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[全文無料・小さな詩]天人午睡

とことん
眠りにうつつを抜かすのだ
午後の白い光の中

安宿の
くたびれた寝台の上で
寝返りを打つきみは

悪夢未満の
寝心地の悪さが身に沁みて
脳の芯まで浸して

切りのない
寄せては返す自己否定の
波また波の珊瑚の浜を

いつか見た
砂漠の駱駝に重ね見て
奈落の底を仰ぎ見て

そうだ
まばゆい地獄へと昇ろう今こそ
微熱に包まれた背中には

かげろうの羽
光きらめかせ軽く風に乗って
重力のくびきを逃れて

おめでとう
おめでとう
ほんとにおめでとう
ほんとにほんとに
おめでとう

ついにうつつを
抜かし終えました
すべてを抜き切りました
なにもかも
抜き去りました

地獄を越えて天国に堕ちて
煉獄に遊び極楽の修行も終了

ふと目を覚ませば
もう夕暮れ時の朱(あか)い光が
窓の外に溢れて

輝く命の
ぬくもりのただここにある
それでいいのだと

ただそれだけで
いいのさと心の底から精一杯
ささやいてみたのです

そうして言葉が放たれると
全身から力がふうと抜けて世界は
優しく夕焼けに包まれました

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