描くイラストのマーロンやジェームスが出てきました。
 私はこの本を読んですぐに、自分の持っているTシャツを全部写真に撮りました。村上春樹のように膨大に持っているわけではなく、20枚ぐらいでしょうか。それでも、そのうち、SNSかなんかに写真と私なりのそのTシャツとの出会いやら思いやらを書いてみたいと思いました。Tシャツについて楽しく、気軽に、読めるエッセイとしておすすめです。

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