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【読書】本当に今更『窓ぎわのトットちゃん』を読んだら、記憶が蘇りまくりだった

ある日、映画上映前の広告タイムで『窓ぎわのトットちゃん』がアニメ映画になることを知った。

すごいな……めちゃくちゃ昔の作品なのに。


なお、元となった同名の本である『窓ぎわのトットちゃん』の内容が黒柳徹子の幼少期を書いた本ということは自分も知っていた。

なぜなら母がこの本を本棚に置いていたからである。

しかし当時全然興味が湧かなかった自分は、結局その本を読まないまま大人になり、そして何十年も経った今になって読もうとしているわけだ。

何かを得る機会があっても、自分で手を伸ばさなければ意味がないんだと実感するな……。

そして本が届いた。

久々に購入した紙の本だが、理由は電子書籍版がなかったからである。

紙とAudibleのみ


だがこれはAmazonの罠だった。


実際にはKindle版が存在し、しかも映画化して注目されている今はポイントも付くのだ。

やってくれたなAmazon……!!


Kindle版だけ別ページ(41%のポイント還元)


ま、まあいいですけど……!
紙の本だけの良さだってあるのだ。

重版の回数確認とかな!!

1984年4月15日 第1刷発行
2015年6月12日 第80刷発行
2015年8月12日新組版第1刷発行
2024年1月19日新組版第33刷発行

す、凄まじすぎる……!!

80刷からのプラス33刷とかどういうことなの……?

というか映画化したせいもあるが、ほんの10日前に再度重版している。

……これはギネスに載るわけだ。


それはそうと本の内容だ。

先述したようにこれは黒柳徹子の幼少期、正確に言うと小学校……いや、トモエ学園時代の思い出を書いたものである。

トモエ学園では普通の学校では馴染めなかった子どもたち50名が学んでおり、小児麻痺だったり、身長が伸びなかったり、黒柳徹子さんのようなADHD気質だったりと、それぞれが多様な特徴を持っている。

そして授業する教室はまさかの電車だし、席は自由だし、毎日の授業は1時間目に全部板書され、好きなものから自由に取り組むという非常に斬新な教育スタイルだ。

午前中にみんなが授業内容を全部こなした場合は、散歩という名のフィールドワークへ繰り出し、実際に自然に触れてあらゆる知識を習得させたりもする。

……なんという自由さだろうか。

この本を読んでいると、1937年にこんな教育をしている場所が存在したことに驚いてしまう。


まあ本の内容については間違いなく名作だし、素晴らしい読書レビューは他にいくらでもあるだろうからそれを見てもらうとして……

ここからは読んでいて面白かったり、なぜか自分の過去の記憶が蘇った話についてちょっとだけ書いていこう。



【海のものと山のもの】

これはトモエ学園でのお弁当ルールである。

トモエ学園の生徒に持たせるお弁当には「海のものと山のもの」を必ず入れるのだ。(無理に贅沢にはしないでというルールもある)

これは栄養面での意味合いもありつつ、親のお弁当を考える負担を軽減し、子どもたちが海のものと山のものを探し合うという楽しみも提供する。

トモエ学園校長が考案したこのシステムだが、単純な内容で多様なメリットを生み出しているのだ。これはすごい。

そして家の事情で海のものと山のものを入れられなかった場合も当然ありえるわけだが、その際は校長の奥さんから追加のおかずが配布される。(:芋の煮っころがし、:ちくわ)

これがトモエ学園である。


【デンブは、海と山と、どっちだい?】

これはトットちゃん(黒柳徹子)のお弁当のデンブを見て校長が発した言葉だ。

えっ……どっちだ……?

そもそもデンブって何なの……?

校長「いいかい、デンブは、海だよ」

そうなんだ!!


そうなんです

自分はこの歳で校長からデンブについて教わったのだった。

ありがとう校長先生……!


【裸プール】

トモエ学園ではプールはで遊ぶ。(別に水着着用もOKだけど)

これにも校長の意図があり、小児麻痺や低身長などのコンプレックスになりそうな事柄も、裸になって一緒に遊べば羞恥心がなくなり、劣等意識を持たないことに役立つと思ったらしい。

(そして実際にその通りだったことがあとがきで明かされる)


……思えば自分の通った幼稚園も、夏は男女ともに上半身裸ではあった。

そしてふいに思い起こされる、陽が当たったことでちょっと温かくなったプールの記憶……!

この本はどうにも、自分の幼少期のあれこれを思い出させる効果があるようだ。

楽しかったあの頃……。


【野宿(屋内)】

トモエ学園ではテントで野宿するイベントが開かれる。

もちろん小学校低学年でこんなイベントがあったらテンション上がりまくりなのは言うまでもない。

そしてトットちゃんが言われた通り毛布とパジャマを持って学校に向かうと、校長によるテント張りレクチャーが始まった。

校長が言う。

これから君たちは、講堂にたくさんテントを張って、野宿だ!!

まさかの室内テントである。

寒い時期を室内テントで過ごしてきた自分にはド直球で響く話だ。

そしてこの優秀な校長が、子どもたちがワクワクするこのイベントを更に有効利用しないわけがない。

テントを張り終わってパジャマになった子どもたちは、講堂の真ん中に座った校長の話に耳を傾けるのだ。

そこで語られるのは校長先生が旅をした外国の話

非日常の中で、更に知らない世界の話を聞く。

これはもう、一生の思い出確定である。


……そしてここで自分が中学辺りでしたはずのキャンプ合宿の記憶が見事に欠落している事に気づいた。

だが深追いはしないでおこう。

これは忘れたほうが良い」と、自分の脳は思ったんだろうから……。


【自分の木】

間違いなくアニメ映画では名シーンになってそうな木のシーンだが、ここで触れたいのは「トモエ学園の子どもにはそれぞれ自分の木があった」ということだ。

実は今作成中の別記事に関する調べ物でそんな話があったので、「おお…!」と思ったのである。

どんなものかというと、「大江健三郎の生まれた土地には人それぞれに自分の木というものがあり、死んだらその木に帰るんです…」とかそういう感じの話だ。

いや本当にそれだけなのだが、なんか自分の木って考え方が良いなと、しみじみ思ったのだ。

自分より長く生きるものに自分を預けておける良さというかなんというか。


【ブルーマーへの憧れ】

ブルーマーとはブルマのことである。

今の子供は存在すら知らないであろう体操着?だが、トットちゃんは当時それに憧れを抱いていたらしい。

(正確には保母さんたちのブルルンと揺れるふとももへの憧れだが)

トットちゃんは自分のふとももをブルルンと揺らすべく、ママにブルーマーの入手をお願いするのだが、サイズ的に子供用はなかったようで諦めることとなる。

こういう話も入っているのがこの本の面白いところだ。


そしてこの話を読んだことで、またしても自分の記憶が蘇ってきた。

自分は新体操のリボンのパタパタ音がとても好きだったのだ。
いや衣装がどうこうとかではなく、リボンの音である。(大事)

ああ、本当にこの本はあれこれ思い出させてくれる。

そしてYoutubeで検索した新体操動画は、どれも盛大にBGMが付いていて私は悲しいです……


【トットちゃんはスパイになりたい】

あるとき将来について考え始めたトットちゃん。

そして実は前から決めていた職業があったことを思い出す。

友達(というか好きだった)泰ちゃんにトットちゃんは宣言する。

「私、スパイになろうと思うんだ!」

泰ちゃんはこれを聞いてすぐには反応せず、

しばし思案した後にこう言った。

「スパイになるにはね、頭が良くなくちゃなれないんだよ。
それに色んな国の言葉だって出来なくちゃだし……」

そしてトットちゃんの目をしっかり見据えて、続けてこう言ったのだ。

「第一、女のスパイは顔が綺麗じゃなくちゃ、なれないんだよ?」


失礼だろうが!!


……しかしトットちゃんはこれらの発言に対してこう思考するのだ。

・確かにその通りだ。これは相談してよかった。
・泰ちゃんは同い年なのに凄いな(狐がフォックスなのも知ってるし)
・こりゃ相当利口な人向けの仕事をすることになるだろう。
私がそんな泰ちゃんにかけてあげられる言葉はなんだろうか?

そしてトットちゃんは泰ちゃんにこう言った。

「ありがとう。スパイはやめる。でも泰ちゃんはきっと偉い人になるわ!」

おいおい……

こんなの間違いなく泰ちゃんの人生変えただろ……!


こういう子供の頃に言われた何気ない称賛の言葉が人生を変えるのだ。

自分も過去に贈ってもらったポジティブな評価の言葉を思い出す度に、なんだか自己肯定感が上がって気力が湧いてくるので、とてもよくわかる。

(今の自分がどうなっているかはともかく)


……そしてそんな泰ちゃんはアメリカに渡って凄いことになるのだが、それはまた別のお話。


【君は、本当は、いい子なんだよ】

トットちゃんに対して事あるごとに校長先生がかけてくれた言葉。
それが「君は、本当は、いい子なんだよ」である。

いや確かに本を読んでいると、トットちゃんはめっちゃいい子なのだ。(色々と問題を起こしまくるだけで)

そしてトットちゃんは「本当は良い子」の「本当は」の部分は聞き飛ばす感じで処理していたため、「私は良い子!!」という謎の自信を持って生きていくことが出来た。

だがこういう謎の自信が人生にとっていかに大事か……!


……というか自分も似たようなことを母からずっと言われていた気がする。

もしやトットちゃんを読んだ母が、それを自分に対して実践していた……?

いや普通にめちゃくちゃ有り得そうな話である。

今判明する衝撃的な事実……!!


【アメリカ人は鬼だと教える世の中で】

黒柳徹子さんの生きた時代は第二次世界大戦がまるごと含まれている。

戦争が始まった後のある時期からは、お弁当の「海のものと山のもの」は達成が困難になり、食糧は配給制になり、街からお菓子は消えた。

そんなときトモエ学園に、宮崎くんというアメリカ生まれの子が転入してきたのだ。

宮崎くんは日本語はあまり得意ではないが、英語はバッチリ。

そして宮崎くんが家から持ってくる英語の絵本は、日本のものとは比較にならない紙質の良さ色の多さでみんなを惹きつけた。

絵本を楽しみ、お互い日本語と英語を教えあって成長していくトモエ学園の生徒たち。

学園の外では「アメリカ人は鬼だ」「英語は敵性語だ」と騒がしい世の中だったが、ここだけは英語で笑い合っていたのだ。


……なんというか、考えさせられる話だなと思う。

過去に天王寺動物園の回でチンパンジーのロイドが外来語だからと勝太に改名させられたことを紹介したりしたが、あの頃は相当な同調圧力の中での生活だったのだろう。

「窓際のトットちゃん」の中では戦争の悲惨さについてはそれほど詳しくは描かれていないが、裕福な家庭だった黒柳徹子さんの家ですら相当な苦労をしていたことが自身のYoutubeチャンネルでは語られている。

出生する父を見送る際に泣くことすら許されない空気感や、1日15粒の大豆と水だけの生活など、これはなかなか……

自分もタイ米の記事を書く際に戦時中の食糧関連は少し調べたが、実体験を聞くとやはり壮絶だ。

上に載せた動画はなかなかしんどいものではあるが、心に余裕がある方は見ておいて損はないんじゃないかなと思う。



そんなわけで、気づいたら1日で読んでしまった。

あとがきを含めて370ページくらいあるのだが、読めるもんである。

上で紹介した他にも、トイレ周りの話がやけに多かったり、面白い話や悲しい話、そしてこの校長ホント凄いなという話がもりだくさんなので、ぜひとも自分で読んでみてほしい。


そしてつい最近出たという『続 窓ぎわのトットちゃん』も好評発売中だ。もちろん今度は電子版で買った。(ポイントも入るし)

これで単語検索が楽になるし、風呂で読めるぞ……!!

久々に本を一気読みしてしまったが、思い出したことも含めて得られるものが多かった「窓ぎわのトットちゃん」。

やっぱり本を読むのは良いものだ。

映画もそのうち見るとしよう。

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