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オレが! あたしが!! では、わたくしが・・ ~ 舞台 歌わせたい男たち ~

自分は割と知っている俳優さんだったり、劇作家さんの舞台を観ることが多いのですが、今回はキムラ緑子さん以外はパっと顔の浮かばない方ばかり。

ですが、他の舞台を観に行った際に頂いたチラシを見ていて、気になる舞台として資源ごみに出さずにとって置いていた舞台でした。


ちょうど助っ人バイトの帰社時間にバッチリで、電車賃が浮いてニマニマしつつ東京芸術劇場へ向かいました。

舞台上は保健室のセットとその上に屋上?のようなセットが乗っかっていました。

あらすじを予習していなかったのと、舞台タイトルだけを見て、「ヘソを曲げた歌手に歌を歌わせる」といったことをベタに想像しておりました。

当たり前ですが、そんなベタはありません(笑)


ここからはストーリーのネタバレも出ちゃうと思いますので、観賞予定の方は後日お読み頂けましたら幸いです。


舞台は、とある高校の卒業式を控えた保健室。

相島一之さん扮する校長先生は祝辞の練習に余念がありませんが、酷い花粉症のため、ちょっと何か話してはクシャミが出てしまい、思うように祝辞を話せません。

保健室のベッドでは卒業式で演奏をするために、前日は夜遅くまで、今朝は早朝からピアノの練習をしまくってフラッフラなキムラ緑子さん扮する音楽講師が寝ていました。

キムラさんは売れないシャンソン歌手から、ようやくカタギな音楽講師の職業をゲット出来たので何とかこの高校に定着したくてたまりません。しかし、ピアノが苦手なため式で上手く弾けるか不安で仕方ありません。

校歌と国歌、校長は特に国家を弾かせることに妙な執着を見せます。

校長がちょっと保健室を出たところへ入れ替わりにうらじぬのさん扮する養護の先生がやってきます。

キムラさんが赴任して日が浅い中、仲良くしている山中崇さん扮する社会科教師が「ゴチゴチの左翼」とうらじさんから聞かされます。

卒業式で国歌斉唱の際に、起立せず斉唱せずの過去があると・・・

この「起立しない、歌わない」ことは、当人の出世に影響し、さらに同僚教師や校長まで巻き込む「研修」が行われるなど「面倒事」が相当巻き起こるとのこと。

これらを回避するために山中さんに何とか歌わせたい「男たち」が奔走しますが、その最中に学校の校門では定年退職した山中さん寄りの元教師が「問題のあるビラ」を撒き始め・・・、警察が来て・・・

さて、卒業式はどんな形となって行くのか・・??


ここまで書いていると割と社会派でシビアな舞台と思われますが、実際はお茶目な講師のキムラさんを筆頭に、のらりくらりなうらじさん、頑ななようで揺らぎもある山中さん、自分は騒動に巻き込まれたくない大窪さん、「昔は意外と・・」だった相島さん達が、それぞれの立場を主張しつつ、卒業式本番までに巻き起こる騒動により、それぞれの立場や考え方にも思いを馳せて行く様にクスクス笑えたりします。


舞台の最後の方に自分はちょっとウルウルとしてしまい、何が正解とか間違いとか、そういった「決めつけ」は何も生まないのかもしれない、と思いました。

信念や立場、境遇、未来。

誰かを強制することで、誰かが希望しない結果となる。

こちらの舞台ではそれが「国歌斉唱」を軸としていますが、日常の中でも「仕事」や「家庭」、「友達」や「同僚(先輩・後輩・上司・部下)」、「ご近所」など、大きなところでは「社会」でそれぞれの立場や思いが生じているものだと思います。

「自分の思い」を押し付け合うことで摩擦が生じますが、それも生き方であったりします。

そこで「誰か」が「自分の主張」以外の決断をする時に、ひょっとしたら調和なのか、平穏なのかが訪れることがあるのかもしれません。

その時、決断した「誰か」に思いを馳せることが出来たら、次の「誰か」には「自分」がなろうと思うのかもしれません。


何だか難しいことを書いてしまいました。

自己主張することは簡単ですが、相手がその主張を飲んでくれるとは限りません。

信念を曲げることは格好悪いことではない、相手を思いやった上でのことならば、「信念を曲げたことにはならないのかもしれない」。

そんな風に思う舞台でした。


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