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信仰心と歪んだ愛のカタチ。

ローズの秘密の頁

取り壊しが決まった精神病院から転院する患者たちを診察するため、病院を訪れた精神科医のスティーブン・グリーンは、赤ん坊殺しの罪で精神障害犯罪者として40年もの間病院に収容されている老女ローズ・F・クリアを看ることに。自分の名が「ローズ・マクナリティ」であると訴え続ける彼女は、赤ん坊殺しの罪を否認し続け、大切にしている聖書の中に何十年にもわたって密かに日記を書きつづっていた。興味を抱いたグリーン医師に、彼女は半世紀前からの自分の人生を語り始める。(映画.comより転記)

随分前に見た気がする…。最近映画見るスピードが加速しまくりで…。頑張って、映画を見終えた当初の気持ちを思い返してみたいと思います。

悲しい女性の物語です。女だったがために信仰、思想、愛の全てにおいて、行く手を阻まれて。今でも中近東などのイスラム教国家だとあり得るのかな…。時代がそうだったとは今だから言えるんだろうけれど、それで40年以上収監されていたって、人ひとりの人生台無しにして言えることなのかって、憤りしか感じなくて。(実話じゃなくて小説なんですけど)

なのに、なぜかローズ本人から「怒り」を感じないの。回想シーンで、彼女の記憶を辿るけど、己の境遇をグチったり、ゴーント神父のことを悪く言ったりするシーンが一切なくて、ローズ!ホントにそれでいいの⁉︎と言いたくなってくる。

と言うのはですね、諸悪の根源は、この神父にあるからなのです。ネタバレになっちゃうけど、彼は神父でありながら、ローズを愛してしまうわけで、彼女の魅力を「色情狂」と宣うのは彼なんです。で、周囲の目も必要以上に厳しくなって。てか、この神父、ストーカー化しますしね。厳格なカトリックの田舎町にて、都会育ちのプロテスタントの彼女からすると、もう息苦しくて堪らなくなるんです。んでもって、彼女はプロテスタントのジム・マクナルティを愛してしまい、全てが敵となり…。

悲しいまでに、ローズは言い分は聞き入れられず、陥れられて、蔑まれて。なのに、若き日の彼女からも、年老いてからの彼女を見ても、憎しみが感じられず、全体的に澄んだ空気感を感じられます。アイルランドの荒涼とした海辺や草原の景色も相俟って。

「マグダレンの祈り」や「あなたを抱きしめる日まで」という映画があります。いずれもアイルランドで父なし子を生んだ女性を収容する修道院が舞台の映画(どちらも実話らしい)でした。それとは少し違うけれど、遠くない昔、信仰心を振りかざされて、犠牲になった女性たちがどれほどいたのだろうと絶望的になりました。

けれど、犠牲者であるローズの目からは赦しやある種の希望まで感じられる。日記を読んだグリーン医師や彼女を世話する看護師は彼女以上に怒り心頭になるのに。実際、心から愛する人や自分は間違っていないという確固たる信念がある人にとったら、憎しみよりも赦しや希望の方が強くて、それが彼ら、彼女らを生かしているのかもしれません。立場的には弱い彼女ですが、誰よりも強い女性であると。そんなことを強く感じた映画でした。

ヴァネッサ・レッドグレーブとルーニー・マーラの演技もとても良かったです。

2018年17本目。テアトル梅田にて。

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