見出し画像

ユーザーインタビューの準備って何してる?よい質問を作るコツと心得

こんにちは。東芝UIデザインチームの小野です。
UXデザインや人間中心設計のステップで「ユーザーインタビュー」ってよく聞きますよね。仕事や大学の課題でやっています!という方も多いでしょうか。
 
簡単に言えば「人に質問をして情報を得る」ことですね。UXデザインやUIデザインのフェーズごとに、その役割をもう少し詳しく解説します。

  • 現状分析…ユーザーそのものや課題への理解を深める

  • 仮説検証…考えた仮説(アイデア)がユーザーのニーズに沿っているか確かめる

  • ユーザビリティテスト…作り上げたUIデザインが狙い通り使えるものかを試す

このように、デザインのフェーズに応じて、ユーザーへの質問や対話などによって必要な情報を得るために使われる手法です。

UXデザインや人間中心設計の上ではなくてはならないテクニックですね。

ところでインタビューの「準備」って、みなさんはどんなことをしていますか?例えば、通りすがりの人に声をかける方法だとしても、何を話すかはきっと事前に決まっていますよね。デザインワークのインタビューでも、事前の準備として、「何を問うのか」を考えることがとても大切です。
準備では、ある視点と仕掛けがあると、よりよい「問い」になるだけでなく、プロジェクトにもよい影響があります。

今回はその辺りについて、東芝UIデザインの仕事を背景に、個人的な経験も交えてご紹介したいと思います。



1章 BtoB領域でインタビューが必要なわけ

東芝のUIデザインでは、電力監視や鉄道運行といった社会インフラに関わるシステムで使われるインターフェースの開発が多いです。そうなると、使用シーンとして自分の生活での体験から想像できることは限られていて、私たちデザイナーは、その事業やシステムが稼働する現場について何も知らない状態からデザインワークをはじめます。
 
「知らない」ということは決してマイナスばかりではなく、新鮮な視点での気づき「どうして」「なぜ」を得られるメリットもあります。その新鮮な視点を大切に、現場の様子を自分の目で見て、ユーザーへ質問をし、当事者の言葉から知ることを一番大切にしています。

2章 インタビューの準備が大切な2つの理由

では改めて、何故準備が大切なのでしょうか。インタビューの目的から考えてみたいと思います。

1.プロジェクトとして知るべきことを整理するため

ユーザーに直接お会いできる機会ができたら、まず私たちは、デザイナーだけではなく、プロジェクトに関わる事業部門、研究部門、開発部門の専門家とともに「よい問い」をつくることに専念します。

「よい問い」の条件を、私は以下のように考えています。

  • デザインプロセスのフェーズ(現状把握/仮説検証/ユーザビリティテスト)に適切なこと

  • プロジェクトがよりよい方向へ進む為に必要な気づきや判断材料が得られること

  • 営業担当者・技術者・デザイナーそれぞれの視点の問いのバランスが最適であること。


私はこれらを軸に「よい問い」かどうかを判断しています。
 
3点目のバランスについては、デザインプロセスのフェーズによって比率が変わります。
フェーズに応じて、UXデザインやユニバーサルデザインの観点からの、ユーザーのふるまいに関する問いが多い時もありますし、お客様の事業目標や事業としての狙いといった点を深堀りするような問いが増えることもあります。
 
エンドユーザーにとって最適なUIやUXを考えるデザイナーの活動は重要ですが、そのUIデザイン、言い換えると基にある「サービス」は、事業として実現できて、現場に導入されなければユーザーに届けることができません。つまり、予算の条件を満たしたうえで、製品として技術的に開発できなければならないわけです。
私たちデザイナーはUXデザインやUIデザインのプロフェッショナルですが、一緒にプロジェクトを進める方達はビジネスや技術の専門家です。様々な視点のバランスをとって掛け合わせ、一緒に問いを組み立てることが大切だと考えています。


2.コミュニケーションを設計するため

私たちは日頃、何かを尋ねられたり、質問をされて、その意図がわからないと逆に質問で返してしまいますよね。また、その場の空気(人や環境)でなんとも答えにくい…という経験もよくありますね。
インタビューというと、相手に問いを投げかけるものと捉えがちですが、
実際には、相手が問いの主旨を理解でき、自分自身の考えを言葉やふるまいを以て答えられることで初めて成り立ちます。
その為には、質問の仕方や答えやすいインタビューの場づくりを丁寧に設計する必要があります。これはインタビューのためのコミュニケーション設計と言ってもいいかもしれません。
 
こうした2つのポイントを意識しながら臨むことで、限られた時間で情報を、効率的に聞き出すことができる有意義なインタビューにすることができます。


3章 準備ってなにをすればいいの?

では、準備とは何をするのか?について、具体例でご紹介します。
 
まずは、プロジェクトメンバーで集まり、UIデザイナーがファシリテーションしながら質問項目を洗い出す簡単なワークショップを行います。これは、「いいインタビューをして、いいものをつくろう!」というメンバーの気持ちを高めると同時に、プロジェクトに一体感をもたらし、インタビューを効率的で実りある機会にするための仕掛けでもあります。
 
ワークショップでは最初に、個人個人が「聞きたいこと」をポストイットに書いていきます。
書き出すコツとしては、単語や体言止めにせず
 「~は~なのだろうか?」
 「なぜ~なのか?」
 「そもそも~なのか?」
といった質問調にすると、その質問から始まるやりとりをリアルに想像することができ、関連した質問項目を思いついたり、その質問をさかのぼることで大元にある知りたい理由に気付け、プロジェクトの目的を整理するきっかけにもなります。
 
次に、書いたポストイットを壁に貼りだし、KJ法で、近い問いや話題に分類します。

ここまでくると、皆さんから知りたいことが沢山出てきて、1回のインタビューでは聞ききれない量に(笑)!
 
ですから、優先順位を付けて質問項目を精査する必要があります。話し合いで営業・開発・デザインの観点を交えて決めていってもよいですし、決めきれない時には丸シールを使った投票で、
絶対聞きたいこと
時間があったら聞きたいこと
個人的な興味や関心(アイスブレイクの話題としても有効です)
といった優先度別に分類・可視化してから話し合うケースもあります。
 
以上のようなやり方で、質問項目を整理していきながらアクションプランを組み立てます。


4章 インタビューはデザイン活動の原点

2章でも触れましたが、準備を通してユーザーに何を聞きたいのかを具体的に整理することは、当初の目的であるインタビューの質問を考えるためだけでなく、インタビューの目的やプロジェクト自体の目標をふりかえることができ、よりよいアクションへ繋げるきっかけにもなります。
 
それだけでなく、インタビューを通して現場の方の顔や働く様子、さらには価値観までを知っていくことで、この人達がよりよい仕事ができるサービスを届けたいという気持ちをより強く持つ様になりました。
東芝デザイン部は人のことを想うというアプローチをとても大切にしていますが、人を想うためには、まずはその人たちのことを沢山知ることが必要だと思います。
私は長らくUIデザインに携わってきましたが、インタビューで得た経験は自身の原点であり、いつでも大きなやりがいになっています。

業務としてUIデザインをする場合、様々な制約や条件に縛られて取捨選択を迫られることも少なくありません。UXデザイナー/UIデザイナーとして、ユーザーがうれしいものを最後まで作りきって届けるためにも、現場を知り、そこで働く方々の顔を思い浮かべながら情熱を持ち続けることが、とても大切だと感じています。


おわりに 現場の方々に話を聞くということ

インタビューイーは、勤務の合間にインタビューを受けてくださる現場の方です。24時間体制で稼働するプラントで監視員の方にお話を伺い、インタビューが終わってすぐに業務に戻る姿を見送ったこともありました。現場の方々に、デザイン活動に対するご理解とご協力を頂いていることへの感謝の気持ち忘れずに、得られる機会を最大限に活かせるように励むことが、私たち東芝のUIデザイナーの重要な役割だと感じています。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
みなさんの日々の活動のお役に立てれば嬉しいです。


\UIデザインチームでは複数名の中途採用を鋭意募集中です!/
あなたからのご応募を、一同心よりお待ちしております。

東芝UIデザインチーム採用ページ
東芝UIデザインチーム公式HP