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【感想】 ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実

人々の「消費」に対する意識は大きく変わりつつある。

昨今、「エシカル消費」という言葉を見かける機会が増えてきた。エシカル(Ethical)とは、「倫理的な」「道徳的な」という意味で、商品の生産から消費までが「倫理・道徳的に行われること」。つまり、商品のサプライチェーン(生産・製造から販売までの流通のこと)に関わる人や自然環境などに負荷をかけることなく生産・製造された製品を意味した内容だ。

環境に優しいという意味で使われる「エコ」や、公正な貿易という意味の「フェアトレード」。農薬を使用せず身体に優しいという意味で知られる「オーガニック」も、このエシカルに含まれている。

中でも、身体の中に取り入れて直接的に影響のある「食」に対する消費意識が先行して高まりを見せている。

そんな中、Netflixで19年10月より配信されている「ゲームチェンジャー:スポーツ栄養学の真実」を観た。

「菜食」を推奨するドキュメンタリー映画

この映画は写真家であり、ドキュメンタリー映画監督のルイ・シホヨスによって撮られた映画だ。ルイ・シホヨスは、過去に日本の追い込みイルカ漁を批判した映画「ザ・コーヴ」の監督を務めていた。(2010年の第82回アカデミー賞で、長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した作品)

今回の「ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実」には、このルイ・シホヨスに加え、豪華なプロデューサー陣で作られている。

・ジェームズ・キャメロン(『アバター』、『タイタニック』など)
・アーノルド・シュワルツェネッガー
・ジャッキー・チェン
・ルイス・ハミルトン(現在最高峰と呼ばれるF1ドライバー)
・ノバク・ジョコビッチ(男子テニス世界ランキング2位*2020年1月時点)
・クリス・ポール(NBAプレイヤー)

彼らプロデューサーとして関わっていて、スポーツ選手が植物性食品のみを摂ることは正しいのかを検証するドキュメンタリーとなっている。「菜食」とはいわゆるヴィーガンの事を指しているが、最近少しずつ日本でもこのヴィーガンという言葉を耳にするようになってきた。ただ、分からない人のために、改めてベジタリアンとヴィーガンがどう違うのかを端的に説明しておく。

●ベジタリアン:様々なタイプの菜食主義者の総称
・ヴィーガン(植物性食品のみを食べる)
・ラクト・ベジタリアン(植物性食品と乳製品は食べる)
・ラクト・オボ・ベジタリアン(植物性食品と乳製品、卵は食べる)
・ペスコ・ベジタリアン(植物性食品と魚、卵、乳製品は食べる)

ベジタリアンという菜食主義群があり、その中で細分化され、植物性食品しか食べないのがヴィーガンだ。

まず、言わせてもらうと私はベジタリアンでもヴィーガンでもないけれど、このドキュメンタリー映画を観て「肉を食べる機会を少し減らしてもいいかな」と思うようになった。そういう意識の変化があっただけでも、非常に良い映画だったように思う。

本編では、アスリートが菜食によってどれくらいのパフォーマンスが上がるのかを、詳しく検証して考察しているのでこういった栄養学を知りたい方はぜひ見てみて欲しい。

この画像は作中、アスリートが1日菜食だった場合、1日は肉食だった場合の血液を、遠心分離機にかけた比べた血液の図。菜食の方が濁りがない。

1回菜食しただけで、こういう状態になるのは驚いた。また、他にも菜食だった場合の利点などが様々な視点から解説されている。ちなみに、肉食だった場合のデメリットも凄く多く解説してくれる。(ポジショントーク的な意味もありそうだけど…)
※本編では、1回菜食にしただけで体質改善があるとは謳っていない。

ただ、肉が身体に悪いという話は、アメリカを中心に様々な活動家が提唱しているし、新しい常識として考え直す良い機会なのかもしれない。全てが真実かどうかは分からないけれど、こういった新しい常識と、実際に実践している、6人のプロデューサー(特にジョコビッチの食の意識の高さは日本でも有名)の実績を考えると、すでにある程度は科学的にも実証されていそうだ。

エシカル消費への変化について

映画は最後に、自然環境と食生活についての話もされている。発展途上国では今でも人々が食料不足に悩んでいる。一方で、発展国に供給する家畜を育てるために、森林破壊を行うことなどもテーマにあがっている。とくにアメリカの家畜だけで同国全人口の50倍の廃棄物を排出しているだとか。

他にも大量の資源を使うこと(ハンバーガー1つ作るために淡水2400リットルを使われている!)など、決してサステナブルな状況ではない。

また、肉の消費量が世界平均の3倍の米国では、動物主体の食生活を菜食に転換するだけで温室効果ガスの排出量を73%削減し、1人あたり100万リットルの水の節水につながるのだとか。

こういった理解を深めることが、私たち消費者の消費の在り方を考え直す良い機会になる気がしている。

冒頭で説明したエシカル消費への関心の高まりは、特に欧米の若い年齢層を中心に高まっている。

自分の健康のためだけでなく、環境や動物福祉のために菜食を志向する人が増えていて、英調査会社IGDが2018年に発表した調査結果によると、ヴィーガンの食生活を実践、または菜食を食生活に取り入れたい(肉食を減らしたい)と考える人は、18-24歳で最も多く7割に達しており、その理由として最も多いのが、環境や動物福祉のためとなっているようだ。
三井物産戦略研究所 広がるエシカル消費̶企業活動への影響と事業機会̶より

欧米のミレニアル世代の消費の在り方が、こういったエシカル消費へとシフトしている流れは、遅かれ早かれ必ず日本にも影響を及ぼす。

私も、ミレニアル世代であるし、こういった消費の変化は、考える機会を設けないといけないと思った。

まずはこういった大きな流れを知るためにも、非常に勉強になる良い映画だった。



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