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【読書】 文学としての官能。 ~ アルマジロの手 宇能鴻一郎 ~

一度読んでみたいと思いつつ、手に取るハードルが高いと思っていて中々購入に踏み切れませんでした。

ですがフランス書院文庫(急に)よりは相当ハードルが低い上に、文庫の裏のあらすじを読むにそこまで濃厚と思わなかったので、「傑作短編集」とありますし、1冊だけを握り締めレジに差し出しました。(勇気りんりん)

部屋に帰って帯に書かれていた文章を読んだら、けっこうなフェチシーンでした。

期待は高まります(笑)


宇能先生は当初はど真ん中純文学路線で芥川賞も取っておられます。

しかし、その十数年後にガラっと官能小説へ方向転換をしたそうです。

自分はてっきり団鬼六先生のような最初っから官能路線と思っていましたが、それは自分が無知なだけでした。(うっかり八兵衛)


こちらは七編からなる短編集です。

それぞれが、エロだったりフェチだったり性癖だったりが軸にあります。

海外でもホラーとエロは相性が良いと思われ、浮かれたヤングカップルがお墓で浮かれポンチな行為をしていたら墓石が倒れて来て下敷きになったり、墓地に住まう何某かに惨殺されたりしがちです。

表題にある「アルマジロの手」では、ある意味軽いノリを伴う出来事に端を発して、今でいうところの「曰く付き事故物件」な話に展開します。

「心中狸」では民話の要素を含んだ、人間のお姫様に焦がれた狸の悲哀。

「月と鮟鱇男」と「鰻池のナルシス」では食欲と性欲のがっぷり四つ。

「蓮根ボーイ」は戦後にあったであろう貧困による差別と、そこから来る主人公の男の子の本質は、下衆な人間ほど嗅ぎつけて好き放題に扱うといった出来事が悲しく描かれています。

他二編も気弱な男の自信の無さからの寝取らせ話、異国の少年にのめり込む男色といったバラエティに富んでいます。


書かれていることが助平だわさ!!と感じると思いますが、そこは芥川賞作家である宇能先生。

フランス書院文庫でしたら恐らく直球な単語だったり、独特な擬音語でゴマ油直飲み気分になると思われますが、本作の宇能先生はその時代の情景や空気がふわっと感じられて、妙に美味しそうな食べ物の描写など「しつこく」ありません。

せっかくなので試し読みしたフランス書院文庫は10行だけ読みましたが、それだけでも食後にこってり中華気分です、ゲフ~。
(せっかくの使い方)


本書は思っていたよりもマイルドな読後感でした。

セクシー映像会社に短期間ですが事務職で勤務していたことがありますので、かなりハードルが低いことは、♥ヒ♥ミ♥ツ♥

ついでに怪しい広告代理店でこれまた短期間ですが、ヘンな文章を書かされていたことも、♥ヒ♥ミ♥ツ♥


お取引先の食べ物屋さんに並んでいたとき、店員さんに「何を読んでいるんですか?」と聞かれて恥じらいながら表紙を見せたら「見聞を広めることは大事ですね!」とニヤっとされました、「知っている方」でした(笑)

気になられましたら、帯の付いている文庫で帯を読んでみて下さい。

まずはそこから、レツゴー! 


さぁて、他の短編集を買いに行こうと思います(笑)


(あんたも好きねぇ by 心の奥さん)



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