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【救急疾患を知ろう】 急性アルコール中毒

救急疾患を知ろうシリーズから、今回は「急性アルコール中毒」に迫ります!
そろそろ忘年会シーズン到来ですね。お酒が美味しい季節。(いつでも美味しいです!)
そんな楽しいイベントがあるシーズンにはやっぱり増えるんですよね、アルコールに挑戦しすぎてしまう人たちが。
今回はそんな挑戦者がなりうる急性アルコール中毒について説明します。
説明はなくても大体はわかりますよといった方もいらっしゃるとは思います。
でも、命を落とす人もいることから、原理をきちんと知り、理解することが大事なのではないでしょうか?
知っているとドヤ顔ができるものもあります!それではいきましょう!

急性アルコール中毒って実際どんなもの?

そもそも中毒ってなんでしょう?ここが一番重要なので長めに説明します。

「毒に中(あた)る」の意味であり、生体に対して毒性を持つ物質が許容量を超えて体内に取り込まれることにより、生体の正常な機能が阻害されることである。

Wikipedia

つまりはアルコールの解毒作用に間に合わなくなった状態を急性アルコール中毒と言います
具体的な症状はろれつが回らない、千鳥足、眠たくなる、顔が赤くなる、どきどきする、頭痛、吐き気などの症状があります。

ただここで、アルコールといっても悪さをする物質は2つあります。
これを説明するには、アルコール分解の流れを知る必要があるので、教えます!
アルコールは本来はエタノールという物質で、それが分解されることでアセトアルデヒドになります。そしてアセトアルデヒドが分解されると酢酸、最終的に水と二酸化炭素になります。

イメージはこんな感じです笑

上に示した症状のうち、「ろれつが回らない」や「千鳥足」、「眠たくなる」といった症状がアルコール、それ以外のものがアセトアルデヒド(以下、アルデヒド)によって引き起こされます。
つまり、悪者はエタノールとアルデヒドです
これからは、よっぱらって気分が良くなったらエタノールの作用、頭痛や吐き気などが出てきたらアルデヒドの症状だな!と思ってください!(口に出して言うと友達が減るかもしれませんが、責任は取れません笑)

人の体にはアルコールを分解するものと、アルデヒドを分解するものが備わっていますが、アルデヒドを分解するものは2つのタイプがあります。(脱水素酵素といいます)

  • アルコール脱水素酵素:胃と肝臓にあるが、胃にある方は男性の方が豊富

  • アルデヒド脱水素酵素の1型:アルデヒドの分解が緩やか

  • アルデヒド脱水素酵素の2型:アルデヒドの分解が早い

残念ながら日本人の半分以上は2型を持っておらず、1型のみなのです。
お酒を飲むとすぐ気分が悪なる人がいるのはこの影響です。
お酒をよく飲む(依存症も含める)人は肝臓が分解に慣れており、飲まない人より肝臓での分解が早いです。
なので、どれくらい飲んだらまずいのか、中毒になるのか?といった問いには一概にはいえません。
また、体のアルコールは尿と吐く息(呼気)にも排出しますが、胃や肝臓に比べてごく少量です。なので水を飲んだら酔いが冷めやすいと言うのは全くの間違いではないですがほぼ無意味です


どういった危険があるの?

見出しの部分で「命を落とす人もいる」といったように、アルコールによる人的被害は程度によらず多いです。

アルコールによる直接的な影響は、先ほどのエタノールの作用によるものです。
ろれつが回らない、眠たくなるといった作用があるといいましたが、医学的には「中枢神経作用」といって脳に影響を与えます。
なにそれ?って感じでしょうが、睡眠薬を飲んでいる状態と近いです。
眠たくなる・寝るだけなら良いですが、中毒レベルまで飲酒すると脳への影響が大きくなり、呼吸が極端に少なくなったり呼吸停止に至ったりすることがあります
ただ、呼吸停止するほど飲むことはかなり難しいと思います。

最も危険でよく起こるのは、アルデヒドの作用と組み合わさった状態です。
アルデヒドの機序は明確に記載されたものはありませんが、そもそも毒性のあるもので蓄積するほど全身の症状が出ます。
呼吸が少なくなるに加えて、アルデヒドの嘔吐の作用が加わると窒息します。
アルコール中毒の主な死亡原因はこの睡眠作用に伴う呼吸抑制+吐物による窒息です

また間接的ですが、飲酒後の転倒、事故なども危険です。
エタノール作用でフラフラとなり階段から落ちて頭を打つ、眠たくて寝たらそこが道路で車に轢かれるなど、ニュースなどで聞く話ではないでしょうか?
実際にこのような救急搬送ケースはよくあることです。人によったら頭部外傷などにより障害が残ってしまう方もいます。
お酒を飲みすぎて障害が残ってしまう、命を落とすなんてどうですか?後悔が大きいと思います。


治療や対応について

救急搬送された場合、治療は対症療法といって症状に合わせた治療をします。
入ってしまったアルコールはどうしようもないので、急性アルコール中毒の人には脱水が多いことから点滴による水分補給がメインとなります
それ以外はもうすることがなく、歩けるくらい酔いが冷めたら帰ります。多分帰る時は非常に気まずい空気感に…笑

とはいえ、多くの場合が搬送はなく一緒に飲んでいる人が看病したり、家に返したりすると思います。
その時に気をつけるのが、先ほど言った窒息を起きないようにすることが大事です。
上記の窒息・死亡のケースの多くが、酔っ払っているだけっしょと思って寝かしてたら、吐いて呼吸していなかったというものです。恐ろしいですね。
なので、対応として「回復体位」が理想です。詳しくは「熱性痙攣③」の絵を確認してください!

また、嘔吐したら吐き切るまで一緒に過ごしてあげましょう。


まとめ

長くなりましたが、以上が急性アルコール中毒の説明です。
まとめると、アルコールによる影響はエタノールの作用とその分解後のアルデヒドの作用があり、エタノールは脳への作用、アルデヒドは気分が悪くなる作用があり、これらが中毒により過剰になりかつ組み合わさることで死亡の危険がある、対応は窒息を防ぐための回復体位や吐物を吐き切るまで見守ることです。

では、結局救急車を呼ぶべきかと言う点においては「呼ばなくて良い」が答えとなります。
というのも、病院に来ても点滴がなされるくらいで窒息のリスクは変わらないからです。
窒息が起きた時に迅速な対応ができるという点ではメリットはありますが、そもそもアルコール中毒患者が運ばれるときは夜間で人員が手薄で対応が遅れる可能性もあります。
なので、原則としては予防(飲みすぎない)、飲んでしまったのなら近くの人が責任を持って看病する、これが私の考えです。

以上です!お疲れ様でした!

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