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【読書感想】「自分のうけいれ方」何かになろうとしなくていい

人生に行き詰まりを感じていてなんとなくもう、自己肯定感を高めるじゃなくて自己受容でいいんじゃないかな、と思っていた時に出会った本です。
自分のうけいれ方(愛蔵版) 著 加藤諦三


いつも「私がこうだったらなー」と思っている人に刺さる本

フレデリック・パールズという人がどういう人か知らないが、❝Born to Win❞という本に、その人の言葉として次のような言葉があった。
「クレイジーな人は『私はリンカーンである』という。ノイローゼの人は『私がリンカーンだったらなー』という。健康な人は『私は私、リンカーンはリンカーン』という」

自分のうけいれ方(愛蔵版)まえがきより

ノイローゼの人は『私がリンカーンだったらなー』という。
これ私のことじゃん!とベッドの上で思わず口に出てしまった日のことはまだはっきりと覚えている。
周囲の人と自分を比較してこの思いにかられたことは数えきれない。
これを読んで共感できたり思い当たるフシのある人(神経症的な人)や、ありのままの自分ってなに?自己受容・・・はて?みたいな人は読んでみると発見があるかもしれない。

自分が抑圧している幼児性とは

悲劇は幼少期に愛情が満たされなかったことにはじまる。愛情が満たされないまま大人になると、幼児性が残ってしまう。ここでいう幼児性とは、愛してほしい、自分のことをみててほしい、受け入れてほしい、というような幼い子が母親に求めるような欲求のこと。
でも、大人になってそんなこと大っぴらには言えないから、幼児性を無意識に抑圧しようとする。しかもその無意識の下には、親に満たされなかった報われなかった負の感情が渦巻いている。怒り、憎しみ、敵意が隠れているのだ。これを周囲の人に向けてしまっているという。

気づけなかった”無意識”の恐ろしさ

注目すべきは”無意識”だと思った。指摘されるまで気づかなかったけど読んでハッとした。過去の人間関係を振り返ると、私は関わる人に無意識に親を投影していたのだと思う。母子家庭からの再婚で、ガッツリ親のご機嫌を伺う幼少期だった。怒らせないように、怒られないように。それが染み付いて、周囲の人は親じゃないのに、親のように接していたんだと。そのように接しつつ、抑圧された心の奥には怒り、憎しみ、敵意があってそれを向けているという。

親からもらえなかった愛情を他人からもらおうとして失敗した・・・

人はコミュニケーションを図る時に表面上だけでなく、無意識の部分でのやり取りが大きく影響しているそうだ。まさか、まさか、周囲の人に愛情を求めていたなんて、、、そのくせ心の奥底に怒りと憎しみが隠れているなんて思いもしなかった。相手に気に入られることで自分とかその場を守ろうとしているのに(これも神経症特有の思考)、負の感情がある。これじゃ上手くいくわけなかった。

読んでいて、ヘコむヘコむ。
でも読む手がとまらなかった。キツイことやキビシイことがたくさん書かれているけど、何がダメだったのか知りたいと思った。もう今のままじゃ限界だから変わりたい、手遅れかもしれないけどなんとかしたいという思いが、自分の中にまだあったみたいだ。めちゃくちゃ意外だったけど。

自己受容、何かになろうとしなくていい

ありのままで生きていないから詰むとも書かれている。
ありのままに生きようとしない=なにか別のものになろうとする
神経症的な人は誰かに認められたくて、ちやほやされたくて自分に過剰なノルマ負荷をかけてしまう。それも幼児性が満たされていないのが原因だ。誰も頼んでいないのに、完璧にやろうとする。でもできない、現実と理想の自分の乖離に苦しむ。しかも努力しない…アイタタタ…。

「何もしなくても、そこに存在しているだけでいいよ」「生きているだけでいいんだよ」っていうのが本来のありのままだという。
これも幼少期になにか役割を押し付けられたりしなければ、ちゃんと無意識に根付くものらしい。
子どもが親の世話をしたり(親が子どもにグチを聞かせるなど)、家庭を維持していくために犠牲になると”ありのまま”が分からなくなってしまうんだと思う。何か役に立たなくちゃ、良い子(親にとって都合の良い子)でいないとダメなんだ、という思い込みが他の何かになろうとして、自分を見失ってしまうことになったんだと思う。

これからどうしたらいいのか

この本にはまだまだ耳が痛くなることがたくさん書かれている。
これまで問題が起きた時に向き合ってこなかったこと。
親もまた幼児性を残している人間だったこと。
親から破壊的メッセージを受け取っていること。
親から心理的に自立できていないこと。
他人に気に入ってもらうことで自分を守ろうとしないで、自分の意見を通すために戦うことが必要なこと。

だけど親から愛されなかったことを受け入れて、苦しみから逃れようとしないで向き合うと、成長につながるという。私はそれを信じてみようと思う。
キビシイことばかりのようで、あなたはこれまで充分がんばってきたよ、恵まれない環境を生き抜いてきたことを大いに誇りなさいと労ってくれている。こんなふうに自分のことを分かってくれる人がいて、めちゃくちゃうれしかった。

ダメな自分も否定しないで一緒にね

本を読んでこんなに苦しいと思ったのは、はじめてだった。ウソみたいに、自分のこれまでの生き方がかかれていた。今の自分が神経症だとは思わないが、まぎれもなく過去の自分がそうだったことを思い知らされた。神経症的思考の持ち主がどうして人間関係で行き詰まってしまうのか、その原因が分かった。そうなってしまうまでの過程も書かれている。すべての人に当てはまるとは限らないだろうが、私はこれだった。これまで努力の方向性や思い込みが間違っていたこと、それに気づくことで変に消耗していたエネルギーを正しい方向に使えるようになること。自分とこれまでの人生を客観視できるとてもいい読書になった。

この本に出会ってから、加藤先生の他の著書も読み漁って繰り返し読んでいる。実際に葛藤しすぎて眠れなくなることもしばしば。(Kindleで無料で読めるものがたくさんあるなんて、ありがたい)

これまでの人生を帳消しにしたいとか、全部やり直したいとか思っていたこともあるけど、どうしたって時間は巻き戻せない。
だから、過去の信じられないような失敗とか躓きとかも抱きかかえたまま、だめな自分も一緒に生きてみようと思う。それが自分だから。



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