いざなぎ景気と並んだのは、実感できないほど緩やかな回復だから

景気には、一度上を向くと、そのまま回復・拡大を続ける性質があります。「消費が増えると企業が増産し、そのために雇用を増やすので雇われた元失業者が消費を増やす」といった好循環が発生するからです。海外からのショック(リーマン・ショックなどによる輸出減少等)がなければ、景気拡大は過熱してインフレが心配になるまで続きます。

景気が過熱してインフレが心配になると、日銀が金融を引き締めて景気をわざと悪化させ、インフレを予防します。インフレは一度火がつくと消すのが大変なので、景気を多少犠牲にしても早めに退治しよう、というわけです。バブル崩壊後の長期停滞期、日本では景気は何度も回復をはじめましたが、いつも過熱する前にリーマン・ショック等々で景気が腰折てしまったので、インフレ退治のための金融引き締めを知っている人は少ないかも知れませんが。

さて、今次景気回復・拡大の期間が長いのは、景気回復が緩やかだからです。回復が実感できないほどの緩やかさなので、いつまでも過熱しないのです。走れば息が切れるのに、同じ時間歩いていても息が切れないのと同じです。

いざなぎ景気当時の日本経済は、若きアスリートのようなもので、短距離走の速度でマラソンを走って、ようやく息が切れたわけです。一方で今の日本は走れない高齢者のようなもので、ゆっくり散歩をしている間にアスリートの息が切れて、運動の持続時間がアスリートを上回ったわけですが、それがどうしたの?という感じですね(笑)。

まあ、歳のわりに元気であって、長時間歩き続けていられるだけでも、良しとしましょう。高齢者が若きアスリートを羨んでも仕方ありませんし、まして真似しようなどと考えるべきではありません。「足るを知る」が大切ですね。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL28I1I_Y7A820C1000000/

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