蒼桐大紀

よろず物書き、作詞家。以前は図書館の中の人。noteでは文章主体でやれることを少しずつ…

蒼桐大紀

よろず物書き、作詞家。以前は図書館の中の人。noteでは文章主体でやれることを少しずつ試していく所存です。 Website:http://studio-shisiki.a.la9.jp/

マガジン

  • 小説入れ

    noteで公開した小説が入っています。

  • 単体記事

    整理用。単体記事をまとめたものです。

  • 『放課後のプレアデス』感想補足解説

    『放課後のプレアデス』の視聴当時(2020年5月~7月)の感想補足解説記事を格納するために作成したマガジンです。

最近の記事

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前夜 『放課後のプレアデス』との遭遇と視聴に至るまで

 このマガジンは、『放課後のプレアデス』感想補足解説というタイトルそのままの記事を格納するために作成しました。というのも、全12話の感想ツイートだけでも結構な分量があり、これに補足と解説を加えると一つの記事が長くなってしまうので、分冊形式を取ることにしたのです。  Twitterであたかもいま放送されているアニメの感想を書いているかのようにツイートしていたのは、リアルタイム視聴感を得るためでした。  2015年春に放映されたアニメを2020年春~初夏に観ながら、感想ツイート

    • 古賀コン4偏向的一言感想集

      はじめに  古賀コン4の作品を一通り読みました。その中でも個人的に印象に残った作品について、一言ずつ感想を書いてみました。「いや、それ一言じゃないだろ」という感想もあるかもしれませんが、それゆえの〝偏向的〟一言感想集です。  基本方針として、ポジティブな感想を書くことを心がけました。古賀コンのコンセプトは文化祭なので、いかに楽しめたかを述べることにしています。ファイトは別の機会に……ということでお願いします。  感想や評を書くのがあまり得意ではないので——というか苦手なので

      • ラブレターの裏側に(Original Edition)

        これはなに?  なにを書いても言い訳がましくなる。  古賀コン4に応募した『ラブレターの裏側に』は、冒頭部分約470字が抜けた状態で投稿していた。未練がましくもその旨をぼやいたところ、反応を頂いたので抜けた部分を補完したファイルも公開することにした次第。  いっそ直して出そうかと思ったけれど、そのままである。 本文  浅倉詩乃は「書き続けるために大切なことは常に忘れ続けることだ」と言った。過去にとらわれないこと。結果を引きずらないこと。前だけを向いて進むこと。光のあるほ

        • ラブレターの裏側に

          「青葉」  放課後。中庭で寝転がっていると、いつの間にか詩乃がかたわらに立っていた。縁にレースのついた真っ黒な日傘の作る陰が私にちょっとかかっている。 「はい、冷やした方が良いよ」  詩乃が差し出してきたのは、冷えたミネラルウォーターのペットボトルだった。その視線が私の左頬に注がれているのがわかる。 「もしかして。見てた?」  ペットボトルを受け取りつつ、そう問い掛けた。  さっきまでの光景が脳裏に浮かぶ。甲高い怒声を上げる女子、振り上げられる手と頬を張られて体勢を崩した自分

        • 固定された記事

        前夜 『放課後のプレアデス』との遭遇と視聴に至るまで

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        • 小説入れ
          5本
        • 単体記事
          4本
        • 『放課後のプレアデス』感想補足解説
          13本

        記事

          ノンマスカブル・コーリング

           和泉香菜に日曜日はあって無いようなものだった。勤め人ではないので定休日が存在しないこともあるけれど、「この日はお休み」と決めて休もうとする日に限ってなんらかの連絡が入る。連絡に対応すると頭が休日モードから切り替わってなにかしら仕事をしてしまい、その日は休日にならない。  ダメだ、これではダメだ。  あるとき香菜は誰に言うとでもなくそう思い。完璧な日曜日を作ってみることにした。  完璧な日曜日。  人脈でもって生き抜いているような人生なので、当然根回しは済ませた上で、個人的な

          ノンマスカブル・コーリング

          BFC5備忘録

           顧みる/省みるのが下手くそだと思う。私はどちらかと言えばあれこれ考えすぎる質で、考えすぎるゆえに決断を鈍らせてしまったり詮無いことで懊悩してしまったりすることが多い。特に過去についてのこと、後悔が多い。そのくせ過去に対する反省や内省を文章化するのが下手くそで——苦手と言うよりは下手で——そのことを自覚して以来は日記やこうした備忘録をなかなか書くことができないでいる。  とはいえ、下手だの苦手だのと言って避けているといつになっても改善されないし、なによりいまBFC5(ブンゲイ

          言い訳ノートあるいは『面影は消えない』の感想について

           終わった作品(落選作)についてあれこれ書くのもいかがなものか、と思ったのですが、未来の自分のために少しまとめておくことにしました。  サクラクロニクルさんから詳細な感想を頂きました。ありがとうございます。  返信がX(Twitter)ではもはや追いつかないので、noteに自分の復習も含めて記事を書くことにしました。  ほぼ私信なのですが、『面影は消えない』の核心に触れるため、興味を持たれた奇特な方はお読みください。  サクラクロニクルさんがご自身のイグBFC4の作品と

          言い訳ノートあるいは『面影は消えない』の感想について

          二人の落選展

           インターホンが鳴った瞬間、楊春水は脳裏にひらめくものがあった。予感。読みさしの本に栞を挟み込み、寄りかかっていたベッドの上に放る。体を起こすついでにテーブルからスマートフォンを取り上げ、スウェットパーカーのポケットに突っ込んだ。  流し見た時刻は、二十時十九分。通知はない。  一瞬だけ考えてヘアゴムを手首から外し、髪を簡単に左右でまとめながら部屋を三歩でまたいで、キッチン手前の壁面にあるインターホンの受話器を取った。 「ハイ」  日本に留学して二年と少し、まだちょっとしたと

          二人の落選展

          面影は消えない

          「昔、すごく良い文章を書く人がいたんです」  春水朔夜のことを話すとき、私はいつもこう始める。上手いではなく良い。すなわち私の主観に寄った見解を口にする。客観的な評価から外したところに置いているのを自覚しながら、過去形にした彼女へと思いを馳せる。  初めて顔を合わせたのは、大学二年のときにやったコンパニオンガールのバイトだった。まだ暑い九月のなかば、私達は揃ってチャイナドレスを身にまとい、東京ビッグサイトの西ホールで愛嬌を振りまいていた。もっとも、愛嬌があったのは春水だけ

          面影は消えない

          新しい椅子を購入した

          新しい椅子を購入した。 ニトリのゲーミングチェアである。 座業の人間は——あるいは一日の内で座っている時間が長い生活をしている人間は——良い椅子を買え、とはしばしば聞く言葉であるが、いざ買おうとしてみると良い椅子がなんなのかわからない。 (ちなみに〝買おう〟と決意したのは、それまで使っていた椅子が長年の酷使に耐えかねて座面が前方に傾いてしまったからである。お疲れ様) 定番はいまだにアーロンチェアのようだが、私からすると目を剥くほど高い。果たして投資の価値があるのだろうか、望

          新しい椅子を購入した

          どこまで言葉を〝ひらく〟べきか

           どこまで言葉を〝ひらく〟べきか。  昨年からずっとそんなことを考えています。  どの言葉を閉じどの言葉を開くか。あるいはどこまで開くか。ずっとそんなことを考えながら文章を書いています。  秀丸(PC)で、縦式(iPhone)で、ブラウザで、アプリで……何かしら文章を書くたびに頭のかたすみで考えています。  ここで言う「閉じ開き』とは、その言葉を漢字で表記するかひらがなで表記するかのことです。  発端は音響効果のお仕事をされている年上の知人が放送業界での業務経験を踏

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          どこまで言葉を〝ひらく〟べきか

          The Debutです

           タイトルは振りです。  えーっと、Twitterアカウントをフォローしている方ならご存じかもしれませんが今年のはじめ頃は出力系がバグっていました。  すなわち、2022年1月1日から7日頃までツイートが微妙に躁気味にだったりツイートの削除が多かったりしたのには、本体が壊れ気味だったからです。  年始がいつになく忙しかったためでもありますが、ガチで体の調子が悪かったのが最大の原因で、体(身体)がやられると頭(精神)にもダメージが来る状態のまさに典型例でありました。  時

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          The Debutです

          あとがきにかえて

           第12話の記事を書いたら、やはりそれだけで尺が一杯になってしまいましたので、連載の締めくくりとして、あとがき記事を作ることにしました。 ホームプラネタリウム 今回のヘッダー画像は、私が何故か持っていたピンホール式投影機です。  第9話の記事で取り上げてみようと考えていたのですが、尺の都合から没にしたネタです。  ホームプラネタリウムは、大きくピンホール式と光学式の2種類に分けられます。  ピンホール式投影機は、すばるが作った手作りの投影機と同じ仕組みで、小さな穴が開

          あとがきにかえて

          いつかまた放課後で『放課後のプレアデス』感想補足解説パート11(第12話)

           前回(第11話)はこちら。  2020年8月末から始めたこの連載ですが、年をまたいで気付けば5ヶ月が経っていました。  当初はパート1のように、当時の感想から適宜引用して補足解説を書き加える程度に留めるはずだったのですが、パート3(第4話)から内容について一歩踏み込んで書くいまの形式になりました。 第12話 渚にて『放課後のプレアデス』最終12話と総括。いやもう圧倒されて一瞬言葉を失いました。最終2話は間を置いていられない展開で、もう完璧な終わりなのにラストシーンの先に

          いつかまた放課後で『放課後のプレアデス』感想補足解説パート11(第12話)

          彼方への扉『放課後のプレアデス』感想補足解説パート10(第11話)

           前回(第10話)はこちら。  最初にdアニメストアで『放課後のプレアデス』を見たときは、第8話が一番が好きなエピソードでした。  いまではこの第11話が一番好きです。  と言うよりも、当時は自覚がなかっただけで最初から第11話が一番好きだったのかもしれません。 第11話 最後の光と彼の名前『放課後のプレアデス』11話。ななこが動くきっかけを作って皆を引っ張ったり、それに呼応した皆が動きはじめることで、すばるも一人でプラネタリウムをやりきる。この流れを別途に見せながら、す

          彼方への扉『放課後のプレアデス』感想補足解説パート10(第11話)

          二人の夜間飛行『放課後のプレアデス』感想補足解説パート9(第10話)

           前回(第9話)はこちら。  これまで話数表記を第n夜としていましたが、過去の記事を含めてBlu-rayのメニューやアートワークスと同じ第n話に表記を改めました。  今回(第10話)の記事は、未視聴の方には伏せておくべき内容を多く含むため、TVアニメ『放課後のプレアデス』を見ていない方は全話ご視聴の上でこの記事をお読みください。  これ以前の記事でも盛大にネタバレをしているのですが、第10話のネタバレはより作品の深部に関わるためあらためて書きました。  TVアニメ『放課

          二人の夜間飛行『放課後のプレアデス』感想補足解説パート9(第10話)