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山小屋よもやま話

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山小屋生活での四方山話です。これから山小屋で働いてみようと考えている方、「そもそも山小屋って何?」という方にも読んでいただけたらと思います。
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記事一覧

山小屋の同僚と結婚しました

山小屋の同僚と結婚しました

しばらく山小屋関連の投稿から離れていましたが、
この間いろいろありまして、
先日、山小屋で同僚だった方と結婚しました。

正社員にもならず、
一つの土地にも落ち着かず、
季節労働でフラフラしている私が、

結婚なんてできるんだろうか?

そう思っていましたが、

パートナーとなってくれる方がいました。

ありがたいことです。
妻にはもうそれだけで頭が上がりません。

今回はそれに関連して。

「山

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スターリンクが山小屋にやってきた

スターリンクが山小屋にやってきた

スターリンク(Starlink)

どれくらいの人が知っているでしょうか。

スターリンクは、かのイーロン・マスクさんが率いるスペースX社の衛星インターネットサービス。

このサービスを利用すると、空が開けた場所ならどこでもインターネットを利用できるようになります。

どこでも電波が入り、ネット回線が通じている都市ではあまり関心を引く内容ではないかもしれませんが、

電波の届かない山小屋にとっては

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富士山

富士山

この夏、富士山の大混雑とか規制の話を聞く度に、なんだかもどかしい気持ちになっていました。

わたしが富士山に登ったのは12年前、まだ世界遺産になる前のことです。

当時、大学生だった私はワンダーフォーゲル部に所属しており、
北アルプスの3000m峰に登っていたので
富士山も登頂できるだろう、そんな心持ちでいました。

しかし誤算といいますか、高山病は避けられませんでした。

富士山の登山口の一つで

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2023年山小屋を考える②

2023年山小屋を考える②

8月11日、山の日でしたね。

私が初めて山小屋で働いたのが
山の日が実際に施行された2016年です。

それから7年経ちますが、振り返ると山小屋の状況はずいぶん変わったなぁと感じます。

前回の記事に続いて今回は山小屋とスタッフの話を。

山小屋の求人の状況

ここ2年ほど、年始から夏にかけて山小屋の求人サイトを定期的に見るようにしています。

夏山シーズンの求人が出るのは、早い山小屋でその年の

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2023年山小屋を考える①

2023年山小屋を考える①

『山と渓谷』の8月号を買いました。
今月号の特集は「北アルプス山小屋物語」

山小屋に携わってきた人間として
これは買わねば、ということで本屋で見つけて即購入!

でも「山小屋の特集」って珍しいな、
と思ってバックナンバーを2015年まで遡ってみたところ特集を組んでいたのは、
2021年の8月号のみ。

2年ぶりと言えばヤマケイとしては普通なのかもしれませんが、
その前の6年で第一の特集で組まれた

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尾瀬の歩荷さん

尾瀬の歩荷さん

歩荷さんとは

尾瀬の山小屋を語る上で、
欠かすことができない方々

「歩荷さん」

「歩荷」と書いて「ぼっか」と読みます。

トップ画にも使用しましたが
「背負子」と呼ばれる器具に
ダンボールや発泡スチロールなどの荷物を高く積み、それをロープで縛って運びます。

担ぐ荷物のあまりの高さに、
背負う人自身が隠れてしまい、
まるで荷物が歩いているように見えることから歩荷と呼ばれるようです。

日本の

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尾瀬に集まる元同僚たち

尾瀬に集まる元同僚たち

先月、5月の20日から25日までの間に
私が働いている尾瀬に、
元同僚8人に会いました。

「元同僚」とは、私が昨年まで働いていた北アルプスの山小屋の同僚のことです。

8人の内2人は尾瀬の山小屋スタッフとして勤務中。

他6人はなんとこの短期間に、それぞれ個別に遊びに来ました。

同じ山域に私も含めて3人の元同僚が働いているのも奇跡に近いのに、

この6日間で6人が遊びに来るというのは、
なんだ

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静かな尾瀬で考えたこと

静かな尾瀬で考えたこと

この記事は2023/5/19に書きました。

ゴールデンウィークをあけてからというもの、お客様の足がパッタリ止まっています。

週末は雨予報で予約は減り、平日は好天でも人はまばら。

水芭蕉はもう咲いているというのに、
それを目的としている人は来ません。

一般的に水芭蕉のシーズンは5月の下旬から、
6月の上旬と言われていますが、

今年は雪解けがあまりにも早く、既に咲いている水芭蕉が多数。

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人よりもタヌキに近い生活Part2

人よりもタヌキに近い生活Part2

私の働く尾瀬の山小屋ではお休みの日は里に降りることができます。

登山口まで歩き、
そこからシャトルバスで駐車場のある戸倉の集落まで。
私は麓に車を置いているので、
そこから沼田の街まで出て行きます。

山に戻るバスの時間は決まっているので、
下界での行動時間はだいたい6時間。

月休4日で貴重なお休みのため、
休みの前日は何をしようかな、と考えながら
計画を練りますが、
結局は郵便局に行ったり、

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冬季休業中の山小屋の無断使用の件

冬季休業中の山小屋の無断使用の件

最近、山界隈で話題になっているのが冬季休業中の山小屋である三俣山荘、および水晶小屋の無断使用の件。

北アルプスの山小屋はロープウェイ駅から程近い西穂山荘を除いて、全ての山小屋が冬季休業をします。

それはただでさえ自然環境の厳しい北アルプスの山中で、さらに環境が厳しくなる冬の営業は困難を極めること、
そしてもちろんそんな場所にお客さんはほとんど来ないからです。

その間は雪が侵入しないように、あ

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山小屋初心者にオススメの尾瀬

山小屋初心者にオススメの尾瀬

私がこのnoteで取り上げている「山小屋」

山の中にあって、主に山に登る人が利用する宿です。

そのため
風呂が無い、ご飯が質素、建物がボロい、相部屋、空調が無い、電波が無い

など普通の人が泊まるには、ハードルが高い山小屋も少なくありません。

ただ現在私が働いている尾瀬の山小屋は、
全国に数ある山小屋のなかでも
山小屋初心者さんにとって泊まりやすい山小屋です。

私の山小屋noteを読んでく

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尾瀬のゴールデンウィーク

尾瀬のゴールデンウィーク

4/21に登山口に通ずる道路が開通し、実質的な開山となった尾瀬。
ゴールデンウィークは尾瀬における最初の繁忙期です。

お客様が目当てとするのは尾瀬ヶ原の散策と、4/21〜5/6まで登山道が開放されている至仏山の登山と山スキーが恐らくメイン。
至仏山については前回の記事で少し触れています。

湿原を散策したい観光客と至仏山に登りたい登山者の山小屋周辺では両方が入り乱れます。
特に天気の良かった5/

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1人で過ごせる環境

1人で過ごせる環境

昔から1人でいる時間、周りに誰もいない環境が好きです。

人が大勢いる環境も大嫌いなわけではありませんが、興味の対象が自然や自分自身ではなく
他人に向かってしまって、
本来楽しむべきものに集中できないということもありますし、
周りに大勢の他人がいることが単に落ち着きません。

大学卒業と同時に首都圏から長野県へ、それから山小屋生活へ、と移行していったのも、
人がたくさんいる環境から距離をとりたかっ

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小屋開け

小屋開け

4月の中旬、世間は桜の季節が終わって、早くも初夏の陽気さえ感じられる頃、
実家のある埼玉から登山口に向けて群馬の山中へ。

関越自動車道の沼田インターを降りて片品村に入ると、まだ道路脇には桜が咲いていて
4月の初旬に桜が散ってしまった松本よりもさらに冬の厳しいところだと実感します。

そうこうしているうちに尾瀬の入口、戸倉に到着。ここで山小屋スタッフが集結し、まとまって登山口へと移動します。

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