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政治(産業)講座ⅴ1091「日本は猛省すべき。商品企画力とスピードと価格設定で負けた」

「組織の寿命」について、以前解説した。日本の産業の衰退の原因・要因は社会的変化に対応できない経営者の判断によるところが多いと感じる。一時的な延命が最終的な会社破綻となる場合が多い。日本経済新聞社『会社の寿命』によると会社の寿命は30年と説く。創業期から全盛期になり、その時に入社した者(苦労知らず)が経営陣となった時が社会の変化に対応できずに破綻することになるようである。
液晶テレビの時代に思ったことがある。日本のテレビと韓国のサムソンなどを比較したときに価格攻勢に負けていると実感した。シャープのテレビの性能と品質は素晴らしいものがある。20年前の亀山モデルのアクオスは今も故障せずにきれいに映っている。しかしだ、シャープは台湾企業に買収されたことは残念である。
大鹿靖明著『東芝の悲劇』や日本経済新聞社編『シャープ崩壊』日本経済新聞出版を読むと経営陣の混乱ぶりが分かる。東芝に関してはTOBで再生を模索している。
今回は、日本の没落の原因に関する指摘の報道記事を紹介する。

     皇紀2683年5月18日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司


経産省が出てきた時点でアウト…日立の元技術者が「日本の半導体の凋落原因」として国会で陳述したこと

湯之上 隆 によるストーリー • 59 分前

※写真はイメージです© PRESIDENT Online

なぜ日本の半導体産業は凋落してしまったのか。半導体産業コンサルタントの湯之上隆さんは「『技術で勝って、ビジネスで負けた』と理解されることがあるが、それは間違っている。端的に技術で敗北したのだ」という――。(第1回)

※本稿は、湯之上隆『半導体有事』(文春新書)の一部を再編集したものです。

日本の半導体メモリは韓国企業に駆逐された

2021年6月1日午前9時、筆者は、衆議院の分館4階第18委員室の参考人席に着席していた。衆議院の「科学技術・イノベーション推進特別委員会」から、半導体の専門家として参考人招致を受け、「日本半導体産業の過去を振り返り、分析、反省し、その上で将来どうしたらいいか?」について、意見陳述を行うよう要請されたからだ。

筆者は20分強の意見陳述で、主として次の3点を論じた。

①日本のDRAM産業は、安く大量生産する韓国の破壊的技術に駆逐された

②日本半導体産業の政策については、経済産業省、産業革新機構、日本政策投資銀行が出てきた時点でアウトとなった

③日本は、競争力の高い製造装置や材料を、より強くする政策を掲げるべきである

以下では、これらの要点について説明する。この意見陳述は、衆議院が作成した動画をYouTubeにアップしている。

筆者は、意見陳述のタイトルを、『日本半導体産業をどうするべきか? ――希望は製造装置(と部品)&材料――』として、自己紹介から話を始めた(図表1)。

筆者は、日本がDRAMで約80%の世界シェアを独占していた頃の1987年に、日立製作所に入社して半導体技術者となった。その後、DRAMのシェアの低下とともに技術者人生を送ってしまい、日本がDRAMから撤退すると同時に、早期退職勧告を受けて、本当に辞めざるを得ない事態に至った。

しかし、転職先探しに時間がかかってしまい、辞表を出しに行ったときには早期退職制度が終わって1週間ほど経っていた頃で、部長から「撤回はなしだよ」と辞表をもぎ取られ、自己都合退職となってしまい、早期退職金3000万円はもらえず、退職金はたったの100万円になった。

1980年には世界シェアの80%を独占したが…

日立を辞めた後、紆余曲折の末、辿り着いたところは、経営学研究センターが新設された同志社大学だった。今でいうところの特任教授(当時は専任フェローと呼んだ)のポストに就き、約5年間の任期で、「なぜ、日本のDRAM産業が凋落したのか?」を研究した。その分析結果を要約すると、次のようになる。

日本が強かった1980年代半ば頃、そのDRAMはメインフレーム(汎用の大型コンピュータ)用に使われていた。その時、メインフレームメーカーは、「壊れないDRAM」として25年の長期保証を要求した。驚くことに、日本のDRAMメーカー各社は、本当に25年壊れない超高品質DRAMをつくってしまったのである。それで、世界を席巻し、1980年の中期には世界シェアの80%を独占した。これは、技術の勝利だった。

ところが、1990年代にコンピュータ業界にパラダイムシフトが起き、メインフレームの時代は終焉を迎え、パーソナル・コンピュータ(PC)の時代がやってきた。そのPCの出荷額の増大とともに、韓国のサムスンがDRAMのシェアで急成長してきた。

この時、サムスンは、「PC用に25年保証は必要ない。5年も持てばいい。それよりも、PC用DRAMは安価でなければならない。その上、PCの出荷台数が桁違いに多いから、そのDRAMは安価に大量生産しなければならない」という方針でDRAMを製造し、日本を抜き去ってシェア1位に躍り出た。

ビジネスだけでなく、技術面でも負けてしまった

この時、筆者は日立の半導体工場でDRAMの生産技術に関わっていたが、筆者も、日立も、日本の他のDRAMメーカーも、誰もがPCの出荷額が増大していること、サムスンのDRAMのシェアが急成長していることを知っていた。

しかし、そうであるにもかかわらず、相変わらず日本のDRAMメーカーは25年壊れない超高品質をつくり続けてしまっていた。その結果、サムスンの安く大量生産する破壊的技術に駆逐されたのである。

日本のDRAM敗戦について、「技術で勝って、ビジネスで負けた」という人がいるが、それは間違っている。日本は、韓国に、技術でもビジネスでも負けたのである。もっと言うと、技術で負けた要因が大きい。

それは、日本が撤退する直前の64メガDRAMのマスク枚数を見てみれば、一目瞭然である。おおむね微細加工の回数を表しているマスク枚数を比較すると、日立29枚、東芝28枚、NEC26枚だったのに対して、韓国勢は20枚くらい、米マイクロンに至っては約半分の15枚でPC用DRAMをつくってしまった。

当然マスク枚数が多いほど、工程数も多くなり、高額な微細加工装置の台数も多くなる。それ故、製造装置の原価がかさみ利益が出ない。その結果、日本のDRAMメーカー各社は大赤字を計上し、撤退に追い込まれていったのである。これは、明らかに、技術の敗北である。

意味なく「超高品質」を目指してしまった

日本の半導体産業は、1980年代に、メインフレーム用に超高品質DRAMを製造して世界シェアの80%を独占した。この時、DRAMメーカー各社の開発センターや工場に、極限技術を追求し、極限品質をつくる技術文化が定着した。1980年代には、それが正義だったため、日本は世界を制覇できたわけだ。

ところが、1990年代になると、コンピュータ業界が、メインフレームからPCへパラダイムシフトした。DRAMの競争力は、「超高品質」から「安価」であることに変わった。しかし、ここで日本は、DRAMのつくり方を変えることができなかった。結果として、過剰技術で過剰品質をつくることになり、大赤字を計上し、撤退するに至った(図表2)。

さらに、1社残った日立とNECの合弁会社のエルピーダは、この高品質病がもっとひどくなり(2005年頃には、マスク枚数は50枚を超えていた)、2012年にあっけなく倒産してしまった。

一方、サムスンはPC用に、適正品質のDRAMを安価に大量生産することに成功し、シェア1位となった。これは、ハーバード・ビジネススクール教授だったクリステンセンが言うところの「イノベーションのジレンマ」の典型例である。超高品質で世界一になった日本が、そこから自らを変えることができなかったため、それより信頼性が劣るサムスンのDRAMに駆逐されていったからだ。

なぜ日本の半導体産業は凋落したのか

問題は、日本がDRAMから撤退し、大規模なロジック半導体(SOC)へ舵を切っても、この高品質病は治らず、より悪化し、重篤化していったことにある(図表3)。DRAMを含む日本のすべての半導体のシェアは、1980年代半ばに約50%でピークアウトして、凋落の一途を辿った。

そのシェアの低下を食い止めようと、主として経産省が主導し、国家プロジェクト、コンソーシアム(共同企業体)、エルピーダやルネサスなどの合弁会社を設立したが、全て失敗した。何一つ、シェアの低下を食い止めることはできなかった。

それはなぜか? その主たる原因は、診断が間違っていたことにある。人は、「咳が出る、熱がある、身体がだるい」という症状が出たら、病院に行って医師の診察を受ける。昨今なら、コロナなのか、インフルエンザか、単なる風邪か、という診断を受け、それをもとに処方箋を出してもらう。

日本の半導体産業も、各社のトップ、産業界、経産省、政府などが、病気の診断を行い、それに基づいて処方箋を作成し、実際に処方した。しかし、全て失敗した。その理由は、診断が間違っていたからである。そのため、その処方箋も的を射ていなかったわけだ。

「過剰技術・過剰頻出」にこだわり過ぎてしまった

日本の病気の本質は「過剰技術で過剰品質をつくってしまう」ことにあった。しかも、時代が変わっているにもかかわらず、過去の成功体験を引きずり、「今でも自分たちの技術が世界一」と己惚(うぬぼ)れていた

誰もこの病気に気がつかなかったばかりか、より過剰技術で過剰品質をつくることに、各社、産業界、経産省、政府が注力した。その結果、病気は治らずより悪化し、エルピーダなど死者もでた。そして、SOCビジネスも壊滅的になってしまった。

日本の半導体産業は挽回不能である。特に、TSMCが世界を席巻しているロジック半導体については、日本のメーカーは2010年頃の40nmあたりで止まり、脱落してしまった。いったん、微細化競争から脱落すると、インテルの例でわかるように、先頭に追い付くのはほとんど不可能である。

したがって、日本がいまさら、最先端の7~5nmを製造することなど(まして2nmなど)、逆立ちしたって無理である。ここに税金を注ぎ込むのは無駄である。歴史的に見ても、経産省、産業革新機構、政策銀行が乗り出してきた時点でアウトなのだ。

半導体材料や製造装置には希望がある

では、日本に希望の光はないのかというと、まだ、ある。それは次の3点である。

①ウエハ、レジスト、スラリ(研磨剤)、薬液など、半導体材料は、日本が相当に強力である

②前工程で十数種類ある製造装置のうち、5~7種類において、日本がトップシェアである

③欧米製の製造装置であっても、数千~十万点の部品のうち、6~8割が日本製である

つまり、半導体デバイスそのものには期待できないが、各種の半導体材料、前工程の5~7種類の製造装置、そして、装置が欧米製であっても各装置を構成する数千点の部品の内の6~8割が日本製であり、ここに日本は高い競争力を持っている。

アジアを俯瞰(ふかん)すると、明確な役割分担が見えてくる(図表4)。

「強いものをより強くすること」が重要

サムスンとSKハイニックスを擁する韓国は、メモリ大国となった。台湾には言うまでもなくTSMCがある。ファウンドリーで世界シェア1位、微細化でもぶっちぎりのトップを独走する、世界の半導体のインフラだ。中国には、ホンハイの大工場群があり、世界の半導体の35%以上を吸収し、各種電子機器を組み立てる世界の工場となった。

これに対して、日本は、韓国にも、台湾にも、そして欧米にも、半導体製造装置(およびその部品)と半導体材料を供給している。装置、部品、材料、その中の一つでも供給が止まれば、韓国も、台湾も、欧米も、半導体を製造できない。そのような重要な役割を日本は担っている。

世界中のファブレスが殺到するTSMCが注目されている。しかし、そのTSMCといえども、日本製の装置(とその部品)や材料なくして、最先端プロセスで半導体を製造することはできない。その装置の半分弱が日本製であり(部品レベルでは6~8割が日本製)、材料の7~8割が日本製なのだ。

したがって「強いものをより強くすること」を第1の政策に掲げるべきである。これが、日本半導体産業に対する筆者の提言である。

意見陳述は政策にまったく生かされなかった

意見陳述の時間は15分だったが、筆者は5分以上超過してしまった。しかし、筆者の意見陳述を止めるものは誰もいなかった。衆議院議員からは、大ブーイングが来ることを覚悟していた。これまでの政府および経産省の政策を全否定したからである。

ところが、意外なことに拍手喝采を受けてしまった。そのため、意見陳述の後に、不思議な気持ちになるとともに、もしかしたら、筆者の主張が議員の胸に届いたのかもしれないという実感も湧いた。

しかし、残念なことに、筆者のこの意見陳述が、その後の半導体政策に生かされることは、全くなかったのである。それどころか、日本半導体産業は問題だらけで、無謀かつ無意味な方向へと突き進み始めていった。

---------- 湯之上 隆(ゆのがみ・たかし) 半導体産業コンサルタント、ジャーナリスト 1961年生まれ。静岡県出身。1987年に京大原子核工学修士課程を卒業後、日立製作所、エルピーダメモリ、半導体先端テクノロジーズにて16年半、半導体の微細加工技術開発に従事。日立を退職後、長岡技術科学大学客員教授を兼任しながら同志社大学の専任フェローとして、日本半導体産業が凋落した原因について研究した。現在は、微細加工研究所の所長として、コンサルタントおよび新聞・雑誌記事の執筆を行っている。工学博士。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『電機半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北』『半導体有事』(ともに文春新書)がある。 ----------

サムスン、300億円投じ日本に半導体開発拠点新設=韓国ネット「なぜわざわざ日本に?」

Record China によるストーリー • 10 時間前

15日、韓国・ノーカットニュースは「サムスン電子が300億円を日本に投資し、次世代半導体の生産ラインを構築する」「日本政府の補助金も受けるとみられている」と伝えた。© Record China

2023年5月15日、韓国・ノーカットニュースは「サムスン電子が300億円を日本に投資し、次世代半導体の生産ラインを構築する」「日本政府の補助金も受けるとみられている」と伝えた。

記事によると、サムスンは横浜市に次世代半導体の試験生産のための試作ラインを新設する。約300億円を投じ、25年の稼働を目標としている。

サムスンは3月に日本内に分散していた研究開発(R&D)施設を「デバイスソリューションリサーチジャパン(DSRJ)」に統合した。

記事は今回の半導体試作ラインについて「DSRJの運営を本格化し、日本内でR&Dを強化するためのものとみられる」「半導体関連の素材・部品・装備部門に強い日本と協力し、半導体供給網同盟を強化するため」などと分析している。

また「日本は現在、半導体生産の拠点化を進めており、世界最大のファウンドリ企業である台湾のTSMCの大規模投資を誘致した。日本政府はTSMCに工場建設費用として、最大4760億円の補助金を支給する」とし、「サムスンも投資への補助金を申請すれば100億円の支援が受けられるとみられている」と伝えている。

この記事を見た韓国のネットユーザーからは「地震が多く人件費も韓国と同水準なのに、なぜわざわざ日本に?」「同じ値段なら、地震で不安な国より東南アジアの方がいい」「釜山に拠点を置き、日本企業に税制優遇措置を与えて誘致したほうがはるかに国益の助けになる」「日本ではなく韓国の雇用を増やすべきでは」など、疑問の声が多数上がっている。(翻訳・編集/堂本)

ソニー過去最高の売上高11兆円超、勝因は「半導体への集中投資」だ

真壁昭夫 によるストーリー • 11 時間前

Photo:123RF© ダイヤモンド・オンライン

ソニーの収益力アップが顕著だ。2023年3月期決算は売上高が過去最高の11兆円を超えた。快進撃の勝因は、直近10年間でリストラを断行し、世界トップシェアを誇る画像処理半導体(イメージセンサ)の研究開発や製造に集中したからだ。対してパナソニックやシャープ、東芝は構造改革の遅れが業績にも響いている。ソニーは今後3年間で半導体分野での設備投資が1兆円を超える見通し。「ウォークマン」で世界を変えた往年のソニーの真の実力が戻ってきたようだ。 (多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

過去最高の売上高11兆円超のソニー

 2023年3月期のソニーグループの連結業績は、売上高が11兆5398億円(前期比1兆6183億円増)と過去最高だった。営業利益は1兆2082億円(前期比59 億円増)、経常利益は1兆1803億円(前期比628億円増)、純利益は9371億円(前期比549億円増)。前期比で大幅な増収増益が目立った。今回の決算を見ると、半導体などのハードウエア、ゲームや音楽などのソフトウエア(コンテンツ)の両面で、ソニーの収益力が高まっていることが分かる。

 ソニーはハード面のモノづくりの力を磨き、それをソフト面にコンテンツの領域に持ち込むことで、世界市場への影響力を強化している。同社の事業運営は、他の国内家電メーカーと対照的だ。多くの家電メーカーは、23年3月期の第3四半期の決算発表時点で、業績の下振れ警戒感を示した。対して、ソニーはその強さを示すことに成功しつつある。

 今後、ソニーは画像処理などに用いられる半導体の製造技術をさらに高め、新しい最終製品の創造を成し遂げるかもしれない。目下、世界全体でスマートホンの需要減少が鮮明だ。それは裏を返せば、ソニーがかつてのウォークマンなどのようなヒット商品を実現するチャンスともいえる。これからのソニーは、過去30年以上にわたって低成長に陥ったわが国の家電メーカーにとって、大きな刺激となることを期待したいものだ。

ソニー快進撃の勝因

 世界経済の先行き懸念高まる中、ソニーは過去最高の売上高を更新した。家電業界の中でソニーの収益力の向上は顕著だ。23年3月期決算のセグメント別業績を確認すると、ゲーム関連事業の売上高は3兆円を超えた。音楽、映画、半導体など、金融を除いた分野も1兆円を上回った。かつて「ウォークマン」のヒットによって、世界のミュージックライフを一変し高い成長を実現した、あのソニーが段々と戻ってきたようにも思える。

 その“勝因”を端的に言うと、ソニーは強みを発揮できる分野にヒト・モノ・カネをダイナミックに再配分したからだ。直近10年間で、資産売却などのリストラで資金を捻出し、得た資金を、世界トップシェアを誇る画像処理半導体(イメージセンサ)の研究開発や製造に再配分した。

 24年~26年に半導体分野での設備投資は1兆円を超える見通しだ。半導体の製造技術の向上は、画像、音響などの処理技術ニーズを支え、デジタルカメラ、音響機器などの分野でもソニーの競争力は高まった。

 そうした要素技術を、ソニーはソフトウエアの分野と新たに結合した。アニメや映画、音楽、「プレイステーション(PS)5」などのゲーム分野で新しい機器やコンテンツの提供体制を徹底して強化している。22年に完了した米ゲーム大手バンジーの買収は、コンテンツ創出体制の強化に向けた一つの取り組みだ。

 ソニーは、画像処理センサであるCMOSイメージセンサーの世界市場で40%超のシェアを握っている。その多くを、長崎県、大分県、熊本県の工場で生産している。ソニーにとってわが国のモノづくりの実力は、競合他社との差別化を徹底する重要な要素といえる。モノづくりの力を引き上げることによって新しいコンテンツを生み出し、収益が得られる分野を広げている。

パナ、シャープ、東芝…停滞気味の家電業界

 一方、わが国の家電業界は停滞気味だ。単純に比較はできないが、23年3月期の第3四半期の時点で、ソニー以外の主要家電メーカーは、業績の下振れ警戒感を示していた。

 23年3月期のパナソニックホールディングスの連結業績は、売上高が8兆3789億円(前期比9901億円増)、営業利益は2886億円(前期比690億円減)、経常利益は3164億円(前期比440億円減)、純利益は2655億円(前期比102億円増)。ソニーの収益力に比べると見劣りする。

 一時、パナソニックは世界の車載用バッテリー市場においてトップのシェアを獲得した。しかし17年、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が、パナソニックを追い抜き世界トップの車載用バッテリーメーカーに成長した。

 CATL経営陣の成長志向は高い。成長性の高さに着目し、中国共産党政権が産業補助金政策などを強化したことも大きい。対照的に、パナソニックは自社の優位性が維持できる分野での競争力引き上げ=製造技術の向上が遅れた。

 わが国にはセパレーターなどバッテリー部材などで高い技術力を持つ企業は多い。そうした企業との連携強化や海外企業の買収で、パナソニックが世界最大のバッテリーメーカーとしての地位を築くのは可能だったはずだ。しかし今現在、パナソニックは白物家電などの既存分野、人工知能(AI)などを用いた産業用のIoTビジネス体制の強化、さらにはバッテリーと、総花的な事業ポートフォリオのままだ

 シャープも、成長分野での事業運営体制の確立が遅れた。大阪府堺市のディスプレー工場への過剰投資が重荷となり、シャープは自力での事業運営に行き詰まった結果、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収された。それによって、一時は徹底したコストの削減と米アップルへのディスプレー供給増加によって業績は回復した。

 しかし、シャープの23年3月期決算は、2608億円の最終赤字となった。テレビ向け液晶パネルの不振などが要因だ。最終赤字に沈んだのは、経営危機に陥った17年3月期以来となった。

 その他、東芝は、本邦主要企業および金融機関連合による買収によって経営再建を余儀なくされているのは周知の通りだ。

いっそう強化すべきソニーの半導体事業

 今後より注目すべきなのは、ソニーの半導体事業だ。決算説明の場で十時裕樹社長は、「24年3月期、画像センサーの新製品量産のよるコスト増から、半導体事業の収益性は一時的に悪化する」と述べた。ソニーは中長期的な目線で画像処理などに用いられる半導体の製造技術を強化し、より多くの新しい需要を創出する決意を強くしている。

 半導体業界は重要な変革期にある。巣ごもり需要の反動減や、世界の景気後退懸念などを背景に、短期的にはメモリ、ロジック、アナログの半導体市況の悪化はより鮮明となるだろう。

 ただ、中長期目線では、いずれ市況は底を打つ。AI利用、家庭でのIoT利用、自動車のCASE(ネット接続や自動運転、シェアリング、電動化)などは加速し、世界の半導体需要は確実に増える。台湾問題の緊迫化もあり、台湾から米国や日本などに半導体製造拠点を移す地殻変動も加速している。

 そうした展開に備え、ソニーは半導体の生産能力を強化し、需要をより効率的に取り込む必要がある。それはデジタルカメラなどの機器、コンテンツの創出体制の強化にも寄与する可能性が高い。

 さらに言えば、ソニーが新しい最終商品を世界に投じることができるかにも注目したい。かつてのウォークマンのように、全く新しい発想をハードとソフトの両面に落とし込んだ高付加価値のモノを生み出すことができるか。こうした最終商品を出せれば、販売増だけでなく関連サービスも増えて市場が形成される。

 ソニーの真の強さとは、そうした世界中の人々の生活様式までも大きく変えることにつながる、内なるパワーを持っていることだ。リーマンショック後の世界経済を支えたアップルのiPhoneの需要が飽和し、SNSやサブスクリプションモデルも行き詰まってきている。この状況下、ソニーが半導体などの製造技術をフルに生かして、世界をあっと驚かせる最終商品を生み出すことができれば、停滞気味のわが国産業界に多大な好影響を与えることは間違いない。

【独自】海外のAI最先端大学を誘致 “スタートアップ・キャンパス構想”全容判明 岸田総理「出遅れてしまうわけにはいかない」

TBS NEWS DIG によるストーリー • 昨日 18:41

【独自】海外のAI最先端大学を誘致 “スタートアップ・キャンパス構想”全容判明 岸田総理「出遅れてしまうわけにはいかない」© TBS NEWS DIG

ChatGPTなどの「生成AI」の扱いがG7広島サミットでも大きな焦点となる中、政府のAI戦略の中核となるスタートアップ・キャンパス構想の全容がJNNの取材で明らかになりました。

東京・目黒区の上空。恵比寿に近い都心の一等地に大きな空地が広がっているのがわかります。2万平方メートルを超す広大な敷地です。

記者

「この一帯は旧海軍の施設があり、防衛研究所として使われていました。実はこの場所に海外から大学がやってくるのです」

近所の人

「羨ましいと思っています。静かで」

「このあたりに住んで5年になるんですけど、何か良い施設になればいいかなと思っていた」

岸田総理(去年5月 英ロンドン)

「海外の一流大学の誘致を含めたスタートアップ・キャンパスの創設」

政府が進めている「スタートアップ・キャンパス構想」は、マサチューセッツ工科大学を含め最先端のAI研究などを行っている大学を誘致する計画です。

自民党 甘利明 前幹事長(去年5月)

「全部(大学の)公用語は英語というくらいにして、世界を変えるスタートアップは日本からというくらいの勢いでやっていこうと」

計画は年内に正式発表され、あさっての日米首脳会談の中でも言及される見通しです。

先月、ChatGPTを開発したオープンAI社のアルトマンCEOと世界の首脳の中でもいち早く面会した岸田総理。生成AIの有用性とリスクが世界中で議論となる中で、AIの利活用に“前のめり”な姿勢を示してきました。

先日はAIの専門家を招いて意見交換し、AIと電力の問題について質問を投げかけました。

岸田総理

「この今、生成AI、莫大な電力を食うとか莫大なデータを学習させなきゃいけないとか、コスト面等も含めて将来このシステムがどのように維持されていくか」

生成AIは学習のためデータを読み込む際などに大量の電力を消費するので、より“省エネ性能の高い”新たな半導体チップが必要とされています。

政府「AI戦略会議」 松尾豊 座長

「省エネの技術なんかは特にハードウェア、半導体等の分野で(日本が)強い面もありますので」

関係者によりますと、岸田総理がAIに強い関心を示す背景には、日本の経済発展にAIが欠かせないという危機感があります。

岸田総理(周囲に対し)

「AIで大きく社会や経済が変わっていくだろうから、ここはついていかないとダメだろ。また出遅れてしまうわけにはいかない」

G7広島サミットで岸田総理は、国際的なAIルール作りに向け「広島AIプロセス」という交渉の場を設ける考えです。

今後の“省エネ”半導体争いで優位に立ち、スタートアップ・キャンパスで人材を育成、G7サミットでルール作りを主導してAI大国に、というのが政府の思惑ですが、果たしてうまくいくのでしょうか。

オープンAIのCEO「開発企業に免許制導入を」 米公聴会で訴える

朝日新聞社 によるストーリー • 3 時間前


16日、米議会上院の公聴会で証言する米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)=ロイター© 朝日新聞社

 対話型AI(人工知能)「ChatGPT(チャットGPT)」を開発した米新興企業オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は16日、米議会の公聴会で初めての証言に臨んだ。最新のAIには大きなリスクがあるとして、専門の政府機関の設置や「免許制」の導入などを訴えた。

【写真】ChatGPT、何が問題か 元グーグル社員「非常に無責任で無謀」

 「AIは私たちのくらしのほぼすべてを改善する可能性を持っている」。アルトマン氏は米上院司法委員会の公聴会の冒頭、そう訴えた。

 そのうえで「もしこの技術が悪い方向に行けば、極めて悪くなりうる。そうしたことが起きないよう、政府と協力していきたい」として、政府による規制の必要性を強調した。

 アルトマン氏は、AIを管轄する専門の政府機関の設置を提案した。企業が開発したAIに対する外部専門家による監査や、一定の規模以上のAIを開発する企業に免許を与える案などに触れた。

参考文献・参考資料

経産省が出てきた時点でアウト…日立の元技術者が「日本の半導体の凋落原因」として国会で陳述したこと (msn.com)

サムスン、300億円投じ日本に半導体開発拠点新設=韓国ネット「なぜわざわざ日本に?」 (msn.com)

ソニー過去最高の売上高11兆円超、勝因は「半導体への集中投資」だ (msn.com)

【独自】海外のAI最先端大学を誘致 “スタートアップ・キャンパス構想”全容判明 岸田総理「出遅れてしまうわけにはいかない」 (msn.com)

オープンAIのCEO「開発企業に免許制導入を」 米公聴会で訴える (msn.com)

大鹿靖明著 『東芝の悲劇』 幻冬舎 2017.12.5 第4刷発行

日本経済新聞社編 『シャープ崩壊』日本経済新聞出帆016.3.9 4刷

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