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大人

子供のころは、いろいろなことを思い違いしていた。

東名高速道路はスケスケの透明なんだろうと信じていたし、

CDはクレープみたいに焼いて作るんだと信じていた。

「CDに焼く」という言葉を何度も聞いていたせいかもしれない。
僕が幼稚園から小学校へ上がるころ、宇多田ヒカルさんが華々しいデビューをした。
母親から、「宇多田ヒカルは自分で曲を作っているんだよ。」という話を聞いて、僕は彼女が自宅で1枚1枚せっせとCDを焼いているところを想像した。

だから、音楽というのはもともと液体なんだろうと思った。
ホットケーキみたいに粉から作るのか何なのか、わからなかったけれど。


地球=日本だと思っていた。

そうではないと知った時の衝撃は今も覚えている。
社会科の授業で、白地図の勉強をした時だった。

先生が大きな白地図を黒板に貼り、この中で日本はどこー?と聞いた。
出た、と思った。先生のお得意の引っ掛け問題だ。
正解は、これ全部が日本。
でもそうではないみたいに言って僕らを試しているんだ、と思った。

ひとりの女の子が(確か女の子だったと思う)前へ出て、日本列島を指さした。
僕はそれを見て内心笑ってしまった。そんなわけないだろう、なんでわざわざそんな小さな島を指すんだよ、せっかく間違えるなら左側の大きい場所でも指したらいいのに、なんて思っていたら、周りの友達はみんな何も言わない。どうしたんだみんな、なぜ違うといわない??そう思った。
誰かが間違えればすぐに、えー?とか、違う、、、とかささやきが聞こえだすのに今日はどうしたんだ?

はい、正解ですね。

先生がそう言った。それに対して誰も何も言わなかった。まさか、そんな。日本て、これだけなの??

淡々と進んでいく授業からすっかり置いていかれて、僕はいつまでも目の前の白地図の小さな島と、その周辺の大きな島を見比べた。ここ、自分いま、ここ??
周りの子にはきけなかった。自分だけ置いていかれていて、その時は彼らと自分が対等に感じられなかったのかもしれない。

家に帰って母親に聞いた。日本てこれ??

そうだよ。

なんでもなさそうに答える母を見て、本当らしいと悟った。
こんなに小さいのに国?国ってもっと大きくなくていいの?と思った。

そんなことを考えていた頃から早25年ほど経って、今年の誕生日が来たら30歳になるはずだけど、誕生日が来てもしばらくは、気づかないふりをしようと思う。

こんな自分が30歳??30歳ってもっと大人なんじゃないの??と思うから。

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