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「うちの子は字が書けない」を読んで

千葉リョウコ先生のコミックエッセイ「うちの子は字が書けない 発達性読み書き障害の息子がいます」のKindle版を読了しました。

内容紹介
小学2年生になってもなかなか字が書けるようにならなかった息子・フユ。 ノート1ページの漢字練習に1時間かかる、板書が追いつかない、テストの点がとれない。まわりからはただ“勉強ができない子”と見えてしまっていた。 たまたま参加した講演会をきっかけに知った「発達性読み書き障害」。 専門機関に相談し、フユの苦手の正体がやっとわかった。 母子二人三脚で、また賑やかな家族のサポートを受け、フユはトレーニングに励む。 学校での“特別扱い”、受験・進級、職業選択……さまざまな難局に、フユと家族は──? 漫画家・千葉リョウコが「発達性読み書き障害(ディスレクシア)」を持つ息子との二人三脚の日々を描くコミックエッセイ。

じつはこの本は、ひょんなことからSNSで交流させていただくようになった、漫画家の杉本亜未先生におすすめ頂いたんです。

日本で「発達性読み書き障害」の子供が学校生活を送ることがどれほど大変なのか、よく分かりました。印象に残った場面をひとつあげると、トレーニングに通うフユ君と千葉先生の姿を見て、フユ君の幼馴染の母親が「うちの子も同じかもしれない」と専門機関の検査を受けるところ。結果、その子も「発達性読み書き障害」と診断され、トレーニングに通うことになったのだそう。
これは、フユ君が身近にいることによって「そういう障害もあるんだな」「よくあることなんだ」「うちの子もそうかもしれない」と思い至れた好例だと思います。知識も無く、身近に同じような子供がいない場合、親は無駄に焦りますし、子供は理不尽なプレッシャーを受け続けるでしょう。
この幼馴染の少女だけでなく、この本を通して多くの親子が救われていると想像できます。作中にも出てくる言葉ですが、本当に「意義のある本」だと思います。

そして、オランダで暮らす私の目から見てショックだったのは、高校に入学したフユ君が「合理的配慮」(※)をかたくなに固辞する場面です。
※2016年4月から施行された法律で、国公立の学校や役所において障害を理由とする差別が禁止されるとともに「合理的配慮」の提供が義務となったというもの。
※読み書きの苦手な生徒には問題用紙の漢字にふりがなをつけたり、漢字で答えなさいという問題にひらがなで解答しても答えが合っていれば点数をつけるなどして、その子に合ったサポートをおこなうこと(本文126~127ページより抜粋)

私も日本で生まれ育ったので、フユ君がもらした「僕だけ特別扱いしてもらうってことでしょ?」という言葉の奥に、更にその奥に、どのような思いが幾重にも綾なしているのかよく分かります。

けれど。

ディスレクシアの子供たちも、必要なサポートを堂々と受けているオランダに住んでいると、どうしてもそこに想いがいってしまうのです。
娘のクラスにはディスレクシアと言われる生徒が2名います(こちらでは一口にディスレクシアと言ってしまっていますが、日本で診断を受けたらどのような診断名になるのかは分かりません)。通常のテストでは、教師による問題文の読み上げなどのサポートを受けたりしているそうです。先日行われた、中学進学の参考になる大事なテストでは、読み上げではなく大判のプリントを配布してもらっていたのだとか(娘談)。
(通常の生徒たちがA4のテスト用紙のところ、A3サイズの拡大版)

その様子を、クラスメイトは当たり前のように受け止めています。だってそれは、その2名にとって必要なサポートだから。必要なサポートを受けられないことのほうが、彼らにとって「不公平な状態」なのですから

だって、視力が悪い子はメガネをかけますよね。
聴力が低い子は、補聴器をつけるでしょう。
それと同じように、特別な配慮が必要な子は存在しているんです。

日本の学校でも、みんなと同じでなくても大丈夫なら、
「他人の目」を気にしなくていいのなら、
もっとスムーズに学生生活を送れる生徒も増えるはずなのに。


もしフユ君の他にも「合理的配慮」を受けることを迷っている子が、堂々と誇りをもってサポートを受けられるような世の中になってほしいと思います。

(蛇足ですが、結果としてフユ君の学校は合理的配慮を見送ります。その理由が、これまた何とも日本的というか何というか。。。)

==========お知らせ==========

電子書籍出版しました!
(Kindle版)「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間
(紙版)「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間

レギュラーで書いている主な執筆媒体のご紹介です。
ぜひ読んでみてください♪

「イエモネ」(NEW!)
https://iemone.jp/article/lifestyle/naoko_kurata_518/

「現代ビジネス」(不定期掲載)
http://gendai.ismedia.jp/list/author/naokokurata

「Glolea!」(プロフィール&執筆記事一覧)
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「未来住まい方会議」(執筆記事一覧)
http://yadokari.net/author/kurata/

「TABIZINE~人生に旅心を~」(執筆記事一覧)
http://tabizine.jp/author/kuratanaoko/

「ima(今) 海外リポーターが伝える世界の生活情報サイト」 (執筆記事一覧)
http://ima-earth.com/contents/profile.php?userid=kurata


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