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Vol.7 フィンランドの先生と考えてみた「良い職員室とは?」

このnoteでは、2024年3月25日から28日までの4日間でフィンランドのプレスクールから小中高/職業専門学校を訪れる中で、フィンランド教育の根底にある価値観のようなものを探る過程で発見したことをシェアしていきます。

▼ 学びの記録「フィンランドで見つけた…」
vol.1「信頼の文化とは」(リンク
vol.2「良い学習環境とは」(リンク
vol.3「多様性の考え方とは」(リンク
vol.4「Simpleな教員の生き方と子どもの学び方とは」(リンク
vol.5「良い困り感とは」(リンク
vol.6「異年齢での学ぶとは」(リンク
Vol.7「良い職員室文化とは」

今回のnoteでは、「フィンランドの先生の目線」で「よりよい職員室」について考えたことをまとめて行けたらと思います。実際にフィンランドの学校現場を5箇所訪問して、校長先生や教職員の方と話したことをまとめていけたらと思います。

・ コーヒー文化

キーワード「コーヒー1杯から始まる対話の文化」
まず、フィンランドの職員室で必ず置いてあるものNo.1は「コーヒーマシーン」です。フィンランドの学校現場も日本の学校現場と同じように勤務時間中はかなり忙しいので、ボタン1つでコーヒーが入れられるようにコーヒーマシーンが必ず職員室に置いてありました。中には、職員室の名前が「Kahvi huone(コーヒールーム)」という名前になっているところもあり、職員室がそもそもカフェのような位置付けになっているのが文化としてありいいなと思いました。コーヒーマシーンがあることで、先生方はコーヒーを飲むために休み時間にやってきます。そして、コーヒーがあると、お菓子作りが好きな先生がコーヒーに合うお菓子をつくってきて職員室には手作りのお菓子が置いてあることも多いです。そして、コーヒーとお菓子があると、先生方は自然と職員室に集まり、ソファでコーヒーを飲みながら雑談が始まります。この雑談の中に、フィンランドの学校現場でも大事にされている「信頼」の文化が「対話」を通じて育まれていきます。
ここで校長先生が職員室文化を作るときに大事にしていることを共有してくれました。

この学校の職員室では、お互いに話しやすい環境を作ることを大切にしていて、家族のことや仕事におけること、さらにポジティブなことだけでなく、ネガティブな出来事についても共有できるような安心できる環境である重要性も話していました。

この文化があることで、ある1人の担任の先生だけがクラスの児童のことで悩むのではなく、全校児童を全教職員で日常的な会話の中で共有しながら育んでいくことにつながっていました。(これは全校児童が100名前後だからこそできるカルチャーでもあると思います。)他にも、家族のことで悩んでいること等も共有することで、早く帰らないといけない状況の時に勤務時間に縛られず、お互いに自然と支え合える環境が「コミュニケーション」によって生まれているように感じました。「先生も一人の人間である」ことが保護者からも教職員からも尊重されている環境が素敵だと思いました。

・ アート

キーワード「デザインされた空間」
フィンランドの職員室にいくと、シンプルな空間の中にアート作品が飾られていることが多いです。アート作品がなぜあるのかについては、理由は聞けなかったので、また次の訪問で聞けたらと思います。こういった環境設計にかけられる予算を学校側も予算から算出して、先生方で落ち着く空間づくりをしているところも素敵だと思いました。日本だと「アート作品を買うなら教材を買った方がいいよね。」というディスカッションになりそうな中で、そもそも日常的に学習をする教室や働く職員室の環境の中に「美しさ」や「デザイン」の観点が入っており、子どもたちはデザインされた空間の中で生活するからこそ育まれている「美の感覚」もあるような印象を受けました。

・ソファ(リビングルーム)

キーワード「リビングルーム」
校長先生に学校を案内するときも職員室(2つ)を案内するときに「Living room」と「working room」というように呼び方を変える程、職員室の機能を分けていました。ここでは「Living room」についてシェアをしていきます。リビングルームでは、仕事は基本的にはしないでコーヒーを飲んだり、会話をしたり、ゆっくり休むことを大切にしており、電話をするときは職員室内にある電話ボックスを使用する等、空間づくりを徹底しているような印象を受けました。この写真からもIKEAの家具屋さんかなと思う程リラックスできる空間づくりにこだわっているのが伝わってきます。校長先生は、この部屋では「眠っても大丈夫。」と話しており、実際に休み時間になると瞑想している先生も見たことがあり、「休める職員室」が素敵だと思いました。日本の職員室のように、大きなデスクがないのが特徴的です。「では、教員の方はどこで仕事をするのか?」そんな疑問が湧いてくると思います。これについては2つのパターンがあることを聞きました。
1つ目は、教員の役割は授業をすることがメインなので、授業が終わると帰宅して授業準備をする先生が多いのが一般的な考え方になります。なので、そもそも職員室にデスクが必要ない考え方に納得ができました。2つ目のパターンがこの学校の職員室の特徴で「家に仕事を持ち帰らなくてもいいように、職員室(リビングルーム)とは別に作業用に一人一人の個別の空間が設けられていました。」

・コワーキングスペース

キーワード「オンとオフ」
こちらの空間は、休む部屋ではなく「コワーキングスペース」のような場所になります。なんとなく先生方の作業する場所は決められており、ここは「静かに」作業をする空間が大事にされていました。これも先生方の思いが大切にされており、フィンランドでは仕事とプライベートの切り替えを重要視しており、先生の中には仕事用の携帯とプライベート用の携帯を分けており、休み期間は仕事用の携帯を学校に置いて、しっかり仕事モードをオフにする徹底ぶりです。だから、フィンランドの学校に夏休みにメールをしても2ヶ月間メールが返ってこないことは普通に起こり得ます。この考え方から派生して「家に仕事を持ち帰らない」ための環境設定からも、子どもだけでなく先生方のウェルビーイングが日常の中で尊重されていることも素敵だと思いました。

他にもフィンランドの先生の働き方にはこんな特徴があります。

・夏休みは2ヶ月間(子どもは10週間)
・14時になると帰宅(授業が終わると帰宅できる)
・コーヒー休憩が2回*
*フィンランドでは、ランチ休憩以外にコーヒー休憩を必ず設けるように法律で定められています。 6時間以上勤務の場合、労働条件として15分のコーヒー休憩を1日に2回以上とされています。

フィンランドでは「教員離れ」が進んでいるのかを現場の先生に聞いてみましたが、日本のように教員が足りていない深刻な状況ではないと、私が訪れた地域の実態としては話されていました。その背景には、教員一人ひとりの負担が大きくなりすぎないような人材の配置と、政府からの予算の配分、そして、大前提に教員という仕事の大変さというのを社会(保護者や政府)が理解しており、教員同士でも以下の考え方が当たり前に共有されていました。

子どもと同じように教員にも休みが必要である。

子どもと関わる上で高いパフォーマンスを発揮するには、「休む」という考え方が重要で、教員が疲れている状態では、子どもとの関わりにおいて、良いパフォーマンスが発揮できないというのを話していました。

ちなみに私が今勤めている学校にも今回紹介した「職員室文化」の中で実践されていることがあります。それは「コーヒー文化」です。元々コーヒーマシーンはスタッフルームに置いてあり、昨年度の途中から教員のslackで「コーヒー☕️入りました。」と朝にメッセージが入り、続々と職員室にコーヒーを飲みに集まってきて、そこで雑談からカリキュラム設計の話まで、様々なトピックで雑談が生まれるようになりました。そして、朝と放課後の時間はコーヒーを誰かが淹れて、コーヒーの粉も常にストックされている状態が半年以上続いております。コーヒーが入ることで、煮詰まった会議も「とりあえずコーヒー飲もう!」と声がかかり、また新たな気持ちでディスカッションができる文化や年齢や立場に関係なくお互いをリスペクトしながら「下される決断はすべて、それが子どもたちにとって最善であるかを基本とする」という基本方針が常に大事にされていることも素敵な職員文化だと感じています。

職員室の中に「お互いに話しやすい環境を作る」ために、まずは職員室にコーヒーマシーンをおいてみて、ボタン1つでできるバリスタになってみることで職員室に小さな変化を起こすことができるかもしれません。是非、コーヒーマシーンで「立場に関係なくお互いに話しやすい環境」をつくりたい方は試してみるのも面白いかもしれないです。

また、フィンランドの先生の働き方(リンク)についても現地でインターンをしている時にまとめたblogもあるので是非興味がある方は読んでいただけたらと思います。

いつも読んでいただきありがとうございます。

moimoi!



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