見出し画像

子どもを伸ばす”ほめ方”って? 意欲を引き出すコミュニケーション #名著に学ぶ子育て[3]

子育てにおいて子どもを”ほめる”ことは大切。この考えに異論を唱える人は少ないと思います。

しかし、ほめるというのは単純なコミュニケーションではありません。子どもの様子をよく見て、何をどう評価するかを瞬時に判断し、適切なほめ言葉を選ぶ……これがなかなか難しい。子どもに掛ける言葉はつい「すごいね」「がんばったね」などワンパターンになりがちです。

このほめ方でいいんだろうかと模索する日々でしたが、具体的な解決策を示してくれる実践的な子育て本を見つけました。

画像1

島村華子さんの『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』です。

著者の島村さんはオックスフォード大学で児童発達学を修了した博士であり、モンテッソーリ教育やレッジョ・エミリア教育の専門家でもあります。

その島村さんが提唱するのは子どもの自主性を引き出すほめ方と叱り方。詳しくは本書を読んでいただくとして、このnoteでは理想的なほめ方のエッセンスを私なりの解釈でご紹介します。

ほめ方は3種類にわけられる

他者をほめるとき、その評価の仕方は大きく3つにわけられます。

①おざなりほめ
どういうところがよかったのか具体性に欠ける、中身のない表面的なほめ方をする
「すごいね!」「上手!」
②人中心ほめ
性格・能力・外見といった、表面上の特徴を中心にほめる
「優しいね」「頭がいいね」「かわいいね」
③プロセスほめ
努力・過程・試行錯誤した手順を中心にほめる
「がんばって最後までやりきったね」「失敗してもあきらめなかったね」「いろんな方法を試したね」
(pp..48〜49)

このうちもっとも理想的なほめ方が「プロセスほめ」。

結果であったり、もともと備わっている能力や外見ばかりをほめられていると、「ほめられるのが嬉しい」「ほめられるためにどうすればいいか」と考えるようになるのだそう。そうすると、外部からの評価でしか自分の価値を見い出せなくなったり、失敗を恐れてチャレンジすることを回避したりしてしまうと島村さんは考えます。

一方、プロセスにおける努力や工夫が評価されると、たとえ結果がよくなかったときも「次はこうすればもっとうまくいくかもしれない」と次のパフォーマンスへのモチベーションが上がります。これが子どもの自主性や意欲を育んでいくのです。

ほめ方のポイント①見たままを表現する

結果でなく過程をほめることの重要性は、子育てに限らずさまざまな場面で耳にします。しかし忙しい毎日の中で実践するのはちょっと難しそうですよね。

そこで島村さんはこんなヒントを載せてくれています。

「上手」「よくできました」と大人の評価を押し付けることを避け、見たまま(色・形・数など)を具体的に表現してみるのです。
(p.60)

子どもが描いた絵に「上手だね」とコメントするのは、大人の勝手な価値判断による評価にほかなりません。それよりも「大きな絵が描けたね」「たくさんの色を組み合わせたんだね」「〇〇を5つも描いたんだね」など、見たままのことを声掛けするのが効果的だそう。これなら今すぐ実践できそうですよね。

ほめ方のポイント②子どもに質問する

大切なのは子ども自身がどう感じたか、どう思ったかということであり、親がどう思うかはそれほど重要ではありません。
(p.61)

島村さんのこの言葉にドキリとしました。子どもが何を思って行動したのか、子ども自身が何に満足しているのか、それを無視したほめ言葉が子どものためになるはずがありません。

子どもに質問するときは、会話のキャッチボールがしやすいようにオープンクエスチョンにするといいそうです。さらに、最上級形容詞を用いると子どもが答えやすくなると言います。

例えば
✗「今日は楽しかった?」→会話が発展しない
△「今日はどんな日だった?」→漠然としていて答えづらい
○「今日、お友だちと一緒にいて、いちばん楽しいことは何だった?」

子どもがどんな気持ちなのか、子ども自身が何に注目しているのかがわかると、ほめポイントも明確化しそうです。

ほめ方のポイント③むやみにコメントしない

島村さんは、むやみに大人が子どもを評価して声掛けする必要はないと言います。

たしかに、自分ががんばったと思っていないことを他人から「がんばったね」と評価されても居心地の悪さを感じますよね。ときに相手への信頼を失うことさえあります。

本来子どもが求めているのは評価でなく、何かを達成したとき、新しいことを発見したとき、嬉しいことがあったときに、大好きな両親や先生とそれを共有することなのです。
(p.63)

つい「子どもはほめて伸ばさなきゃ!」と意気込んでしまいますが、むやみにほめる行為はかえってネガティブな結果を導く可能性もあるのです。

子どもの言動に本当に感心したとき、純粋に「すごい」「がんばった」と感じたとき、自然体になり、見えたままのことをほめるのが一番なのかもしれません。

ほめ方のポイント④子どもを一人の個人として尊重する

これまで紹介したほめ方のポイントの根底にあるのは、「子どもを尊重する」ことに尽きると思います。

ほめるにしても、叱るにしても、親が子どもをコントロールするための行為であってはなりません。

子どもの言動を親の勝手な価値観で判断していないか、子どもとの間に不当な上下関係を作り出していないか、子どもを親の思い通りに行動させようとしていないか……この意識をもっているだけで、日々のほめ言葉のチョイスがガラッと変わりそうです。

画像2

もちろんこれは、親が子どものいいなりになるとか、子どもに好き放題させるとか、そういうことではありません。社会を生きるためのルールや道しるべを示すことこそ子育ての重要事項です。

島村さんはそういう親のあり方を「子どもにとって自身をもったリーダーとして寄り添う」と表現されています。

上手な叱り方や子どもを伸ばす習慣を知りたいなら

本書はほめ方以外にも「自分でできる子に育つ叱り方」や「子どもとつながる聞く習慣」など子育てに役立つヒントが満載です。具体的なケーススタディも多く、今日から実践できる指南書になっています。解説が明瞭かつ簡潔で、さらっと読み切れるのも魅力ポイント。

全子育て家庭におすすめしたい一冊です。

画像3

島村華子 著『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?