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【cinema】殺されたミンジュ

最近キム・ギドクの作品は欠かさず見ているように思う。嘆きのピエタの印象が強かったからかな。

5月のある晩、ソウル市内の市場で女子高生ミンジュが屈強な男たちに殺害された。しかし事件は誰にも知られないまま闇に葬り去られてしまう。それから1年後、事件に関わった7人の容疑者のうちの1人が、謎の武装集団に拉致される。武装集団は容疑者を拷問して自白を強要。その後も武装集団は変装を繰り返しながら、容疑者たちを1人また1人と拉致していく。そして容疑者たちの証言により、事件の裏に潜んでいた闇が徐々に浮かび上がっていく。
(映画.comより転記)

国家という強大な力を前にして、人は思考能力を滅し、指示されたからやった、とのたまう。それに意味があるとかないとか、正当性の有無は、問題ではなく。

それを暴力で暴いていくのが、謎の集団の7人なんだけれど、彼らの素性は思ったよりも単純で…世の中の不条理さに嫌気がさした奴らの集まり、なんだけど、まぁ動機も不純で、寄せ集めの結束力なんてそんなもんか。でもただ一人、強い信念の下、動いていても結局は数がモノを言うのね…

とにかく暴力シーンは過激なんだけど、嘆きのピエタの時やメビウスの時のような衝撃はなく、見るに堪え忍ぶことができたように思う。

韓国版堺雅人にしか見えなかったキム・ヨンミンが1人8役を演じてるんだけど、それには何の意味があったのかなぁ。パンチパーマ度が増してる…とか1人でウケたりしたんだけど。

この映画では何度も「上の指示に従った」「責任者は誰だ?」という言葉が出てくる。韓国社会がどれくらい縦割りのトップダウンの組織で成り立っているのかわからないけれど、ここでまたハンナ・アーレントの唱えた「悪の凡庸さ」を思い出しました。彼らがやっていることは、第二次大戦中のナチスの親衛隊員のやってきたこととなんら変わりない。そこに一切罪悪感はなく、指示が全てだったことで、自分の正当性を主張する…

謎の集団のリーダーがラストで慟哭するのが悲しい。悲しすぎる。それをぶった切る復讐の炎に燃えたオ・ヒョンがまた悲しい。何も変わらない。暴力は暴力を呼び起こし、負の連鎖となる…

いい映画だったかどうかは正直わからないけれど、キム・ギドクの作品は見ておきたいって気持ちになるんです。こんなエグさを全面に出す監督は世界中見てもなかなかいないので。

シネ・リーブル梅田にて鑑賞。

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