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夜を越えて、闇を抜けて、迎えに行こう。sumika復活のアラバキ

隼ちゃんが突然に旅立って2週間が経った3月10日、sumikaが新曲を出すと発表した。
その日の朝私はこんなツイートをしている。

何が北海道のフェスに出てくれたら、だ。

この頃の自分に言いたい。 
4月30日、sumikaのために初めて1人で宮城県まで行ってるよって。北海道民にとって他県に行くのはほとんどの場合飛行機を使わなきゃいけない大イベントなのに、それをやってでも会いに行きたいくらいあんたはsumikaが好きなんだよって。

あとワンマンにも行きたいって素直に言え。
過去には「sumikaのツアー行ってみたい」って何回もツイートしてた。sumikaは4年前のフェスで1度だけ見た。これが私にとって最初で最後の隼ちゃんのいるライブになった。もっと好きな人もいるからってその時は思ってた。遠慮しなくても良いから当たらなかったとしても応募くらいしてみればよかったのに。

ずっと学生の頃から憧れていた春フェス。
sumika復活の1発目のアラバキということで30日だけ行くことにした。ほんとはもっと楽しい嬉しい理由で行きたかった。それでもまたここから始めていくと決意してくれた3人を見届けに行こうと思った。


リハからメンバーが出てくるのを待っている間に搬入されてきた楽器の配置が今までと違うのがわかった。
いつも隼ちゃんがいた下手側(観客から見て左側)にドラムがセットされていた。
この時点で胸が締められた。
当たり前なんだけどさ。だってずっとステージには4人いたんだから。出てくれるのは嬉しい。だけど1人いない現実を突きつけられるのだから、心から楽しい!とはならないのが複雑だった。私は前から5列目で見ていた。周りの人たちの表情は今までになく固かった。

3人よりも先にゲストメンバーが出てきて、拍手で出迎えられた。変わった様子もなくサウンドチェックを始める。平然を装う裏にどれほどの悲しみを隠しているんだろう。

そしてついに3人が出てきた。
微笑みながら手を上げる荒井さん。
凛々しい表情のおがりん。
満面の笑顔で登場した片岡さん。
歓声、拍手、目に涙を浮かべる人、直視できず一瞬目をそらす人、それぞれの気持ちをさらけ出して彼らの姿を受け止めた。
「おかえりー!!」と声があがる。
「ライブまでは何も言わないよ。もったいぶるよ俺は。」
にこやかに片岡さんは答えた。
1曲目は初めて私が北海道でsumikaを見た時のリハと同じ、MAGICだった。
4年前は当たり前に声が出せる中での合唱だった。その時と違うのは3年間こらえてこらえて、やっと本来のライブを取り戻したという解放感と、嬉しさのある合唱だった。待ってたと言わんばかりにみんなで「It's a MAGIC!!!」と歌った。リハ2曲目はベース始まりのPorterだった。
観客に聴こえるスピーカーからは音が出ず、
バンド側が自分たちの音が聴こえるスピーカーだけが鳴っていた。かなり音は小さかった。バンドの内々だけのリハだったみたいで「本気のリハーサル開始します!」はなかった。

そして本番。
改めてみんなでおかえりー!と言った。
始まって第一声が「ただいま」だった。
おかえりを言うためにここに来た。さよならではなくただいまと彼の口から聞けたことが本当に嬉しかった。
1曲目はフィクション。これも4年前と同じ始まり方だった。「さあアラバキ、始めましょうか」またここから始めようという気持ちを込めて今回はこの曲にしてくれたのか。
キラチューンが続く。Loversと、その次のふっかつのじゅもんで打ちのめされた。
ギターソロは片岡さんだった。
いつも隼之介さんが前に出てきて弾いていたソロを、彼の分まで背負うように一心不乱に弾いていた。
彼が残してくれたギターをこれから自分が受け継いでいく。その決意が垣間見えて心が震えた。

片岡さんからこれからの決意が語られた。
「とても悲しいことがありました。落ちるところまで落ちました。その上で、やっぱり音楽が好きだな。バンドが好きだな。sumikaが好きだな。
心から言ってくれてるのが伝わった。

「俺らを好きでいてくれる、抱きしめてくれるのは純粋に嬉しい。sumika初めましての人とも大きな縁を作りたい。参加賞ではなく一等賞を獲りに来ました!sumikaですよろしくお願いします!」

どんなに悲しい時でもライブのコンセプトは変わらなかった。初めてsumikaを知る人も巻き込みたいのが、どこまでもsumikaらしかった。片岡さんのことだから私達に心配をかけまいと湿っぽくはしたくなかったんだろう。曲の持った心が踊るオーラを出したこれまでと変わらない楽しい雰囲気のライブだった。隼ちゃんがいないこと以外は。

1.2.3..4.5.6、イコール、念願だった私の大好きなSummer Vacation。
ずっとこれを生で聴くのが夢だった。「会いたい気持ちは昼の陽だまりに置き忘れたフリしてほら、また寂しいだけだ」これが3人の本音なのかなと思ってしまった。
最新アルバムから透明。「愛している、愛している、愛している、あなたを」ストレートなラブソングだと思ってたけど今となっては隼ちゃんへのメッセージソングになった。


5年ほど前、生きている意味というものを失いかけていた頃に勇気づけられたファンファーレ。
私はずっとこの隼ちゃんのギターソロを聴きたかった。隼ちゃんにとって最後の北海道のフェスとなった去年のライジングでこれをやっていたのに、実家から引っ越したばかりで貯金がかなり飛んだため行けなかった。この願いはついに叶わなかった。
ああ、夜を越えて闇を抜けて迎えに行こう。
光る朝に目背けずに今瞬きを繰り返すのさ。
あの時生かしてくれた歌詞を、ようやくライブで聴くことができた。

ゲストメンバーの太郎さんのギターソロの最中。
マイクを使わなかったので声は聞こえなかったけど、隼ちゃんの立ち位置だった左に向かって片岡さんが言ったのを見た。


「愛してる!!!!」


隼ちゃんに言っていた。
涙が出た。

姿は見えないけど、彼はそこにいる。
歌詞の中にも、ステージの上にも。
悲しみは消えない。
だからみんなでずっと彼を、sumikaを愛し続ける。
それはきっと届いている。
そんなことを感じた復活劇だった。

 
最後はShake&Shake。
片岡さんは近くの観客に指を指してアイコンタクトをして、遠くにも手を振った。
感動的最愛集を見せてもらった。 

最後に持ってくると思っていた新曲、
Starting Overはやらなかった。
これはきっとハマスタでやるまでは温めておくのだろう。最後の部分を合唱するの感動的だろうな。

最後、片岡さんは言った。

「やっぱりこの空気がないと苦しい」

私達観客にもライブは必要だけど、
彼らにとっても必要な場所なのだろう。
観客は声を出して彼らに声援を届けて、バンドは歌って音を出してそれぞれに気持ちを乗せて。
お互いを励ましあって少しずつでも悲しみが癒えていけたら嬉しい。

「僕達今年10周年なんだけど、長いのか短いのか分からないです。もっと続けてる先輩も今日ここにたくさんいるので。これからもさらに10年、20年続けていきたいです。」

目に見えているのは3人だけど、これからもsumikaはずっと4人だと私は思っている。
形は変わってしまったけれど、
これからおじいちゃんになるまで続けていく3人を、きっと見ていてくれる。
力強く進んでいく彼らを、出来る事は限られているけど応援して支えていきたい。


ずっと愛しているよ。sumika。
これからも最高の音楽を届けてください。
おかえりなさい。
帰ってきてくれてありがとう。


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