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「否定しない習慣」 林健太郎著

コーチングのプロである著者による本作品。具体的事例が多く盛り込まれており、すぐに実践できる内容で非常に参考になった。

まず著者は、人は無意識のうちに会話の相手を否定している、と我々に気づきのきっかけを与える。善意から、あるいは相手のためを想って発する言葉が実は否定になっていることがある。例えば上司部下の関係だったり、親子関係の中で、良かれと想って発するアドバイスめいたものが、実は否定に繋がっていることは薄々は感じているが、改めて振り返ると意外と多いものだと思う。

また、ありがちな例としては、正論であったり、いわゆる論破であったりする行動も、実は否定に繋がっていることがある。いわゆる「べき論」も同様である。ビジネスの世界でも実感するが、正論を唱えて成功するならこれほど簡単なことはない。ゴールは相手を打ち負かしたり正論を突きつけて納得させることではない。極端な話、多少事実と異なっていても、相手が気持ちよく納得し、何らかのゴールや目的が達成されるのであれば、それはそれでひとつの賢い方法である。

本作品では数々の具体的な解決策が示されているのだが、そのひとつが「イエス・エモーション話法」。イエス・バット話法ではなくてイエス・アンド話法で話すことはコミュニケーションのあり方でたまに言われるが、著者は更に踏み込んでイエス・エモーション話法を推奨する。相手を肯定して受け入れ、更に感情を付け加えて相手の気持ちの上げるという話法だ。ちなみに、どうしてもポジティブな感情を付加できない場合は事実だけ受け止める方法も紹介している。例えばタモリさんの話法「あ、髪切ったんだ」だけで終わる話し方がある、という事例はおもしろかった。

他にも相手を否定しそうになったら「かもしれない」と唱えて(漫才のぺこぱ風に笑)、こちら側に何か見落としている部分があるのかもしれないという可能性を考えながら相手と話す。相手の話が終わってからツーカウント数えて話す。復唱することで会話のスピードをコントロールする。

否定する、というトピックからは少し話は逸れるが、相手の話を聞いて「わかる」と言わない。「わかる気がする」と置き換える、というやり方も興味深かった。

このように、本作品に一貫したトーンは、自分の理解できる範囲で決めつけて否定したり感想を述べたり意見を言ったりすることを控えて、自分が分かっていない部分、理解できていない部分があるかもしれない、という謙虚さと俯瞰的視点を持ってコミュケーションすることの大切さが述べられている。そして具体的事例も多く非常に勉強になった。公私にわたって取り入れている。

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