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これからのファッション業界を担う若手デザイナー5選〜オートクチュールからハイエンドブランドまで〜

世界的経済誌『Forbes』が毎年発表する、「世界を変える30歳以下の30人(Forbes 30 under 30)」。
大きな市場規模を持つファッション業界からも毎年、特筆すべきファッションデザイナーが選出されますが、2023年のアジア版、ヨーロッパ版だけに絞ってもその数、23人!!
デザインそのものだけでなく、収益性や将来的な伸び代、社会的影響力などビジネスの観点も十分に考慮して選ばれた、ファッションとは一体どんなものなのでしょう?!彼らの作品を一気見する連載を4回に渡ってお送りします。

実は、5年ぶりに日本人のファッションデザイナーも1人選出されました
ファッションデザイナーの日本人としての選出は、2018年の「Wataru Tominaga」以来の快挙。

連載第1回目の今回は、誰もが知る経済誌Forbesに未来を期待された(!)ファッションデザイナーの中から、オートクチュール〜ハイエンドファッションに関わる5人に注目。

ファッションで世界を目指す人や、世界のファッションシーンを知りたい人、次なるアップカミングブランドに目を光らせている人など、全てのファッションラバーのインスピレーションになれば幸いです。
※今回は作品に焦点を当てるため、デザイナー自身の写真は掲載しない。


本記事のライター アシダニア徳満有香(ドイツ在住ファッションライター)

【日本】初コレクションのテーマは「縄文」!冨永愛も着用した、機能制度外視の「芸術品としての服」を武器にする岡崎龍之介

5年ぶりに唯一、日本人ファッションデザイナーとして選出された岡崎龍之介は東京藝術大学、同大学院を卒業しており、『RYUNOSUKE OKAZAKI』の設立者だ。

「美術館に飾られるような服を作りたい。」という彼の想いを体現した、アートピースのような作品がメインで、実際に日常で着用することは全く意識されていない。

全ての作品は、「服は人と自然を繋ぐもの。」という彼独自の哲学に基づいていて、全て独学で、デザイン画を書かずに、即興でトルソーに沿わせて作るというオリジナルのクリエイションが強みだ。

「ファッションはアートか?」という議論が古くからされてきたが、彼は「アートとしての服」を追求しており、それが彼を非凡な存在にしている。

【英国】クラシックな中世ヨーロッパの美と瑞々しい自然界の美を融合したドレスで発掘されたベラ・ハディッドにも指名されたSohee Park

『Miss Sohee』のデザイナーSohee Parkは、韓国人でイギリスのセントラルセントマーチン卒業生。Instagramの投稿がきっかけで、世界的セレブリティやファッション業界の重鎮に発掘された。

新しいデザインが生み出される余地はないほど、全てのアイデアは出尽くされたと言われる現在のファッション業界で、今まで見たことがないほど新鮮なものを見ることは皆無に近いが、彼女のデザインはファッションの長い歴史を振り返っても他に類を見ない新鮮さに満ちているのが驚きだ。

【インドネシア】ロンドン・ミラノで学んだヨーロッパとインドネシアの伝統技術を掛け合わせたゴージャスなドレスが評価された双子のデザイナー Benita Setyawan, Janice Setyawan

その技術が世界無形遺産にも登録されているインドネシアのバティック(ろうけつ染めされた布)とヨーロッパのファッションを融合させた繊細なデザインが特徴のインドネシア出身の双子によるブランド、『MAQUINN』。

驚くべきことに、デザイナーの2人は元は歯学を勉強していたが、ファッションへの情熱から進路を変更し、ロンドン、ミラノでファッションの勉強を重ねた。

繊細な刺繍や、フェザー、スパンコールや宝石を多用した華やかな作品が多く、2021年にはインドネシアのブランドとして唯一ミラノコレクションに参加を果たした。
オートクチュールだけでなく、Ready-to-wearも発表している。

【韓国】世界スタンダードに韓服のエッセンスを。Rieul Kim

韓国の伝統衣装である韓服を、21世紀のライフスタイルに最適な形に落とし込んだRieul Kimもファッションを学んだ経験はなく、デザイン画を書くこともできなければ、縫製もできなかった完全独学のデザイナーだ。

現代生活で着るには、快適とは言い難い韓服だが、韓服に使われる伝統的な生地や洋服にはないシルエットの優美さが、海外の人の目を引くことに彼は気がついた。韓服の伝統生地のスーツや、韓服のラインのレザージャケットが人気で、2020年の東京オリンピックのアナウンサーや、世界的アイドルグループBTSなど多数の韓国を代表する著名人が表舞台で着用している。

韓国を代表するファッションブランドが出てきていない現状で、韓国発の世界的ブランドを目指し、彼はさらに高みを目指している。

【英国】フェラガモのクリエイティブディレクターに若干27歳で就任した天才的デザイナーMaxmillian  Davis

トリニダード・トバゴ共和国と、ジャマイカにルーツを持つイギリス人デザイナーのDavisは、2020年に自身の名を冠したブランドをスタートすると、世界的セレブリティ、ドュア・リパやリアーナを顧客に持つほど人気に。

黒人とカリビアンカルチャーを取り入れたエレガントでクラシックな彼のデザインが注目を集めるようになると、なんと、95年もの歴史を持つ世界的ブランド、フェラガモのクリエイティブディレクターに指名された。この時、彼自身のブランドで、まだ3回しかコレクションを発表したことがなかったという事実は驚くべきことだ。

クリエイティブディレクターに就任して初めてのショーでは、フェラガモの系譜をしっかりと引き継ぎながらも、まるで生まれ変わったような新鮮さと洗練されたクラシックスタイルが賞賛された。
若者からの支持の薄さにより、勢いが衰えていたフェラガモを再生させた彼は、いまだ白人主義の強いファッション業界で、確かな地位を確立し注目を集めている。

連載予告《全4回》

今回は、オートクチュール〜ハイエンドファッションで活躍するForbesに選ばれた5人のデザイナーを取り上げました。
今回の5人だけに注目しても、「独学のファッションデザイナーの増加」「インテリエリート層のファッション業界への進出」という21世紀ならではの特徴が垣間見えます。

情報へのアクセスがより簡単になり、サービスが充実し、縫製技術や知識など専門教育の有無はもはや関係なくなっている現代をよく表しています。
第2弾では、アジアのプレタポルテのデザイナーを取り上げますが、独学でファッションビジネスをスタートしたデザイナーが多く登場します。
ぜひお楽しみに!!

【第1弾】オートクチュールからハイエンドファッションまで ※本記事
〜芸術品としてのドレスや特別な日のためのフォーマルウェア〜

【第2弾】アジアのデイリーウェアデザイナー達
〜すぐに購入できるReady-to-wearがメインの中価格帯アジアブランド〜

【第3弾】ヨーロッパのデイリーウェアデザイナー達
〜すぐに購入できるReady-to-wearがメインの中価格帯ヨーロッパブランド/エミリー・イン・パリスの服も?!〜

【第4弾】スタイルを完成させるアクセサリーからランジェリーまで
〜ジュエリーブランドやアップサイクルのバッグにフォーカスしたブランド〜

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