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素敵な旅の、おすそ分け。

大学には、実家から電車で通っている。中学、高校と自転車か徒歩でしか通ったことが無かった僕としては、公共機関を使って通学するというのは初めての体験だ。電車に時間を合わせて行動する難しさというのを毎日痛感している。

電車の中というのも案外、ぼーっと周りを見てるだけで暇しないもので「あー、あのカップル素敵だなー」とか「なんなんだそのピアス...地球儀?」だとか一人クイズをしているだけで目的の駅に着いていたりする。最近は専ら読書の時間で、中々消化できない本をガンガン読み進めたり、noteでエッセイを読み漁ったりと、いい時間になっている。

でも、そんなゆったりした時間を過ごしているけれど、朝にはめっぽう弱いので乗り遅れることも少なくない。というか、最近は....そっちの方が多かったりする。普段の通学の時は普通電車か急行電車に乗るのだけれど、乗り遅れた時だけちょいと高めの特急電車に乗るのだ。

特急電車となると、なんだかテンションが上がってくる。なんか豪華だし、座席もしっかり仕切られている。見た目も新幹線っぽくてかっこいいし、最初は新幹線と勘違いしていたし。ちょっとした旅行気分だ。

普通の電車って、やっぱりみんな交通手段として重きを置いている。僕もそう考えているし、もちろん当たり前のことだ。遊びなんかなくって、今から戦地に赴く、そんな感じ。
でも、特急電車は違う。みんな思い思いの事をしているし、ゆったりと、一つの旅をしている。僕はそんな特急電車の雰囲気が好きだ。

知らない人の隣に座ると、その人の営みがちょっぴり垣間見えて、覗き見しているような気持ちになる。まるで、その人の旅に少しだけ同行して、おすそ分けしてもらっている様な気持ち。そんな、数駅分の旅だけおすそ分けしてもらう朝の時間。そんな時間が密かな僕の楽しみだ。

今日の隣のおじいちゃんは、缶ビールを煽りながら、パステルカラーの美味しそうな駅弁をつまんでいる。車窓の流れる景色をおじいちゃんと見ていたら、僕の降りる駅に着いたらしい。
「素敵な旅のおすそ分けを、ありがとう」
心の中でそう呟いて、僕は駅に降りた。

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