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「月の立つ林で」 青山美智子著

タケトリノオキナという名前でポッドキャストで配信されている「ツキない話」を中心に、それぞれが独立したようなエピソードが微妙に繋がり合いながら、各章の物語の主人公が抱える悩みや苦しみ、そしてそこからの解放を綺麗に描写している。

ひとつひとつの物語は独立しているように進むのだが、それらがお互いに、微妙に絡み合って表現されて物語が展開していく本作品の構成は圧巻であった。そして全て物語に必ず出てくる「ツキない話」。この「ツキない話」の配信者であるタケトリノオキナ。全ての物語に出てくるとは言え、それぞれの物語のスパイス的な要素で含まれていると思いきや、衝撃的かつ感動的な最終章へと繋がっていく。全てはこの最終章へ繋がっていたことを最後に知ることで感動はまた一段と高まる。

それぞれの物語に共通しているのは「思い込み」というキーワードで表すこともできると思う。どんな人でも挫折や苦労や苦悩は長い人生で一度ならず何度か経験するのではないだろうか。「なんで私ばっかり」とか「自分はこんなに頑張っているのに」と、自分だけが不幸に置かれ、周りは自分のことを何も分かってくれていない、という思い込み囚われる経験をしてきた人は多いだろうし、自分もそういう経験は何度もあった。しかし、多くの場合はそれは精神的に追い詰められて周りが見えなくなり視野が狭くなっている影響も多大にあり、あるいはお互いの誤解から気持ちが通じ合っていなかったりなどが原因であることも多いのだ。そんな誰もが経験するようなエピソードをうまく表現していると思う。

物語の展開がうまく最後まで吸い込まれるように読み切った。作者の他の作品も手に取って読んでみたい。

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