藤野智哉@精神科医

精神科病院の副院長をしつつ医療刑務所勤務やテレビや出版などしてます。おかげさまでTwi…

藤野智哉@精神科医

精神科病院の副院長をしつつ医療刑務所勤務やテレビや出版などしてます。おかげさまでTwitterは8万人越え。Twitterより少し詳しく話したいことなどを精神科医の視点を交えて語っていきます。

最近の記事

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自由診療精神科クリニックの闇、TMS編

過日、共同通信がTMS(経頭蓋磁気刺激治療)を施行するあるクリニックについての否定的な記事を掲載し大きな話題となりました。TMSはうつ病に対して一定条件下で保険適用ともなる新しい治療法として注目されているのになぜ否定的な記事が出たのか、そしてこの記事が出たことが今まで野放しで無法地帯であった精神科自由診療ビジネスにとってどんな意味のあることなのか、つらつらと語ってみようと思いますのでこれが様々な圧力で消される前に読んでもらえたらと思います。 そもそも先日の報道記事を読んでな

    • 僕と無敵の人の1年戦争  殺害予告〜警察編

      さて、私のツイ廃歴もついに5年目に突入し、それに合わせ誹謗中傷などに対し弁護士対応するケースもそれなりに経験してきました。 その中でも比較的興味深かったものをいくつか忘れぬうちに、いや怒り冷めやらぬうちにここに記録していこうと思います。 ただ最初に注意しておきたいのは私が書くのはよくある、開示をしたらすぐ謝罪を得られ、示談になって大金をもらえて万々歳という気持ちの良い話ばかりではないということです。そういった体験談は巷に多くありますしわざわざ私がここに書くまでもないからで

      有料
      500〜
      割引あり
      • あとがき

        私の新刊「そのままの自分」を生きてみるが4/19日に発売となりました。 今回出版にあたり、実際の書籍に収録されたあとがきは文字数などの都合もありもともとの文章をだいぶ整えたものとなりました。 しかに 出版社様のご厚意で、下記ページにて書き下ろし未編集そのままの文章を掲載していただきました。異例のことだと思います。 つまり上記は実際の本には載っていない幻の後書きでした。興味が湧いた方はぜひあとがきだけでも読んでみてください(//∇//) 【おわりに】 精神科医をしてい

        • 努力が報われるとは限らない。

          「失敗したのは努力不足」 この言葉は、一見厳しいようですが逆に言えば「努力次第で成功することができる」「努力は報われる」なんて夢を見させてくれる言葉でもあります。 団塊世代の根性論に無理に原因を希求しなくても、人は夢を見たい生き物です。ゆとり世代と呼ばれて久しい我々世代が社会の一端を担い始めた現代でも、実際に多くの人が努力をすればなんとかなる、なんとかできると蜃気楼のような夢を追い労働を続けています。 国が人民に希望があると思い込ませて搾取し続けるためには必要な考え方でも

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        自由診療精神科クリニックの闇、TMS編

          自分には味方がいないと感じた時に。

          職場、学校、家庭。 どこにでも嫌な人はいて。 あぁ誰も助けてくれない、誰もわかってくれない、周りの人もみんな相手の味方をしてる、そんなふうに感じてしまうことありますよね。 そんなしんどいことが続けば当然、自分には味方なんていない、もうダメだって、そりゃ思ってしまってもおかしくはありません。 そんな時どうしましょう? そこから離れてみましょう。 そんな簡単に離れられたら苦労しない、離れたってそいつが嫌な奴で自分に味方がいないことには変わりがない、そう思うでしょう?

          自分には味方がいないと感じた時に。

          自己の加害性について

          皆さんは自己の加害性について考えたことがありますか? 自分が他者に加害する、という可能性について想像すらしたこともない人が多いかもしれません。だからこそ我々は誰かが誰かに加害したというニュースに対し怒り大きな声で批判ができるのでしょう。 みんな自分は清廉潔白、無味無臭で綺麗な世界を生きてきたつもりなのです。その背景には加害というものを一線を超えたやたら過大なものと捉える誤解があるのかもしれません。 しかしどうでしょう。そもそも誰にも害を与えず生きている人など存在するので

          自己の加害性について

          認知の歪み 白黒思考編

          白黒思考、聞いたことがあるでしょうか? 全か無の思考とか0−100思考、二分割思考とも呼ばれたりしますが最近は認知の歪みという言葉が流行り出してそこから知ったという人もいるかもしれません。 何か事件が起こると自称専門家の皆さんが口を揃えて犯人の歪んだ考え方を勝手に「認知の歪み」ということにしてしまいコメントをするので「認知の歪み」は犯罪につながる歪んだ考え方を指すのだと勘違いしてしまっている方も多いでしょう。 しかし本来「認知の歪み」という言葉はそんな限定的な使い方をす

          認知の歪み 白黒思考編

          Twitterを騒がす小児性愛者問題に関して

          過日、大手学習塾の講師が通っている児童の盗撮画像や個人情報をネットで共有していたとのニュースが報道され大きな話題を集めました。 ニュース記事を読んでいてもその醜悪さに目を塞ぎたくなるような内容でしたが、それ以降も多くの小児性愛者によると思われる事件が多く報道され小児性愛者に対し「去勢してしまえ」「殺してしまえ」などととても攻撃的な意見が多くみられるようになりました。 小児性愛者に関して大きな事件が起こると自称専門家たちがやたらとそれっぽく「認知の歪み」という言葉を用い、犯

          Twitterを騒がす小児性愛者問題に関して

          一歩の大きさ

          僕らは普段当たり前と思って一歩一歩を踏み出しています。 例えば布団から出る一歩、家の玄関から出る一歩。電車に乗る一歩、会社に入る一歩。 決まった通りに前に足を出すのが当たり前になっていて、嫌なことに対してでもそれが至極普通のことのように足を踏み出します。 でも、意識をしていないと気がつかないけど、実はこれってすごいことなのです。例えば精神科を受診する人の中にはその一歩が出なくなってしまった人が多くいます。 なぜだかわからないけど仕事に行こうと思うと玄関からなかなか動け

          悪口を言われた時に思い出して欲しい話。

          世の中には信じられないほどの悪口が溢れています。 どうやったらそんな酷い言葉を思いつくのだというような罵詈雑言から一周回って一番性格が悪いのではないかと思うようなチクチク言葉まで、みんな趣向を凝らして嫌なことをぶつけ合って生きています。 手元のスマホでSNSをひらけば誰かの誰かに向けた悪口が飛び交っているし、もしかしたら自分にもその矛先は向いているかもしれません。一歩外に出れば職場でもご近所さんでも、ヒソヒソと誰かの悪口を言っては盛り上がっています。 ついつい自分もそれに

          悪口を言われた時に思い出して欲しい話。

          普通という異常

          ひっさびさに面白い本を読んで文書欲が出たので長文でおすすめします( ̄▽ ̄) 「普通という異常」 ラプラスの悪魔という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 みんな大好きwikipediaによると「ある時点において作用している全ての力学的・物質的な状態を完全に把握・解析する能力を持つが故に、未来を含む全運動までも確定的に知りうる」超越的な存在概念、とされています。 難しくて何言っているかわからないという人もいると思いますが実はそんなに大したことを述べているわけではありません。

          カントリーマアム山田の話

          「他人のS N Sを見て、つい比べて悔しくなったりしんどくなったりしてしまう。」 こんな相談を受けた時、僕は決まって彼の話をする。そう、カントリーマアム山田だ。 先日ボイシーでお悩み相談をしていて久々に彼のことを思い出したのでここにも書き残しておこうと思う。 山田くん(仮名)はとにかくカントリーマアムが大好きな男だった。 1枚50kcalあるカントリーマームをファミリーパックの袋で持ち歩き、学校にいる間に20枚1000kcalを食べ尽くしてしまうその佇まいから、彼がカン

          カントリーマアム山田の話

          誰かのために生きすぎない

          「誰かのために」生きすぎない 約1年ぶりに、書き下ろしの本を出しました。 誰かのために生きる。 素晴らしい言葉のように聞こえます。 実際にその「誰か」にとっては素晴らしい人であるのでしょう。 「子供のために生きる」 親として当たり前だろう、という言葉が聞こえてきそうです。 「パートナーのため、親のために生きる」 相手からもらったものを返したい。そんな気持ちもあるかもしれません。 ただその時あなたはどこにいるのでしょう。 人を優先する、ということはある意味自

          誰かのために生きすぎない

          コロナと精神科の話

          今日は、精神科とコロナの関わり、そして各地の病院でどんなことが起こっているかを知って欲しくて筆を取りました。 コロナ自体について専門外の医者がわかったようなこと言うのも違うかなと思うので、精神科に関わりがある部分だけ綴っていきます。僕自身、大学病院にいたときにコロナ病棟お手伝いに行ったりして、前線でやっているスタッフさんたちの頑張りを見ていたからそっちに関しては僕なんかがわかったような顔して語ってはいけないなと思っていますので。 まずこの記事を書くにあたり、前提として僕の立

          コロナと精神科の話

          誰にも誇らない人生を

          先日いのちの電話協会の機関紙に寄稿をさせていただきました。多くの方に読んで欲しいのでnoteにもそのまま載せておきます。 「誰にも誇らない人生を」 精神科医という仕事をしていると「生きている理由がない」という人によく出逢います。 現代ではインターネットやメディアを通じて大層立派な人生を歩んでいる人たちの話が多く飛び込んでくるので、つい生きるのには大きな理由が必要なのではないかと考えてしまいます。 しかし、こんなことを精神科医が言って良いのかと思われるかもしれませんが、

          誰にも誇らない人生を

          福祉の話

          困ってるなら役所で相談してみれば? 支援をする側は気軽に言いがちな言葉です。 でも 役所がどこにあるか知らない。 役所に行っても何課で相談したら良いかわからない。 そもそも何を相談したら良いかわからない。 わかっても上手に説明をできない。 突っぱねられたらそれ以上どうして良いかわからない。 そんな人が多くいます。 他人が事件を起こした時に「支援を受ければよかったのに」と気軽に言えるのは支援を受けようとしたことのない人間です。 支援者として関わる人間は、そこまで辿り着いた