老いるということ

実家の母が首の骨を折ったと言う。

てっきり入院したかと思ったら骨折というのは自然と骨がくっつくまでじっとしているしか方法がないということで家で過している。

妹たちがいるのでそれほど心配はないものの妹たちは日中働いているため母は少し動くのだと思う。

せめて休日は側にいて動かない様にしてあげたいと実家に行った。
妹たちが用事で外出した後は年老いた両親が各々の部屋で過しているのだが80代になるとTVを相手にすることぐらいしかない。

父は糖尿病が進みほとんど目がみえないし、母の方は今回の件でベッドに横になっている。パーキンソン病の疑いがあるのだと言われ薬を飲んでいるのでからだの動きが悪い。もともと神経の伝達を鈍らせる薬だから飲み続ければ動けなくなるのに医師のいう事が一番正しいと飲むことを止めない。

もともと仲がよい両親ではないから今では別々の部屋で過ごす。妹たちが(私も含めてだが)結婚に大きな期待を抱かず大して興味もなかったのはこの親を見て結婚生活なんてそれほどいいものでもないと感じたからだろう。

そんな中私だけが結婚し、息子たちが生まれると妹たちも両親も大層慈しんでくれた。だから我が子が実家に世話になっていた時は息子たちが実家を繋いでいた。

以前子供たちは週末に私たち夫婦と過ごし、平日は私の実家で過ごしていた。私は子供の小さいころからずっと平日は帰宅すると主人の食事を用意して実家に車を走らせて通った。子供とは彼らが幼いころは一緒に風呂に入ったり寝かしつけをしたりしてそれから自分の家に帰宅し翌日の用意をしていた。そのためか彼らは今も相変わらず私の側にいるのが好きらしい。
帰宅すると台所に立つ私に今日の話をしに来てくれる。もちろんその後一緒に夕飯も食べるのだがそれが日々の唯一の家族団らんの時間になる。(主人は単身赴任か一緒に住むようになっても平日帰宅が遅いため食事を囲むのは休日だけとなる)

両親も高齢になり今から8年ほど前に子供たちがこちらに戻って来てから実家は大人だけの生活になり静まり返っていた。

母は世話をする相手がいなくなると妹たちに干渉し、父に干渉しいつも文句を言うようになった。いつの間にか実家にはギスギスした空気が流れていた。父は飲みに行き帰宅が遅くなり、母と妹たちは言い争いが多くなった。まだその頃母は今の様に病気ではなかったので自分で家事をこなしていた。自分の思う通り出来ていないと文句がで、かといって自分ひとりで4人分の家事はしんどくて文句を言っていた。

妹はたまに我が家に避難しに来た。私に愚痴を言いに。そして息子たちの顔を見に。

息子たちは初めは馴染んだ土地を離れることを嫌がったか新しい学校生活にすぐ慣れ、自由に行動できるのでもう私の実家へ帰る気持は無くなった。



しんと静まり返った部屋の中で首にギブスをした母が私相手に色々と話しかけてくる。平日の仕事の疲れでこちらはうつらうつらしてしまいその声を子守唄に寝入ってしまった。

はたと気がつくと母が洗面台にいた。何かあったのかと思って慌てたが大したことはなく、せっかく来たのに眠ってしまったことに詫びると

疲れているんだからいいんだよ

と言う。それでは何にもならないと思いつつも、両親の食事の支度は出かける前に妹がしており私の出番はない。

ふと、以前の母とは変わったなと思う。こちらの体調を考慮したことをいう人だったか?それとも私が余りに来ない娘だからか。

ふたりともめっきり食も細くなり父は一日に一食ほどしか食べず唯一楽しみにしているのは晩酌。目が良くみえなくても夕方になるころに自分の飲む酒を買いに行く。からだには良くないと分かっていてももう長生きをする意味も気力もないので好きにして日々を過ごさせている。飲む量も若い頃に比べ少しで酔うのだがそれでも本数飲まないといられないらしい。

何を言っても聞かないでここまできた。母だけが唯一父に反応しているのを見ると怒りであれ、憎しみであれ反応するということは愛情なのだとつくづく思う。

私は愛情の反対は無関心だと思っているので、なんであれ父も母もお互い支えあって生きているのだと思う。

人間なぜ年をとるのだろうか?

寂しい思いを抱えながらも死を待ちながらいつかくる最後の瞬間まで生き続けなければならない。

私も将来こうなるのか?こうなりたいのかと聞かれれば否と思う。それではどんな風に年を取って行きたいか今から30年後を考えないとならない。そんな時がきているのかもしれない。

リーディングで「老い」についてみたことがあった。

生物は年月を経て老いていくがそれはなぜか?

それは謙虚さを学ぶためだ。

年を取ると経験で色んなことが分かるため自分がなんでもわかると思いがちになる。からだが言うことをきかなくなると他人に対して横柄な態度を取れなくなる。それをさせる為。

他人からは年を取っているということは色んな経験を積んだ人だと分からせる為、若者より色々と知っているので相談できる人と見せる為に年を取らせる。

たまに年齢よりとても若い人がいる。整形手術などで若返らせることはとてもエネルギーを使う。そしてからだを弱らせると言う。

だから自然に年を取るということは悪いことではない。



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