第425回 考古学にはお金がかかります

1、Twitterはいつも考えるきっかけをくれる

Twitterのフォロワーさんの数が1500を超えまして、

TL上での歴史談義がますます活発になってきて嬉しい今日この頃。

先日TLで少し議論を生んだネタを少し整理してみたいと思います。

話題は考古学の研究、特に出土品の整理に関してCF(クラウドファンディング)という手法で資金調達をするということについて。

2、話題の案件を整理

きっかけとなった案件を整理しますと、

徳島大学の構内にある庄・蔵本遺跡の出土品の整理費用をCFで募集。

この遺跡は弥生時代の集落跡で、調査が始まったのは1982年とのことで30年以上も前になります。

大学キャンパスの建て替え等に伴って破壊される前の緊急調査が繰り返されてきたことになります。

出土品はみかん箱で6000箱ほどあり、そのうち半数は手付かずとのこと。

大学の予算は年々削られており、このままのペースでは全てを完了して

報告書としてまとめるまでには20年もかかってしまうとのこと。

その間国民の共有財産であるはずの文化財はその内容を公開されないまま

大学倉庫内で死蔵されていることになります。

まずはこの事業自体が社会的意義のあることであるのは間違いありません。

3、問題の所在

ではどこが問題なのか。

CFのWebページでは発掘調査は文化財保護法で義務付けられています、

としか記載されていませんが

誰が調査すべきか、その費用を誰が負担すべきかは微妙な問題があります。

要するに理念としては遺跡を壊す原因を作った者が費用負担をすべきである、としながらも義務であるとまでは断言できていないということになります。

これを巡って各地で裁判沙汰になった例もありますが、今回は深入りしません。

このCF案件については、あくまでも原因者は徳島大学であり、費用負担も当然大学がすべきというのが筋です。

しかも考古学を研究し、埋蔵文化財調査室まで設けているのであれば速やかに調査成果を公表すべきなのは大学の責務と言えるのではないでしょうか。

ここまでが建前論ですが、実際はどこの大学でも未整理とか未公開の資料を抱えていますし、ことさらこの案件だけ取り上げて責め立てても生産的ではないことも事実です。

4、挑戦者は評価されるべき

ではどうすべきか。

私自身は今回の徳島大学の取り組みは評価したいと思います。

ある意味身内の恥部をさらけ出してでも実を取るという姿勢は好感が持てますし、

取り組みを通じて歴史文化に興味関心を抱く層が拡大することは望ましいことです。

むしろ理系の学問であれば、民間企業と共同して研究開発を行うことは珍しくはないのですから、

文部科学省の科学研究費や大学内の予算に頼らず、研究を進めることは善であるとすら思います。

まずは負の遺産とでもいうべき未公開資料の清算が急務ですが

本来は新たな学術調査であっても民間からの資金調達で行なっても構わないのではないかとさえ思います。

実は個人的に少額とは言え寄付協力した案件もあり、

学術系CFは今後も拡大していってほしいと思っています。

例えば「邪馬台国の所在地論争に新たな一石を投じる発掘調査」

というテーマであればかなり資金が集まるのではないでしょうか。

リターンとしては特別編集のレポートとか、寄付者限定の説明会とか

そんな事例があってもいいし、すでに私が知らないだけであるのかもしれません。

もしご存知の方がいらっしゃったら、ご教示ください。

前にもどこかで書いたかもしれませんが、

誰が必要としているのか、本当に世界に必要なのかわからないアプリの開発なんかに何百万も資金が集まるニュースを聞くにつけ

歴史文化の保全と調査研究、普及啓発にこそ資金が循環する仕組みが作れないかと常々思っていますので、

このような例は今後の試金石として非常に注目しているわけです。

自分の望む世界が実現しないことをただ嘆いて管を巻いているだけでは変えられません。自分にできる小さなことからでも挑戦していきたい。

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