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地域包括ケアシステムと住民自治


≪おごおりトーク11≫

日本は諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しています。65歳以上の人口は現在3,500万人を超えており、2042年の約3,900万人でピークを迎えますが、その後も75歳以上の人口割合は増加し続けることが予想されており、小郡市も決して例外ではありません。
このような状況の中で、自治体における住民自治が直面している大きな課題の一つに「地域包括ケアシステム」の問題があります。

厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上となる2025年(R7年)以降、国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれるため、2025年(R7年)を目途に高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで継続できるように、地域での包括的な支援・サービスを提供できる体制=地域包括ケアシステムの実現を目指しています。
地域包括ケアシステムとは、自治体が責任主体となり、地域の自主性や主体性に基づいて高齢者が必要とする様々な生活支援サービスが日常生活に最も身近な場所で適切に提供されるよう、地域の実情や特性に応じた体制づくりを行っていくものです。
しかし、これはそう簡単な話ではなく、厚生労働省は全国各地の「地域包括ケアシステム構築モデル例」を示していますが、こうしたモデル事例を取り入れればその自治体の望ましい地域包括ケアシステムが実現できるかというとそうではありません。
地域包括ケアシステムにおいて、特に地域での生活支援・介護予防の体制構築のためには、その自治体や地域の実情にあった地域住民による助け合い(相互扶助)による住民自治の仕組みそのものを創出していくことが必要となります。
つまり、小郡市における地域包括ケアシステムは、住民自治=「住民の積極的な参加と協働による自治」の観点から取り組まなければならない課題だといえます。

地域の住民自治の仕組みづくりには、公的な機関や制度による福祉サービスの提供(公助)、地域の自治会や住民、NPO・ボランティア団体などによる支援(共助)、隣近所や身近な人間関係の中での助け合い(互助)、高齢者自身が家族と協力する(自助)の組み合わせによる相互扶助の体制が必要だとされています。とりわけ高齢者の生活支援・介護予防においては、自治会や民生委員、老人クラブなどによる共助の役割に大きな期待が寄せられています。
このことから、地域包括ケアシステムの実現に向けては、まずは、すでに小郡市に地域資源として存在している自治会や民生委員などによる「地域の相互扶助の体制」、「住民の支え合いのシステム」を最大限に活用していくという観点が重要だと思います。

では、今すでにある小郡市の地域資源=「地域住民の相互扶助による支え合いのシステム」にはどのようなものがあるのでしょうか?
その一つは地域の見守り活動です。小郡市の見守り活動は小郡市社会福祉協議会がふれあいネットワーク活動として取り組んでいるものです。
このふれあいネットワーク活動は、地域に住む住民や民生委員が対象者への声かけ訪問や日常的な見守りを行うことで高齢者の孤立や孤独死を防止するための活動です。
現在、社会福祉協議会では自治会における「ふれあいネットワーク推進委員会」の設置を推進しており、一人暮らし高齢者や高齢者のみ世帯を対象にした見守り活動やサロン事業などは市内61全ての自治会で実践されています。
もう一つは地域の自主防災活動があります。自治会では災害時における防災活動や高齢者など要支援者への避難支援を行うために、自主防災組織を中心にした共助の体制づくりが行われています。
平成24年度から自治会での自主防災組織の設置が促進され、3年間で61区全ての自治会に自主防災組織が設置され活動が開始されています。
 これらの取り組みに共通しているのは、いずれも自治会を基盤とした体制がつくられており、地域住民の参加と協働による取り組みが日常生活に最も身近な場所で展開されていることです。

実は、私はこの点こそが小郡市の住民自治を考えるときに極めて重要なポイントだと考えています。
行政(各担当課)からは個別課題ごとに個々に対策が検討され、バラバラに地域に働きかけられています。しかし、それを地域で主体的に実践していく体制は自治会に一体化する方向で調整されており、その意味では地域は一つなのです。
ふれあいネットワーク活動の主体は「ふれあいネットワーク推進委員会」ですが、その実態は自治会と同一体です。地域の防災活動の主体である「自主防災組織」も自治会と一体化した組織です。つまり、それぞれ個別課題ごとに活動分野は分かれていますが、それを実践していく地域の組織は自治会と一体化されることによって効果的・効率的な活動が展開されているのです。
地域の見守り活動などが自治会活動と一体化して取り組まれることの有効性は、 「自治会の総合的機能による付加価値の創造」と「複合的な課題に対する相乗効果」にあります。これこそが最小の資源(人員や経費)で最大の効果を生み出す自治会活動の“強み”であり“可能性”であると私は考えています。
これが、私が「住民自治」のうちの「個人自治」ではなく地縁型の「地域自治」を重要視している理由です。

地域包括ケアシステムでは、地域の高齢者の日常的な生活課題についてはできるだけ身近な場所で解決を図ることを基本としながら、より大きな単位で補完的に解決を図っていく仕組みを目指して3層構造で地域の体制づくりを行っていくこととされており、これに伴い協議体の設置や生活支援コーディネーターの配置なども検討されています。
その中では、地域の生活支援・介護予防に関わる取り組みについては高齢者の日常生活に最も身近な場所で適切に実践される必要があることから、第3層の自治会圏域での体制整備が最も重要であると位置づけられています。
この第3層の自治会圏域において、すでにある小郡市の地域資源=「地域住民による相互扶助の支え合いのシステム」として、市内すべての自治会において市民参加型の活動が展開されているのは、ふれあいネットワーク活動と自主防災活動です。これらの地域資源を活用しない手はありません。

小郡市の地域包括ケアシステムの実現において最も重要なのは、「自治会と一体化したふれあいネットワーク活動と自主防災活動の充実である」と言っても過言ではないかもしれません。
私は、これらの活動はこれまで地域住民が自治会活動の中で作り上げてきた小郡市の財産であると同時に、小郡市の住民自治の“強み”であると考えています。
(2021.4.5)

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