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8.未来ファンタジー_ホロパース2121

#小説   #宇宙の功罪 全11話

<<< 1.統一された世界

<<< 7.星々と文字のれきし


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トゥガク
「そうこうしているうちに、地球に目をつけたのがゼータ星の闇『グアン』です。彼らは感情に乏しいので、なんの罪悪感もなく地球を自分たちのものにしようと考えました。太陽が作りだす地球の大いなるパワー得て、われわれ他の星を制圧しようとしたのです。そこで地球人を滅亡させたいと思ったのですが、コスモルールにある通り他の星に変化を加えてはいけません。そこで人間の心に宿る『闇』に目をつけました。そして自滅させる計画を立てたのです。グアンが隠れて利用したのは『お金』と『文字』です。本来、お金は価値を交換する手段として使われていましたが、グアンは人の欲望に闇のテレパシーを送り、人間の理性をきかなくしました。そうすると悪銭は悪銭を呼び、人間社会を支配するようになりました。悪銭が固まると腐敗した権力が生まれ、民の生きるルール、つまり政治と法を支配してしまうのです。そして彼らは声高らかに呪いの言葉を叫びました。『金は愛や命より重い』と。そして人々は生きる喜びや、地球から贈られている愛を忘れ、労働と搾取という運命に閉じ込められました。

そして朦朧とする意識の中でただ息をするだけの人類が、世界の都市部を中心にあっという間に増えていきました。本来お金で交換する「価値」を見定める前に、洗脳の苦しみを紛らわす快楽や競走に溺れていきました。もっと良い服を、もっと良い食事を、もっと良い家を、もっと良い教育を、更なる出世を、更なる金儲けを、更なる権力を、そしてコミュニティの噂話や愚痴、僻み、妬み、嫉み、オンライン上での憂さ晴らし。一瞬の快楽のみを貪るということに終わりはなく、さらにもっともっと強い刺激が欲しくなる。そしてグアンは雄弁なテレパシーを送るのです、『その考え方は正しい、君はまちがっていない』と。

そのようにしてお金と文字は感情と欲望をコントロールできない人類を、増殖させてしまった。それは紀元前5500年から、紀元後2022年までつづいていたのです。

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サトリ
「お金と文字は…そんなに悪いものなのですか?」

トゥガク
「お金も文字も、どちらも素晴らしい発明です。問われているのは『どのようにして使うか』という人の心です。

グアンは心の光を奪い、闇をもって自滅へ導いていた。その末期にきていた今から100年前、2021年は人々はバグを起こしていました。珠玉混合の情報が絶えず生活に雪崩込み、処理をする前に次の情報が入ってくる。多数の意見や、声の大きい人の意見が正しく見えてしまう。それが鬱病やメンヘラ、育児放棄、虐待、殺人、そして自殺という現象の原になっていることに私たちは気がつきました。人は自分の感情をも理解していない時があります。それはとても自然なことなのですが『人の気持ちを理解しよう、考えよう』と求められる時代になっていました。なぜならそれは、お金が儲かるからです。しかし現状は、自分のことを考える隙も時間もなく、方法も知らない。自分にとってなにが良いことで、なにが必要なことなのか。自分や子どもに愛を与えるより前に、お金が必要だということしか頭にない。グアンにより何千年もかけて無意識に刷り込まれ、それが「なぜ」かは分からなくなっていました。

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しかし、そうして生き延びてきた人類は、変化を拒み「なぜ?」とはもう自問しなくなっていました。それを問うことで、バカにされ、嘲笑され、嫌われたり無視される世の中になっていたからです。それでも「なぜ?」と問われると困るので、グアンは快楽を与えました。悪用されたのは戦後の野球、テレビの時代はお笑い、SNSの時代は心ないホスト。日本では一部が善悪の判断がつかない少女を言葉巧みに洗脳し、性産業や犯罪に走らせたケースがありました。しかし大人たちは明日の懐の心配ばかりするしかない。そうでなければ自分も家族も生きられないから。誰が悪とも言い難い状況に、スター連盟は言葉を失いました。『グアンの資本主義が人から愛を奪い、確実に自滅へ導いている。なんて酷で、不幸な世界なんだろう』と。

スター連盟は文字の功罪に苦しみました。人類を爆速的に進化させると同時に、格差と軋轢を生み大量殺人や精神の混濁を作ってしまった。心の核爆発です。憤怒、憎悪、私欲、偏見、信念、疑念、孤独のビッグバン。そして私たちは、地球に住むスター連盟の子どもたちと手をとり、その責任を果たすことにしました」

ユラ
「そんなこと学校で習いませんでした。僕たちの祖先は失敗もしたけど、素晴らしい歴史を作ってきたはずです」

トゥガク
「筆舌に尽くし難いほどの功績は、さまざまあります。お金を持っている人々が知恵とともにお金を分け、貧困に苦しむ人々をサポートする活動や、プラスチックゴミを回収して海をきれいにする活動なども盛んにしていました。

しかしそれをグアンと人の闇が凌駕してしまった。あなた方の年代の心は美しい、けれどまだ移ろいやすい。人間の深い闇を見せたり真実を知るタイミングは、私たち教育機関が管理しています。性善説と性悪説に悩み、苦しむ子どもは比較的知能の高い学生が多く、闇のスリリングさや雄弁さに陶酔してしまいやすいのです」。

サトリ
「トゥガクさまは、人類を性善説と性悪説、どちらで見ているのですか?」

>>>闇の輪郭、光の変容

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