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『フラジャイル』弱さからの出発   松岡正剛 Ⅰ

使命、すでにそれがひとつの弱点である。
意識、それがすでにひとつの弱点である。
三島由紀夫『夜の車』


Ⅰ ウイーク・ソートで?


僕が初めて「フラジャイル」という言葉を意識に留めたのは、ステイングの『フラジャイル』だろう。

身体と鋼が一つになった時、血が流れ
(体にナイフが刺さった時)


赤い夕陽のような色に染まる


翌日の雨は血の跡を流してしまう


けれど、わたしたちの心にはいつも
傷跡のようなものが残るだろう


ひょっとすると、
この最終行動は人生の議論を決定的にする


暴力からは何も生まれず、それにこれまで何も出来なかった


怒りの星の下に生まれてきたにもかかわらず、人間がこんなにももろいということを忘れはしまいかと


雨は降り続くんだ


まるで星が涙を流しているようだ


まるで星が涙を流しているようだ


降り続く雨は言うだろう


なんて人間はもろいんだ


なんて人間はもろいんだ
『フラジャイル』ステイング

ステイングは人間の愚かさを嘆き『フラジャイル』として伝えた。


『フラジャイル』と言うタイトルの曲はその後、日本でも数多くリリースされた。
Every Little Thingの『フラジール』もその内の代表と言ってもいいのだろう。

あらゆるところで『フラジャイル』は蠢いている。


『フラジャイル』と言う言葉で何がイメージされるだろう。
弱さ、傷つきやすさ、壊れやすさ、幼さ、病弱。



最近では“ANTIFRAGILE”と言う言葉も造られ、曲名にもなっている。“壊れにくい”と言う意味の“造語”だ。


松岡正剛が記す“フラジャイル”は多様な“フラジャイル”だ。

弱さ、弱々しさ、薄弱、軟弱、弱小、些少感、瑣末感、細部感、虚弱性、病弱、希薄、あいまい感、寂寥、寂寞、薄明、薄暮、はかなさ、さびしさ、わびしさ、華奢、繊細、文弱、温和、やさしさ、優美、みやび、あはれ、優柔不断、当惑、おそれ、憂慮、憂鬱、危惧、躊躇、煩悶、葛藤、矛盾、低迷、たよりなさ、おぼつかなさ、うつろいやすさ、移行感、遷移性、変異、不安定、不完全、断片性、部分性、異質性、異例性、奇形性、珍奇感、意外性、例外性、脆弱性、もろさ、きずつきやすさ、受傷性、挫折感、こわれやすさ、あやうさ、危険感、弱気、弱み、いじめやすさ、劣等感、敗北感、貧困、貧弱、劣悪、下等感、賤視観、差別観、汚穢観、弱者、疎外者、愚者、弱点、劣性、弱体、欠如、欠損、欠点、欠陥、不足、不具、毀損、損傷………辺境性、辺縁性、境界性など
松岡正剛『フラジャイル』弱さからの出発より 


おおむね「弱さ」は「強さ」の設定によって派生する。
「強さ」の相対として「弱さ」は浮かび上がり、そして深淵さを帯びる。

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