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原書感想文④『Porto どうせ働くのなら』(Porto 어차피 일할 거라면)

”海外に暮らす”までは行かなくても、生活するように滞在してみる。
ということを2度経験したことがある。そして今もしたくてうずうずしている。

海外に暮らすように旅行すると、自分が日本にいる時に、意識もしなかったことに影響を受けていることを知ることが出来る。
ひとつ例を挙げると、「人の視線を気にしない行動を学べる」だ。
生きてくために、人の視線を気にしてられない時がある。また、異邦人という身分は時に行動を大胆にさせる。その時「人の視線を気にしない姿勢」を知らず知らず習得出来たりする。

またその経験を通して慣れ親しんだ土地を第三者目線で再度解釈することもできる。
旅行の時にカメラを必ず携帯し、写真を撮りながら街を歩く。そうするとマンホールだったり、交通標識、アパート等普通のもの、何気ないものに目が行くことが多い。帰国した後に、その余韻が残っており普段目にしていたもの、写真に撮るものでもないと思っていたものもまた違った目線で見える。観光しに来た人はこういう風景も新鮮に感じるのだろうかと思う。
だから、他の土地に滞在するように生活するということが好きだ。

https://brunch.co.kr/brunchbook/portoからキャプチャ

あらすじ
自分がしたいことをしたくて会社を設立したのに、幸せじゃない。The editorハ・ギョンハ、イヘミン、代表2人が会社全体を移動してみようと決心した。”見知らぬ都市で仕事するの面白そうじゃない?”そうしてソウルを離れた。ポルトガルの北、まだ有名ではないけれど話すことはたくさん溢れている都市、ポルトへ。

https://www.aladin.co.kr/shop/wproduct.aspx?ItemId=196555702
より(稚訳)

この本はデジタルノマドの実践例の一つとして3人の女性がポルトガル・ポルトで1ヶ月間事務所を移し、生活をしてみるというプロジェクトを一冊の本にまとめたものだ。

ポルトの位置。

ポルトの都市に関する生活風俗や、風景。近くの店の店主とのストーリー。そしてかなりの呑んべえなイ・ヘミンエディターの酒の情熱溢れるポルトワインについてほぼ全てのことを記述した(と言っても過言ではない)詳細なレポまで。美しい写真と共にポルートでの生活について想像することができる。

しかしこの本で強く印象に残った部分は、ポルトのことではなくポルトという都市を通して自分達の生活を省みる文章だった。いくつかの要素が挙げられるが、今回は「老人」に対しての文章を取り上げたいと思う。

ハ・ギョンハエディターはポルトで多くの老人を見たという。そのポルトで見た風景の中でいくつか興味深かったことを以下のように伝えてくれた。

ある日、おしゃれなバーに偶然足を踏み入れることになる。

「けれど、興味深いのは若者が多く集まる店はあるが、若者だけが集まる店はないということだ。屋上のテラスには8人程の団体客がいたが、その集まりの年齢層は様々だった。真っ白な髭のおじいさんもいたし、眉よりずっと上までバッサリ切った前髪の若い女性もいた。彼らは休みなく会話をしていた。とても自然に。この世界の会話が全てそうであるように。
その瞬間、私がソウルでよく行く飲み屋やカフェを思い浮かべてみた。私が熱狂した素敵な雰囲気や、おしゃれなインテリアの行きつけには白髪が生えている世代を押し退けるしっかりしたガードがある。」

(그런데 재밌는 건 젋은이들이 많이 모이는 거게는 있지만 젊은이들만 모이는 가게는 없다는 것이다
옥상테라스에는 8면쯤 되는 단체 손님이 있었는데 그 무리의 연령대는 다양했다.새하얀 수염의 할아버지도 있었고,눈썹 위로 껑충 올라간 앞머리의 젊은 여자도 있었다. 그들은 쉬지 않고 대화를 했다. 너무도 자연스럽게. 이 세상의 모든대화가 그렇듯이.
그 순간 내가 서울에서 주로 가는 술집과 카페를 떠올려 보았다. 내가 열광하는 멋진 분위기와 힙한 인테리어의 단골집엔 백발이 성성한 세대를 가로지르는 견고한 배리어가 있으니까.)

Porto 어차피 일할 거라면,p273 l1-20(抜粋)

そして、こんな風景も目にしたという。リベイラ広場ではレストランの前やドウロ川の川辺の随所に、歌を歌ったり楽器を演奏するアーティストがいるという。そこである可愛らしいおばあさんがダンスを踊り始めたという。周りがどう反応するだろうと思ったらある人が来てダンスを一緒に始めたという。この光景について彼女はこう振り返っている。

「私たちはワイングラスをあわせながら、この都市の老人に対する態度に対して話した。怖がることもなく、避けることもない姿。全く違う世代に生まれた人たちが本当の会話を交わすことができる姿。そこまで話したら涙脆い私は少し涙ぐんだ。
そしてまた93歳の祖母を思い出した。祖母の世界が狭いのは膝が痛いからではない。部屋の外の世界が、老人に対して適してないと考えているからだ。」

(우리는 와인잔을 부딪치며 이 도시가 노인을 대하는 태도에 대해 이야기했다. 두려워하지도 기피하지도 않은 모습. 전혀 다른 시대에 태어난 사람들과 진짜 대화를 나눌 수 있는 모습. 거기까지 얘기하다가 눈물이 헤픈 나는 조금 울먹였다.그러다 또다시 아흔셋인 우리 할매를 떠올린다. 할머니의 세계가 좁은 건 무릎이 아파서가 아니다. 방 밖의 세계가 노인에게 어울리지 않는다고 생각하기 때문이다.)

Porto 어차피 일할 거라면,p275 l8-20(抜粋)

海外に暮らすことは、今住んでいる場所と絡みついている人生の問題に一時的に解放された気分になる。見える風景は全て新鮮で、自分の生活している全ての時間に特別感がある。その特別感に酔ってしまいそうな時もあるが、その都市にはその都市なりに問題があり、しがらみがある。ただ、異邦人という立場はその都市に自分の人生に絡みついている問題がないというだけかもしれない。

そういう浮つきやすい状態の滞在だが、本の中の3人は観察眼を失わずに感じたことを素直に文章に起こして、私たちの前に差し出してくれた。

いつか私もどこかこんな風に期待を膨らませて新しい刺激を受けながらも、きちんと自分というフィルターに通して思考できる、そんな時間を過ごしたい。行ったこともない、見たこともないポルトの美しい風景の写真を見ながら、そんな想像をする時間を与えてくれた一冊だった。

本書の中で1番好きな写真

タイトル:Porto 어차피 일할 거라면 
出版日:2019/7/20   
作者:하경화,이혜민

※文中の写真は全てhttps://brunch.co.kr/brunchbook/portoからの写真です。(バーナーの写真以外)


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