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政治講座ⅴ1523「中華民国VS中華人民共和国の戦争は未決着状態」

今般、重要な内容の報道記事を発見した。一理ある内容でしかも今後の日本政治の在り方としても必読すべき内容である。そこで今回はその記事を紹介する。
なお、この記事を執筆中にヘンリー・キッシンジャー氏(100歳の逝去の報道があった。ご冥福をお祈りいたします。

     皇紀2683年11月30日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

はじめに

政治(歴史)講座ⅴ1496「兵法三十六計(走為上)の中華民国」|tsukasa_tamura (note.com)から再度抜粋掲載する。
中華民国(台湾)VS中華人民共和国の戦争

中国の歴史を少し前まで振り返る。
清王朝の第12代にして最後の皇帝愛新覚羅 溥儀(在位:1908年12月2日 - 1912年2月12日)は中国大陸では孫文などの辛亥革命(民主化運動)で発足して建国された中華民国から逃げ出して出身地の満州に日本国の庇護のもとに満州国の皇帝になるのである。
その当時、社会主義・共産主義の暴力革命が勃発する。財産の略奪・権利侵害は暴力革命で正当化したのが共産主義の本質である。それが疫病の如く心を蝕み社会秩序を崩壊へといざなったのである。ロシア革命で始まったこのような熱病が中国へと伝播するのは早かったソビエト連邦ができて、世界政府の野望はアジアまで魔の手を広げたのである。そして中国大陸には中華民国以外に中国共産党が台頭してくるのである。日本が第二次世界大戦の敗戦(1945年)により中国大陸から引き揚げた後に、中華民国と中国共産党の戦いが始まるのである。中国共産党は日本兵の兵器を摂取して、中華民国に優位に戦いを進めて、中華民国を台湾に追い詰めたのである。台湾の権利は日本が放棄したが台湾の帰属は国際法上定められていないのである。中華民国は台湾を連合国に代わって代理占有している位置づけである。1949年10月1日に中華人民共和国が北京で建国宣言をした。
中華民国は逃げた
のであるが、まだ、国家として存在している。「一つの中国」と言うのは、中国大陸の統治者であると中華民国も主張しているのである。それは、最終的に逃げることは負けを意味しないので、力を蓄えて形勢逆転の機会を狙うための計略である兵法三十六計説くのである。
つまり今の中華民国と中国共産党の勝敗はまだついていないのである。故に、武力侵略をも辞さないとの習近平の主張する戦争の根拠である。
蛇足:中華人民共和国は中国共産党の失政不動産バブル崩壊で経済危機を迎えている。そうすると中国共産党の統治の正統性が失われて中華民国が中国大陸に返り咲き支配することになる可能性が出てきたのである。
金融危機の報道規制を行うなどの情報隠蔽して中国共産党の失政を隠して中国共産党の統治の正統性を保とうとしているように見えるのである。
兵法三十六計の「逃げるが勝ち」の通りになりそうな趨勢である。中華民国、挺住!、加油!

「台湾有事」に日本は参戦すべしと言うのは“大きな勘違い” 「ロシアと同じ侵略行為」になる理由

田岡俊次 によるストーリー • 

「台湾有事」に日本は参戦すべしと言うのは“大きな勘違い” 「ロシアと同じ侵略行為」になる理由© AERA dot. 提供

台湾有事」の勃発に備え、日本政府は防衛費を約2倍に増大するとともに、アメリカ軍と自衛隊の連携の強化を図っている。日本が「台湾有事」で中国と戦うことを前提とする議論が大勢を占めるが、軍事評論家の田岡俊次氏は「憲法違反」という。著書『台湾有事 日本の選択』(朝日新書)から一部抜粋、再編集して、その理由を説明する。

*  *  *

■日本もアメリカも「一つの中国」

「台湾有事」が起きた際、日本はアメリカとともに戦うべきだと論じる人々は台湾が独立国家であると思っている様子だ。

 1972年9月29日、田中角栄総理が中国の周恩来国務院総理と会談し、「日中共同声明」を発して署名し、その中の(2)で「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」、(3)で「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」と定めた。

 その6年後の1978年8月12日、日本は園田直外務大臣が北京で中華人民共和国の黄華外交部長とともに「日中平和友好条約」に署名調印した。この条約は1972年の「日中共同声明」を再確認し「前記の共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきこと」と定めている。

「日中共同声明」が出される前年の1971年7月、リチャード・ニクソン・アメリカ大統領の安全保障問題担当補佐官、ヘンリー・キッシンジャー氏は秘密で訪中、周恩来首相と会談、ニクソン大統領訪中で合意した。

 当時アメリカは、1964年から始めたベトナム戦争で苦戦し、アメリカ国内では反戦論が高まっていた。だが、南ベトナム政権を見捨てて全面撤退をすれば、アメリカの面目は丸つぶれだから、北ベトナムを支援してきた中国に取り入って、しばらくは南ベトナムの政権を保ってもらって撤退しようとしていた。

 一方、中国はソ連の反対を無視して核開発をし1964年10月に核実験を行うなど独自路線を進み、ソ連がアメリカとの雪解けに向かおうとするのを嘲笑し、ソ連軍と中国軍はしばしば国境で衝突、ソ連軍はモンゴル駐屯の兵力を増強し、中国に予防戦争を仕掛ける構えで威嚇していた。1958年から62年にかけて、毛沢東主席が指導した「大躍進」政策は失敗して大飢饉にあえぎ、続く「文化大革命」でさらに疲弊した中国にとりアメリカがベトナムの泥沼から足を抜こうとして和解を求めてきたのはもっけの幸いで、アメリカとの経済関係が開かれ、国連安全保障理事会の常任理事国にまでなれると知れば、アメリカの申し出に飛びついたのは当然だ。

■アメリカも「異論を唱えない」

 ニクソン大統領は、1972年2月に訪中し、毛沢東主席と会談。「米中共同声明(上海コミュニケ)」を発表した。その中には、「中国は一つであり、台湾は中国の一部である」との中国の主張をアメリカが「認識(Acknowledge)」し「異論を唱えない」としている。アメリカの一部では後日、「これは承認(Recognize)とは異なる」との説も出たが、「認識」であっても「承認」であっても、「異論を唱えない」ことに変わりはないであろう。

 ニクソン大統領の訪中並びに毛沢東主席との会談で米中国交回復の大筋は決定したが、正式の国交正常化は、日本が「日中平和友好条約」を批准したより約2か月以上遅れの1979年1月1日。鄧小平副主席が訪米し、ジミー・カーター大統領との合意で実現し、アメリカは台湾の「中華民国」国交を断絶アメリカ軍は台湾から引き揚げた

 カーター政権は、ソ連に対抗上中国の抱き込みを図るとともに将来の中国の巨大市場確保のため、中国との友好関係拡大を考えたようだ。だが、日本やイギリスと違い議院内閣制でないアメリカでは、議会の多数派と大統領の見解が一致しないことがよくある。また党による議員拘束もなく予算と立法権は議会にあるから、ロビイスト(lobbyist)の影響は少なくない。「台湾を見捨てるのか」との議員の声は強く、議会は1979年4月、「台湾関係法(Taiwan Relations Act)」を可決した。

 この法律は「1979年以前の台湾との条約、協定を維持、台湾を外国の国家、政府と同等に扱う」など、アメリカ政府の対中関係を困難にする条項が多い。ただ、武器の輸出、供与については、「防御的な兵器を台湾に供給する」と防衛用だけに制限し、「アメリカは台湾人民を脅かすことに対抗し得る防衛力を維持する」にとどめ、その防衛力を行使して台湾を守ることを義務化することを避けている。同様に、日米安保条約でも、日本への攻撃があった場合は「自国の憲法上の規定、手続きに従って行動する」として、アメリカの判断によることができる。

 アメリカ政府は今日まで何度も「一つの中国」政策と台湾の「現状維持」を唱え、「台湾防衛の義務はない」と表明台湾独立支援に積極的ではないが、議会には反中国の強硬派で台湾独立を煽る議員もいるし、中国側はそれに対抗する姿勢を示すから、中国の巨大化につれ米中関係は険悪になりつつある。

 日本が条約で認めたように台湾が中国領であり、北京の「中華人民共和国」が中国の唯一の合法政府であるとすれば、台湾に残っている「中華民国」は蒋介石政府の残党の反政府集団ということになる。それが分離独立を求めて蜂起すれば内乱であり、政府軍がそれを鎮定するのは合法だ

日中平和友好条約」がある以上、仮にアメリカが台湾独立を目指して中国と戦争になった場合、日本がアメリカに協力して戦うことは「日中平和友好条約」違反で、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と定めている日本国憲法98条第2項にも反する

 また、「国連憲章」は国連加盟国に対して、第51条により武力攻撃が発生した場合の一時的自衛権行使か、第42条により国連安全保障理事会が必要と認めた場合にしか武力行使を許していない。

 台湾の「中華民国」は国連加盟国ではなく、日本は台湾を中国の一部であると認めているから、それを分離独立させようとして介入武力行使をするのは、国際法違反で、まさに今日のロシアがウクライナに対して行っているのと同様の侵略行為だ。

「反国家分裂法」から読み解く本質 台湾人の多くは「現状維持」を望む

田岡俊次 によるストーリー • 

「反国家分裂法」から読み解く本質 台湾人の多くは「現状維持」を望む© AERA dot. 提供

 2005年に採用された「反国家分裂法」2022年の習近平主席の発言により、中国が武力行使によって台湾を統一するという論調が強まっているが、はたして本当にその意思があるのか。また、台湾人の思いはどこにあるのか。軍事評論家・田岡俊次氏の著書『台湾有事 日本の選択』(朝日新書)から一部抜粋、再編集して、その本質を説明する。

*  *  *

■中国の「反国家分裂法」は「現状維持法」

 中国では、1958年から62年にかけ毛沢東主席が指導した「大躍進」政策の失敗で3000万人と言われる餓死者が出た。1966年から76年まで続いた「文化大革命」で大混乱を起こした中国は市場経済主義に転向し、50年たたぬ間に世界第2の経済大国になり、名目GDPは額面で18兆1000億4400万ドル、アメリカ(25兆4644億7500万ドル)の71%(2022年)、物価の違いを換算した購買力平価では既に1位となっている。

 この興隆は清朝中期の康熙、雍正、乾隆と3代続いた有能な皇帝の盛時を思わせるが、当時は「文字の獄」と言われた言論弾圧も起きて史上の汚点となった。

 現実主義者、鄧小平氏が政権を握った1978年以来、中国は市場経済、対外開放の道をひた走り、2004年3月に憲法を改正、第13条で私有財産権だけでなく、相続権の保護を定めた。これは共産主義の根幹を否定したものだ。

 アメリカの経済誌『フォーブス』の世界長者番付2023年版では10億ドル以上の資産家はアメリカの735人に次ぎ中国に562人(香港・マカオを含む)がいる。日本は39人だ。アメリカでは遺産1000万ドル以上を受けた人しか遺産税はかからず、中国は相続税がないから資本家の天国だ。

 世界最大の中国工商銀行はアメリカ本部をニューヨークのトランプタワーに置き、中国の対外純資産(貸し借りを合算)は香港を含み4.1兆ドル(574兆円)余で日本は3.6兆ドル(504兆円)余だ。一方アメリカは、最大の債務国で対外純債務が18兆ドル(2520兆円)を超える。第2の純債務国スペインの約9800億ドルの18.5倍に達する途方もない借金だ(いずれも2021年)。中国の証券取引所は上海と深センにあるが、上海だけでロンドン、東京をしのぐ取引額だ。

 こんな共産主義国があるわけがない。中国憲法には今も「社会主義」の原則が載っているが、これは古い看板が残ったような形で実際にはアメリカと一、二を争う巨大資本主義国だ。中国政府は「中国の制度は特色を持つ社会主義」と言うが、言い訳に聞こえる。日本が相当有力な防衛力を持ちながら「自衛隊は軍隊ではない」と苦しい弁解をしてきたのと似ている。日本、アメリカの反中国派は中国を「共産主義国」と言う。その方が恐ろしそうに聞こえるからだろうが、これは「日本は憲法9条があるから非武装国家だ」と言うに等しい。

 実権派は「改革開放政策」で中国をアメリカに並ぶ巨大な資本主義国にし、軍の近代化にも成功したが、もし台湾を名実共に中華人民共和国の一部にしようとしてアメリカと戦争になれば、この50年余営々として築いた経済超大国は重大な損害を被る結果になる。台湾の港への商船の入港を妨害する「兵糧攻め」で台湾の独立派を屈服させても、現在のように親密な相互依存関係が回復することは期待できないだろう。アメリカ軍との多数のミサイルの撃ち合いや航空攻撃で中国の工場や交通の要衝、インフラストラクチャーが破壊され、現在世界最大の貿易国である中国の対外関係の断絶が長期化する公算が大きいし、外国からの投資も減少する。実利にさとい中国国民が、現在順調な台湾との関係を破壊し、百害あって一利なしの戦争を歓迎支持するとは思えない。

 中国は2005年3月14日の全国人民代表大会で採用された「反国家分裂法」で台湾「統一のためには武力行使を辞せず」と宣言したように日本では言われた。だが、全文を読んでみると「一つの中国」と「平和統一」をうたい、第8条で「台湾独立を掲げる分裂勢力がいかなる名目で、いかなる形で台湾を中国から分裂させるという事実、または台湾の中国からの分裂を引き起こす可能性のある重大な事変、または平和統一の可能性が完全に失われた場合、国は非平和的手段やその他の必要な措置をとり国家主権と領土保全を守らなければならない」とする。第9条では「本法の規定に基づいて非平和的手段やその他の必要な措置をとり、実行を手配する時、国は台湾の一般的市民と台湾在住の外国人の生命と資産の安全およびその他の正当な権益を保護し、損失を減らすよう最大限の可能性を尽くす。同時に、国は法に基づいて台湾同胞の、中国の他地域における権利と利益を保護する」とも定めている。

 この法律の8条をじっくり読めば中国は現在の状況を「分裂」と認めておらず、台湾が独立を宣言したり、独立派が反対派を虐殺するとか、外国軍を引き込んで分裂を図る、などの「事変」が起きるようなことがない限り将来の平和統一を目指して協議していく姿勢を示している。「反国家分裂法」の本質は「現状維持法」と思われる。

 習近平主席は2022年10月の党大会で「我々は最大の誠意と最大の努力を尽くし平和的統一の未来を勝ち取るが、決して武力行使の放棄を約束せず、あらゆる必要な措置を取る選択肢を残す。その対象は外部勢力の干渉と、ごく少数の台独派による分裂活動に向けたものであり、広範な台湾同胞に向けたものでは決してない。祖国の完全統一は必ず実現しなければならず、必ず実現できる」と述べた。

「武力行使の放棄を約束しない」のは威嚇的に聞こえるが、考えてみればどの国の政府も国を分裂させようとする輩が蜂起すれば取り締まるのが当然で、武力を行使しないという「約束はしない」のは当たり前だ。もし日本でそのような事態が起きれば政府は自衛隊に「治安出動」を命じることができる(「自衛隊法」七十八条)。台湾でそのような事態が起きないためには統一でも独立でもない台湾の現状維持が妥当と考える。

■台湾住民の約9割が現状維持を望む

 台湾政府の大陸委員会が2022年10月に行った「大陸との関係はどうすべきか」の世論調査(20歳以上1096人が回答)では86..3%が独立でも統一でもない「現状維持」を望んでいる。「速やかに独立」は7.7%、「速やかに統一」は1.7%だ。「現状維持」を望む人に「しばし現状維持の後にどうすべきか」と問うと「現状維持の後に独立」が22%、「現状維持の後に統一」が7.0%「現状維持の後に決める」が28.9%、「永久に現状維持が28.4%だ。大陸との親密な相互依存で繁栄している台湾の人々は大陸との経済関係を切断したり、戦争になったりすることを望まないが、統一して言論の自由が阻害されるのもうれしくないから「今のままでよい」というのは理性的で自然だ。

【台湾有事・米中海軍比較】台湾海峡の戦いだけでは済まない米中戦争

田岡俊次 によるストーリー • 8 時間

【台湾有事・米中海軍比較】台湾海峡の戦いだけでは済まない米中戦争© AERA dot. 提供

 アメリカが「台湾の独立」を支援して米中2大国の戦争となった場合、アメリカは台湾を守り切れるのか。中国軍の台湾上陸部隊の一部を海上で阻止、上陸した中国兵を捕虜にしたとしても、それで戦争が終わるわけではない。軍事評論家・田岡俊次氏が両海軍の戦力を比較。著書『台湾有事 日本の選択』(朝日新書)から一部抜粋、再編集して、説明する。

*  *  *

■兵糧攻めに弱い台湾

 中国が台湾を支配するため上陸作戦をして制圧するのは容易ではない。中国海軍は3万t級揚陸艦(陸兵各1200名、ヘリ28機搭載)を3隻持ち、さらに2隻を建造中だ。中型、小型の揚陸艦57隻も使って海上輸送能力は計3万7000人程度と見られる。

 一方、台湾陸軍は9万4000人で海兵隊(海軍陸戦隊)が1万人。それに加えて徴兵で訓練を受けた予備役兵は150万人と公表しているが、実際に動員できるのは、その数分の1だろう。しかし、現役の陸兵10万人余だけでも、第一波として上陸して来る中国兵の約3倍だ。第一波が上陸地点を確保しないと、後続の部隊は上陸できないし、台湾西岸の大部分は遠浅の沼地、東岸は断崖が続いて上陸適地は数少なく、地対艦・艦対艦ミサイルを多く持つ防衛側に有利な地形だ。

 だが台湾には大きな弱点がある。食糧の自給率(カロリーベース)が31%で日本の37%よりさらに低く、エネルギー(石油、天然ガス、石炭、水力・原子力発電など)の輸入依存度は99.4%(2010年)に達し、兵糧攻めに弱いことだ。約2400万人の人口を養うには一日平均1.7万トンの食糧を積む貨物船1隻、15万トン級石油タンカー1隻の入港が必要だろう。

 もし戦争になれば、中国軍は台湾の港に入っている商船を弾道ミサイルや巡航ミサイル、航空機で攻撃し、食糧、石油などの輸入を阻止しようとするかもしれない。外洋を進む船を攻撃するより、港内に停泊して荷揚げをしている船を狙う方が容易だからだ。

 中国軍が台湾に上陸し地上戦をしたり、都市や工場を爆破したりすれば占領しても手に入るのは焼け野原で、住民が恨みを抱いて離散すれば復興と治安回復に苦労することになる。兵糧攻めで圧迫し分離独立派を降伏させれば、上陸作戦に比べ物的損害も死傷者も比較的少なくて済み、統治は比較的容易になるだろう。もし、中国が武力で統一しようとするなら、兵糧攻め戦略を使うのではないかと考える。

 台湾人が飢えるような状況になれば、アメリカ軍はミサイル防衛能力の高い駆逐艦で台湾の港を護り、中国本土のミサイル発射機をミサイルや航空機で攻撃逆に遠距離から中国を海上封鎖して海運を遮断することになるだろう。

■中国海軍よりも圧倒的に強力なアメリカ海軍

中国海軍の急速な増強」が語られているが、実際にはアメリカ海軍はなお圧倒的に強力だ。中国の空母「遼寧(4万6000t)」は旧ソ連がウクライナで建造中に工事中止となり、8年も放置されていたのを中国がスクラップとして購入し大連に曳航、苦心の末に2012年に完成させた。SU15戦闘機24機とヘリコプター15機を搭載可能と言われるが、発艦時に加速する「カタパルト」がないため、飛行甲板の後部から全力で滑走してやっと発艦するから多くの戦闘機が次々に発艦できない。重い増加燃料タンクや爆弾、ミサイルを多く付けると浮き上がらないから、戦闘能力は乏しい。ロシア海軍には姉妹艦1隻があるが、近年出港していない。

「遼寧」を基礎に改良、国産した2隻目の空母「山東(5万t)」は2019年に完成。戦闘機35機などを積めるとされるが、これもカタパルトがないから、実戦の能力は怪しい

 3隻目の空母「福建」は、2022年6月に進水、強力なリニアモーターを使う電磁式カタパルトを付け、7万1000tの大型だ。ただ電磁式カタパルトは大量の電力を要するためアメリカの最新鋭空母「ジェラルド・フォード」も技術的に苦心したから、それを中国が順調に実用化できるか否か注目されている。

 これが完成して中国海軍はなんとかアメリカ空母に匹敵する空母を持つことになるが、アメリカの10万t級空母11隻に対し1隻だ。空母は年間3~4か月は定期点検、修理にドックに入り、その後再訓練をして前線に出るから、3隻を持たないと常に空母1隻を出せない。

 中国が空母3隻を持ってもアメリカの空母に匹敵するのは「福建」だけだから、中国の富豪が乗る「ロールスロイス」に似たものになるかもしれない。

 一方、アメリカ海軍は10万t級の原子力空母11隻を保有、各艦が55~65機の艦載機を搭載している。11隻のうち少なくとも3隻が各60機として180機は作戦可能で、質量共に圧倒的に優位だ。

 海戦になれば主力艦はむしろ原子力潜水艦になり、空母など水上艦は潜水艦が発射する対艦ミサイルに撃破される危険が大きい。アメリカ海軍は、原子力潜水艦67隻(うち14隻は長距離核ミサイル搭載の「戦略潜水艦」、53隻は艦船攻撃用)を持つ。中国は艦船攻撃用の原潜は6隻しか持っていない。

 潜水艦が艦船を攻撃するには射程数十kmの魚雷だけではなく、射程数百kmの対艦ミサイルも使えるから、ドローンなどから敵艦の位置、針路の情報を得れば、潜水艦が空母を撃沈することもできる。原子力潜水艦に対しても音で敵を突きとめるのに潜水艦が有効だから、海戦の主力艦は常に潜航を続ける原子力潜水艦になるのではと考える。

 中国は最大の造船国だから新鋭の1万t級の巡洋艦7隻、駆逐艦42隻、フリゲート(小型の駆逐艦)41隻、計約90隻を持っている。それに対しアメリカ海軍は巡洋艦19隻、駆逐艦70隻、フリゲート41隻、計130隻で、その約半分が太平洋にいるから拮抗するが、空母と原子力潜水艦の戦力では大差がある。

 対潜水艦哨戒機はアメリカ海軍が126機海上自衛隊が77機保有するのに対し、中国は20機しかない。海上自衛隊は軽空母「いずも型」(2万t)2隻ヘリ空母「ひゅうが型」(1万4000t)2隻駆逐艦・フリゲート42隻潜水艦22隻を持ち練度は高いから、もし日本が参戦すればアメリカ海軍にとり最大の友軍になる。

■米中戦争はベトナム戦争どころではない

 現実を考えれば、もしアメリカ軍などが中国軍の台湾上陸部隊の一部を海上で阻止、上陸した中国兵を捕虜にしたとしても、それで戦争が終わるわけではない。中国軍は台湾に布陣したアメリカ軍をミサイル、航空機により攻撃し、特殊部隊を潜入させるだろう。台湾の保守派「国民党」は独立反対で大陸との関係を重視している。アメリカ軍が台湾から去れば統一に向かいかねず、アメリカ軍はすぐに引き揚げることはできないだろう。

 CSISの机上演習は「中国本土は攻撃しない」ことを前提としている。戦争をアメリカ軍勝利で終結させるには、たぶん首都北京や上海、広州などの要衝を攻撃、確保する必要があるだろうが、アメリカ軍が中国本土に侵攻して勝つ公算は低い。

 万一、北京が占領されても、内陸に政府を移す奥の手が中国にはある。日中戦争で日本軍は重慶に籠った蒋介石の中国軍を制圧できなかった。

●田岡俊次(たおか・しゅんじ)

1941年京都市生まれ。64年早稲田大学政経学部卒、朝日新聞社入社。68年から防衛庁担当。74年米国ジョージタウン大学戦略国際問題研究所主任研究員、同大学外交学部講師。82年朝日新聞編集委員。86年ストックホルム国際平和問題研究所客員研究員。99年筑波大学客員教授。2004年朝日ニュースターTVコメンテイター。著書『アメリカ海軍の全貌』(教育社)、『Superpowers at Sea(海の超大国)』(オックスフォード大学出版)、『戦略の条件』(悠飛社)、『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』(朝日新書)など多数。



参考文献・参考資料

「世界の主権を握るのはどの国か」白井聡・内田樹両氏が徹底議論 台湾有事に日本がなすべきこととは

台湾有事を起こすのは平和主義を捨てた日本だ 麻生氏「戦う覚悟」発言にみえる大きな勘違い 古賀茂明

台湾有事を演出する米国に乗せられる無邪気な岸田首相 日本が米中戦争を誘発させる危険も 古賀茂明

「台湾有事」に日本は参戦すべしと言うのは“大きな勘違い” 「ロシアと同じ侵略行為」になる理由 (msn.com)

「反国家分裂法」から読み解く本質 台湾人の多くは「現状維持」を望む (msn.com)

【台湾有事・米中海軍比較】台湾海峡の戦いだけでは済まない米中戦争 (msn.com)

政治(歴史)講座ⅴ1496「兵法三十六計(走為上)の中華民国」|tsukasa_tamura (note.com)

ヘンリー・キッシンジャー - Wikipedia

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