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数年ぶりにして最後のグループ通話

2022年11月某日、悪友から突然、みんなでグループ通話をしたいとの連絡が入る。

この日に至るまでしばらくの間、お互いに連絡を取り合っていなかったにも関わらず、タイミングよく全員参加できるとのことだった。

各々の返事が入ると10分も経たないうちに、いつも必ず召集をかけている悪友の元で通話が開始された。

思えば、こうして集まってグループ通話をおこなうのは、1泊2日の名古屋旅行からおよそ4、5年ぶりであった。

それまでは、毎晩集まっては「モンスターハンター」や「マインクラフト」などといった、多人数でプレイできるゲームをしながら雑談に明け暮れていたものである。

その模様なる画面を録画なり編集したりして、昨今あちらこちらでゲーム実況動画が蔓延るYouTubeにアップしておいた方が良かったのではないかと、今さらになって惜しむほどにやり込んでいた。

そこからは皆仕事であったり一部では家庭の事情などで忙しくなり、加えてここ数年で起こったパンデミックにより、この日に至るまで互いに連絡を取り合うことはなかった。

そうして久々の再会(?)に歓喜に溢れ、これまでの思い出話に花を咲かせながら、個々の近況を交えつつも、悪友は深刻そうに本題を切り出した。


* * *


その年の夏頃に起きた台風のうち一つが、悪友の住んでいる地域を直撃したらしい。大雨、洪水、暴風と、数多の特別警報が発令される中、風の影響で家が半壊してしまったうえに、近くの河川が氾濫して床下浸水の被害を受けたと話す。

おかげで、家の至る箇所を修繕しなければいけない状態に陥ってしまった。加えて、所有していた車も浸水してエンジンがかからなくなり、もはや廃車しなくてはならなくなってしまったという。

たしかに、一昨年の台風は凄まじいものだったと記憶している。その甚大な被害を齎した爪痕は、すぐさま全国区のニュースにも取り上げられていた。

さらに被災した方々の救助や後々の救済に関わる支援といった、一連の活動が鈍い自治体に対し、県内外問わず非難が相次いでいたことも同時に新しい。


ゆえに悪友には、妻と二人の幼い子供がいる。一日の大黒柱として、常に残業続きの仕事で体力と精神が疲弊していながらも、家族を守っていかなければいけない。

その中で、今回の台風に直面したと打ち明けてからの彼の声は、通話を介して口調やトーンを聞く限り相当まいっていた様子であった。


今こそ力になってあげなければならない。
こうしてこの場で「SOS」を発している悪友を、学生の時から現在まで唯一繋がりを持った親友を助けなければならないと、私はそう悟った。

舌の根の乾かぬうちに、悪友以外の私たちで手分けして、役所に掲載されている情報を中心に色々と探してみることにした。

だが少しでも糸口が見えそうな情報など、やはりそう簡単には見つからない。気づけばあれこれ話し込み過ぎて、とうに深夜12時を回ってしまっている。

すでにそれぞれ、声色や口調からにして眠たそうな雰囲気を醸し出していた。結局その晩中に、結論やそこに結び付かせるための解決策は出なかった。

その日は平日の真っ只中でもあり、翌日も皆仕事を控えている。この状況下では、さすがにお開きせざるを得なかったのであった。

次回に集まる時まで調べておくと悪友には伝え、およそ4、5年ぶりのグループ通話を終えたのだった。


* * *


この時の私は、後に最悪な形で様々な裏切りに合うことを知らず、ひとり躍起になっていた。

しかしその日を最後に再び集まるどころか、グループ通話すら行なわれることはなかった。やがて、悪友からの連絡が途絶えてから半年以上経過した現在も…。












最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!