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留学生Mさんの思い出 その3

懐かしき 夢なる君と とこしえに 

          ともにはばたき 彼(か)の地に帰らむ
                          maumau

ある日、Mさんから電話がありました。
「すみません、なんだかさみしくて」
「いいえ、僕の方はいいんですよ。どうかしましたか」

「日本には、自分の気持ちを話せる人がいないので、電話させて頂きました」
「なんでも、話してください」
「昨日、夢を見ました。私の初恋の人です。彼は、『国境なき医師団』にいましたので、戦地に行き、或る乱射事件で死にました。」

「国境なき医師団は、私も知っています。内戦や飢饉があると、世界中どこにでも行って、医療や人道的な援助を行っているNGOですよね。たしかノーベル平和賞を受賞しましたね」

「夢のなかで彼が言いました。一緒に故郷に帰ろうね。そして、ふたりで農業をするんだ。子供もたくさん作って、子供や孫に囲まれて静かに暮らそうね」
そう言って、Mさんは泣き崩れてしまいました。
さすがに僕は言葉を失って、何も言えずに、ただただ涙を流していました。

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