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日傘を差す女

東京赤坂で発見されたのは、和歌山県太地で捕鯨砲手の名人と言われた老人の遺体。
警視庁捜査官の捜査は、400年続く捕鯨の町、赤坂の花柳界、そして集団就職で上京した女性たちの郷里の津軽半島北端の三厩(みんまや)村に及ぶ。

インターネット時代の今は、企業に限らずあらゆる組織が、個人にしても「情報開示」が大事とされ、「裏」が裏の奥のほうに潜むようになったが、小説が描く昭和の頃は歴然と「裏」が存在し、誰もが承知していた。
光と影。眩い世界ほど闇が濃いことぐらいわかっていて、多くの庶民や一般は批判さえしなかった。良し悪しではない。

ミステリー小説というのはどうも違うような気がした。事件の背景にある「時代」のリアルを実感しながら、ふとノンフィクションを読んでいるような気分になったし。

今は何でも即ネットで調べられる。
太地町を調べれは、捕鯨の歴史だけでなく1500世帯の町に乗り込んできた環境保護団体シーシェパードの活動家たちの映像だって簡単に見ることができたし、グーグルマップを見ればすぐに荒涼とした往時の三厩村が想像できる。女性たちの多くが別の地に嫁ぐか、函館もしくは東京へ働き口を求めたことも当然のように感じる。
赤坂界隈の隆盛も興味深い。芸妓300人という昭和時代の「待合政治」という言葉も知らなかった。

ところで、印象派の画家クロード・モネの絵が作品の「仕掛け」になっているけど、モネの「日傘を差す女」が3部作だったことも今回始めて知った。


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